夏休みの自由研究、「調べ学習」ならこんなテーマもアリ! 社会科の先生が教えてくれる「楽しい自由研究」と親の寄り添い方

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本来は自由に自分らしく探求する学習、「自由研究」。夏の長い休みを利用して、ゆっくりたっぷりひとつのことをつきつめよう、というのが狙いで、本来はすばらしい学習です。でも、宿題となると、親子ともどもゆううつになってしまいがち。そこで、花まるグループのスクールFCで、社会科担当の狩野崇先生に、社会科系の自由研究に楽しく取り組むコツを教えてもらいました。

好き」をきっかけに広げていくことが長続きの秘訣

――「自由研究」の中でも、社会科系はどのように取り組んでいいのかが難しいと感じてしまいます。

社会科系は学習する内容が広く、歴史や地理と一口にいっても時代や地域によってかなり違いがあり、好き嫌いや苦手意識なども人それぞれですよね。漠然としやすいから、いきなり「自由研究」といっても何をしていいのかわからなくなるのでしょう。

――また、取り組み方やテーマもどう決めたらいいのか、悩みます

うちの生徒で、城が好きな子がいるんですよ。その子の自由研究はとても楽しそうでシンプルでした。旅行などで訪ねた先に城があれば、必ず妹と一緒に天守閣をバックに写真を撮る。そして俳句を作って書くだけです。難しい解説などはなし。それを1つの城1枚・1句として冊子にまとめたものを夏休みの宿題として出していました。シンプルだけどしっかり思い出を残せるし好きなものを通して国語の勉強にもなっちゃう。素敵ですよね!

その子は夏休みだけじゃなくいつもいろいろな城を訪ねているのですが、訪ねるごとに同じことをしていて、それを3年間くらいコツコツと続けています。Instagramにもあげています。無理せず楽しんでいますし、自由研究って、本来こうあるべきだなと気付かされます。

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また、この子は小学3年の夏休みはお城でかるたを作って提出していました。形にこだわらない自由研究、いいですよね。

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ドラえもん「社会ワールド」は社会科自由研究のネタの宝庫!

――なるほど、日常的に興味のあることを積み重ねておいて、夏に提出する、というのもアリですね。でも、「お城が好き」など明確な好みがある子ならいいですが、そうでない子だと、題材が見つからないかもしれません。

自由研究というと特別なことをやったり、お金をかけて準備したり旅したりしないといけないと思いがちですが、そんなことはありません。題材は身近なところにあるものです。たとえば、子どもたちが大好きなキャラクターをテーマにすることもできますよ。

たとえば、ドラえもん。この間花花まるグループで日本列島の成り立ちをテーマにしたイベントをやったのですが、そのときにドラえもんの『ハワイがやってくる』『海底ハイキング』のふたつのエピソードを使わせてもらったんですよ。

ドラえもんは科学や地理、歴史の分野で非常に濃い内容をとてもわかりやすく扱っていて、しかも冒険談にしているから、みんなのめり込みますよね。ドラえもんのひとつの物語からわかったこと、調べたことを自由研究として提出するのも、とてもいいと思いますよ。

ドラえもん社会ワールド 日本の地理とくらし

ポケモンの名前の由来を調べることも自由研究になる

それと、ポケモンのキャラクターの名前もすごくおもしろいんですよ。カイロスというクワガタムシみたいなキャラクターがいるのですが、「カイロス」って、時間に関する哲学書に「クロノス」「カイロス」と対で出てくるような名称なんですね。クロノスは何時間という単位だったり何時何分みたいなもので、足したり引いたりできるもの。カイロスは「その瞬間」という時間の概念です。そこから「切る」という意味にもなっているようで、「今だと思ったらつかまえてちぎる」というキャラクターの特徴を表している。すごく深いですよね。

インターネットなどにポケモンキャラクターの名前一覧が出ていて、簡単な解説がついているものがあるので、そこから深い意味を探っていく、というのも、子どもたちにとっては興味を持って集中できる学びになりそうです

 親御さんは、子どもの興味を止めないで

保護者面談などしていますと、「うちの子は国語力、読解力がなくて。だから漫画は読ませないんです」とおっしゃる場合もあるのですが、今は漫画やゲームにも非常によく考えられているものが多く、社会科的なヒントはたくさんあります。大人は先入観を持たずに受け止めてほしいですね。

ポケモン パルデア図鑑

タイトルや研究の動機などは大人が一緒に考えてあげて

――漫画やSNSなど子どもたちが興味を持って取り組めるものは、担任の先生はどうとらえてくださるのでしょうか。「不真面目」「手抜き」とか思われないでしょうか。

そこは、大人が介入してあげてもいいところかもしれませんね。たとえば研究のタイトルを「ドラえもんを研究」とかではなくて、

「『地殻変動』をドラえもんから学ぶ」

とか、ポケモンなら

「ポケモンの名前の深い意味」

とか。最初に、

「○○のコミックの中には深い意味から物語が作られているものが多いです。調べてみるとますます社会科的に深い内容がたくさんあるので研究してみました」

みたいな紹介文をつけるなど。先生が「なるほど、これは調べる価値がある」と思えるような理由を翻訳するといいますか。子どもと一緒に考えて、アドバイスしてあげるといいですね。

 

子どもが自分らしく興味を深くできるように、大人は寛容であってほしいです。そして、子どもが取り組むものは間口が狭くて奥行きが広いものがいい。特にドラえもんはとっかかりは簡単そうに見えますが、本当に奥が深いです。社会科だけでなく理科的にも深く、研究にふさわしい要素がたくさんあります。そのあたり、担任の先生もよくわかってくださるケースもありますから、先生の個性や特徴なども鑑みながら、フォローしてあげるといいでしょう。

スーパーの食品を調べることも、いまの社会に触れる立派な「調べ学習」に

もっと身近な題材でいうと、スーパーの食材もとてもおすすめです。キャベツだけでも発見があると思うんです。夏の季節には、僕の故郷の群馬県、嬬恋のキャベツばかりが並んでいるんです。ほかの産地は暑すぎるけれど、嬬恋は涼しいから栽培に適している。産地や価格を知り、地図で調べる。学年によって深めることができます。まとめはキャベツ料理にしたっていいんです。

あるいは国産のりんごが2個パックで400円、外国産のりんごは4個でもっと安い、なぜだろうというところから、子どもなりに輸入のこと、世界経済のこと、世界の農業や賃金のことなどが見えてくる。スーパーのりんごという狭い間口から、広い世界を知ることができるのです。

期待しすぎない、でも子どもの興味を引き出す準備は常にしておく

――先生ご自身は、小学校時代にどんな自由研究をされたのでしょうか。

僕は小学2年生の時に歴史にハマりました。ちょうどその頃NHKの大河ドラマで独眼竜政宗をやっていて、一気にハマっていきました。その流れでうちの親が夏休みに仙台へ連れて行ってくれたのですが、いかんせん小学校2年生ですから、土地柄と歴史がうまくかみあわず、あまり印象に残らなくて。僕が一番印象に残ったのが「仙台の駅前で食ったまぐろの漬け丼がうまかった!」で(笑)。せっかく連れて行ってくれたのに親はがっかりしたと思いますが、前向きにあきらめてくれました。

この、前向きにあきらめるって大事なんですよ。子どもは大人の期待通りにはなりません。でも、前向きにあきらめながら、「じゃ、こういうのならいいかな?」というのも親が探るといいですね。

うちの親はすごくて、次の年にもう一度仙台に連れて行ってくれたんですよ。そうしたら、1年分成長していたのですごく心に残り、それがきっかけで歴史が大好きになりました。子どもがいつ、どこで何に興味が向いてもいいように、アクセス先を準備しておくって、大切ですね。

子どもの意見を尊重し、手伝いすぎないことも大事

――題材は決まったとして、次はまとめ方に悩みますが、これはどうしたら……。

大きい模造紙に書くとか、新聞のような仕立てにするとなると、壮大すぎてどう埋めていいかわからなくなるのは仕方がないことです。上手なまとめ方に関してはインターネットにもいろいろ出ていますから、参考にしてしまっていいと思います。大きな模造紙が大変なら、スケッチブックや小さなノートに、ページに分けて書くのもいいのではないでしょうか。

――こうした自由研究は、なかなか子どもひとりではできなくて、親の助けも必要だと思うのですが、子どもの自由研究なのに、親の口出しが多くなりすぎてしまいます。どの程度関わればいいとお考えですか?

そうですね、親の関与度は難しいところです。題材のヒントを与えてあげるのはいいと思います。そのためにどこかに連れて行ってあげたりするのは大人の役割ですね。また、やり始めたけれど途中でダレてきてやらなくなったというときにスケジュール管理をする、というのもアリだと思いますよ。

でも関わりが多くなりすぎると、「自分でやった感」がなくなります。小学校高学年で思春期にさしかかる子もいますから、親が関わりすぎることで関係が悪くなるというのもあります。また、大人の手が加わっていると、先生にもわかってしまうものです。手加減、さじ加減としか言い様がないですが、やりすぎないことですね。

そして、せめて最後のまとめの考えだけは、その子なりに考えて書いてもらいましょう。「おもしろかったです」みたいな感想だったとしても、それはその子の今のまとめだ、と思って否定しないで受け入れる。「やってあげる」のではなくて、意見を引き出し、尊重する。その気持ちが最も大事かな、と思いますね。

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お話を伺ったのは

狩野 崇|スクールFC社会科講師
群馬県出身。花まるグループの進学塾部門であるスクールFCで、社会科、国語、合科授業などを担当。小学生の頃に歴史のおもしろさに目覚めて以来、日本全国、世界各地の歴史の舞台を訪ね歩く。「最高に面白い社会科」を、魅力的なウンチクと現地の写真・動画とともに語る授業が評判。通常授業以外にも「江戸・東京歴史めぐり」(主催:西郡学習道場)、「地図から考える世界と日本」「武蔵国の華 国分寺を歩く」(主催:Σテック)などの、座学とフィールドワークを融合した講座を次々に展開。

 取材・文/三輪 泉

夏休み☆自由研究ハック

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