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教えてくれたのは狩野崇先生!
今回レクチャーしてくれたのは、花まるグループの進学塾部門スクールFCで社会科担当の狩野崇先生です。社会科の自由研究を、ご自身や教え子さんによる実例を交えながら、いくつかのパターンに分類の上、解説してくれました。
パターンがわかると、テーマの決め方や研究・調査の方法も考えやすくなるはず! ここからは、先生のレクチャーの要点をさっそくご紹介していきます。
【自由研究のパターン①】インスピレーション系
まず狩野先生が教えてくれたのは、身近な風景のなかの気づきや疑問を活かす『インスピレーション系』。レクチャーで用いられた具体例とともに、どのようなものか見ていきましょう。
例1:身近な風景から
「スーパーでの買い物の場面にも、実は自由研究の種やヒントがたくさん詰まっています」とお話ししてくれた狩野先生。なかでも、この時期に注目してほしいのがキャベツ売り場なのだとか。
「よく見ると、この時期に売られているキャベツの産地は大体同じなんです」
こんな気づきへの「なぜ?」という疑問から、たとえば「もしかしたら気温が関係しているのかも?」という仮説を立てて、キャベツが育ちやすい気温や、各地域の季節ごとの気温を調べ上げたら……それはもう立派な研究!
「ごくありふれている身近な風景からも、自由研究のインスピレーション、きっかけになるようなものが受け取れるんですね」
何気ない生活の中に、どんな疑問が潜んでいるのか注意深く観察してみましょう。
例2:マンガやアニメ、ゲームから
「大人は大人のものさしで生きてるので、ダメと言ってしまいがちですが、実際には、子どもが大好きなマンガやアニメ、ゲームにも、たくさんのヒントが潜んでいます」
レクチャーでは、火山のメカニズムを題材にした『ドラえもん』のエピソードが例として上がりました。そのほか、『ポケモン』の名前の由来の奥深さに触れるシーンも。
マンガやアニメ、ゲームにおいても、子どもが疑問に思ったことや気づきを深掘りできるよう、さりげなく手助けしていきたいものですね。
【自由研究のパターン②】フィールドワーク系
次に上がったのが、フィールドワークタイプの自由研究。フィールドワークとは、現地に足を運ぶ調査方法のことです。
「もし余裕があるのであれば、せっかく夏休みなので、現地に行ってみるというステップをぜひお勧めしたいです」と狩野先生。
たとえば、前章で上がったキャベツの例では、インターネットや図書館の文献等を主な資料として調べることが前提でした。けれども、これに加えて、実際に現場を目にすれば、さらなる疑問や発見があるかも。フィールドワークのコツについても教えてくれました。
フィールドワークのコツ① 下調べをする
フィールドワークをする際は、下調べが大切に。
「下調べとは、あらかじめ知識を入れておくということ。知識を入れておくと、自分なりの仮説が立てられるんです。こうかな?それともこっちかな?という仮説が立てられる」
「仮説が立てられると、現地ではこれを見ようという焦点が定まるんです。もちろん、その焦点はひとつじゃなくてもいいんです。これを確認しようというポイントがあるのとないのとでは全然違います」
下調べを経て詳しくなってから現地に赴けば、調査がはかどるだけでなく、調査対象を目にした際の感動も倍増しそうですね。
フィールドワークのコツ② 専門の人に尋ねる
せっかく現地へ行くのであれば、専門の人や有識者のお話を聞くというのも狩野先生のおすすめです。資料館等がある場合は、ぜひ足を運んで、スタッフや学芸員の方々のお話を聞いてみましょう。
また、先生がこれをおすすめする理由は、研究に役立つことだけではありません。
「子どもにとっては、親や先生のような、普段から近くにいる人以外の大人と会話をするということもまた、大きな学びになります」
どんな方と会うことができるのか、どうしたらお話を聞くことができるのかは、大人が下調べをして取り次いであげましょう。
【自由研究のパターン③】空想系
「これも楽しいと思います!」と狩野先生が紹介するのは、空想系の自由研究。過去の楽しい実例についても語ってくれました。
例1:お札
レクチャーで上がったのは、「こういうお札が欲しい」という願望をもとに、架空のお札のデザインを空想して作り出した例。上の画像は実際に、先生の生徒さんが描いたものなのだとか。
例2:国旗
また、「オリジナルの国旗をデザインするのもアリです」と話す狩野先生。
お札にも、国旗にも、その図柄である理由=コンセプトがありますよね。その国や地域の名産・名物や、歴史的なシンボルがあしらわれていたり……。
どうしてその図柄にしたのか、コンセプトをしっかりと説明できるようにしながらデザイン・スケッチに起こしていけば、架空のお札や国旗を空想することも立派な自由研究になります。
【自由研究のパターン④】やってみた系
最後に紹介されたパターンは、「やってみた系」。
例:黒曜石で石器を作ってみた!
「旧石器時代や縄文時代といえば、黒曜石を大きな塊から割って、砕いて、加工して、ナイフや矢尻を作っていましたね」
黒曜石は、長野県諏訪市に所在する星糞峠という峠でたくさん取れるのだとか。実際にその峠から黒曜石を持ち帰ることはできませんが、資料館では自分で石器が作れるキットを購入できるのだそう。
これらの発想と材料を活かせば、「石器を作って使ってみた!」という自由研究に発展させることができます。
実際に、黒曜石を使ってサラダチキンを切って見せる先生。
「やってみた系」研究は、ユーチューバーのような気分も味わえますね。切れ味はどうだったのか、包丁と比べて使い勝手はどうだったのか、どうすればより使いやすくなるのか…といった考察を交えれば、大充実の研究になりそう。
社会科の自由研究のまとめ方は? 形にこだわらず自由に!
お子さんが自由研究で躓きやすいのが、意外にも、研究の「まとめ」なのだとか。最後に、レクチャー内で触れられた狩野先生直伝の自由研究のまとめ方も簡単にご紹介していきます。
まとめ方1:ひとことでもOK!
まとめは一言でもOK。感動したこと、びっくりしたこと、かっこよかったことを言葉にしてみましょう。
レクチャーでは、感想を俳句にした過去の自由研究のまとめ例を見せてもらいました。
まとめ方2:絵を描く! 図を描く!
絵や図を描くと、対象の細部をじっくりと観察することができます。まとめとして描きながらも、新たな気づきを得られるかも。
まとめ方3:授業をするつもりで!
授業をするつもりでまとめてみましょう。授業という状況を想定すれば、自然と「これで伝わるかな?」「この説明だとわからないかな?」と、自分の研究の結果を聞く/読む相手のことを想像することができます。プレゼンテーションの練習としても、良い経験になりそうですね。
まとめ方4:形にこだわらない!
学校の指定がある場合をのぞいて、「研究」だからといって、レポートの形式にこだわらなくてもOK。研究結果を見る相手も自分も楽しめるような形式を追求してみましょう。
レクチャーでは、絵巻物やカルタに落とし込んだ過去の実例も見せてもらえました。
パターンを通して、自由研究の考え方をつかもう!
今回は、狩野先生の社会科の自由研究レクチャーの中から、自由研究のパターンを中心にお伝えしてきました。いくつものパターンを通して、自由研究の考え方がなんとなく掴めてきたのではないでしょうか。
過去の記事では、今回のルポで紹介しきれなかった「自由研究への大人の関わり方」についての考え方についても、狩野先生に詳しくインタビューしています。こちらもあわせて参照してみてくださいね。
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登壇者プロフィール
通常授業以外にも「江戸・東京歴史めぐり」「地図から考える世界と日本」「武蔵国の華 国分寺を歩く」などの座学とフィールドワークを融合した講座や、保護者向け教養講座「中東・イスラームって何だろう?」、親子向け講座「攻めて!守って!戦うお城の大戦略」「親子で学ぼう!中東・イスラーム」「武士の都・鎌倉 歴史めぐりの旅」などの講座実績がある。
文・構成/羽吹理美