「ういろう」とは
ういろうは、米粉、小麦粉、わらび粉などに砂糖、水を混ぜて練り、最後に蒸して仕上げる、羊羹と似た和菓子です。
漢字で「外郎」と書くほか、「ういろ」「ういらう」などと表記されることもあります。
場所・エリア
ういろうは名古屋の銘菓として知られているほか、日本各地にも広まっています。小田原(神奈川)、京都、山口、さらに神戸、徳島なども産地として知られ、それぞれで材料や見た目も違います。
いつ、どんなときに食べる?
ういろうは、普段のお茶請けとして食べられるほか、お土産品や贈り物、引き出物などでも利用されています。
京都では、三角形にカットした白いういろうの上に小豆を甘く煮たものをのせた「水無月」と呼ばれる和菓子があります。京都では毎年6月30日に、1月から6月までの半年間の罪や穢れをはらう「夏越の祓(なごしのはらえ)」という伝統行事が行われていて、水無月はその行事で食べられます。今でも京都の和菓子屋では、「水無月」が6月に期間限定で販売され、この時期だけ食べられています。
歴史
ういろうにはとても古い歴史があります。諸説ありますが、ういろうの始まりと言われているのが、室町時代に当時の将軍、足利義満公へ「外郎薬」を献上したときに、お口直しのお菓子として考案されたいうもの。
その後、弥次さん・喜多さんでおなじみの江戸時代に誕生した「東海道中膝栗毛」の中にも、ういろうのエピソードが登場しており、江戸時代にもういろうが親しい存在だったことがわかります。
由来、言い伝え
ういろうの名前の由来は、中国にあった「外郎薬」という万能薬と言われています。ういろうは、この「外郎薬と形が似ていた」「薬のお口直しとして食べられていた」などと言われ、それがきっかけで「ういろう」という名前がついたと言い伝えられています。
ういろうの特徴
では、ういろうの味や作り方などの特徴を見てみましょう。
もっちり食感
ういろうの魅力は、もちもちっとした独特の食感です。つきたての餅とゼリーをミックスしたような程よい弾力があります。ただ、餅とは違って伸びることはありません。地域別のういろうで、使う材料と製法などの違いによって、食感にも違いがあります。
ういろうの材料
ういろうの基本の材料は、米粉、砂糖、水。地域により、米粉ではなく、うるち米、餅米、小麦粉、わらび粉などが使われることもあります。これらの粉と砂糖に水を加えてよく練り、これを型に流し込んで蒸篭で蒸して仕上げます。
羊羹との違いは?
ういろうは、四角くて細長いバーのような形で、羊羹とよく似ています。そのため、ういろうと羊羹がよく間違われてしまいますが、別モノです。ういろうと羊羹の一番の違いは材料。羊羹は、小豆が主な原料で、これに寒天を加えて冷やし固めた和菓子です。一方、ういろうには寒天を使いませんし、蒸して固めるのがういろうです。
味のバリエーションが豊富
ういろうは色もカラフルで、さまざまな味のバリエーションがあります。
最もスタンダードなのは、白、桜、黒。店によって違いますが、「白」は上白糖のみを使ったシンプルなういろう、「桜」は桜餅の風味のういろう、「黒」は黒砂糖を使ったういろうです。その他、抹茶味や小豆、栗入りのもの、きなこ味、柚子味、ラムネ味など、さまざまな味を楽しめます。
名古屋のういろうは「餅文総本店」「青柳総本家」が有名
名古屋のういろうで特に名前が知られているのが、「餅文総本店」と「青柳総本家」。
「餅文総本店」は1659年に創業した老舗和菓子店で、名古屋のういろうの元祖と言われる店です。また「青柳総本家」では、1879年に創業すると蒸し羊羹作りと一緒にういろうの製造もスタート。1931年には名古屋駅でういろうの販売を始め、これがきっかけで、ういろうが名古屋名物になったと言われています。
ういろうの地域による違い
ういろうは地域によって違いがあるとご紹介しました。日本各地にあるういろうの特徴を見てみましょう。
名古屋
名古屋のういろうは、うるち米の米粉を使っているのが特徴。そのため、餅のように特に弾力があって、ずっしりとした重厚感があります。お米のようなやさしい甘みを感じられるはずです。
名古屋のういろうは名古屋駅で発売されたことで、名古屋土産としてその名前がよく知られることになりました。
小田原
神奈川県小田原のういろうも、名古屋と同じく米粉が使われていて、もっちりとした食感とお米の甘みを楽しめます。
小田原は江戸時代に東海道小田原宿があったため、旅人が小田原名物として買っていったと言われています。小田原のういろうはもともと、「透頂香(とうちんこう)」という薬のことを指していました。小田原市にある外郎家が、ういろうの製造を始めたと言われています。
京都
京都では三角形にカットしたういろうがメジャー。京都に本店を構える「五建外良屋」では、創業から160年以上「五建ういろ」を製造してきていることで、よく知られる老舗です。
最近は、三角形以外にもスティックタイプのういろうも販売しています。また、京都の伝統行事「夏越の祓」では、ういろうに小豆がのった「水無月」という和菓子を食べる風習があります。
山口
山口のういろうは、わらび粉を使っていることが特徴。もちもちっとした食感の中にも、わらび餅のようなぷるぷるとした食感も感じられて、他の地域のういろうとはまた違う味わいを楽しめます。他の地域のもっちりとしたういろうに苦手意識がある方には、なめらかで口当たりのいい山口のういろうがおすすめです。
徳島(阿波ういろ)
徳島の「阿波ういろ」は、名古屋ういろう、山口ういろうと一緒に「日本三大ういろう」と呼ばれている存在。徳島では、「ういろう」ではなく「ういろ」と呼びます。
この地域ではサトウキビから阿波和三盆が作られるようになり、阿波ういろはその和三盆と米粉を使っているのが特徴です。素朴な茶色の見た目で、まんじゅうのように丸い形のものもあります。
ういろうの作り方
ういろうは地域によって、使う材料も作り方も異なりますが、ここでは自宅でも作れるよう、シンプルに小麦粉と砂糖で作る方法をご紹介しましょう。
材料
- 小麦粉
- 砂糖
- 水
作り方
- 小麦粉をふるいにかけます。
- 小麦粉に砂糖を加えたら、そこに少しずつ水を加えて、ダマができないように、泡だて器を使ってなめらかになるまでよく混ぜます。
- 耐熱容器に入れ、ラップをふんわりとかけて、電子レンジで加熱します。
- 粗熱がとれたら、そのまま冷蔵庫に入れて冷やします。
- 十分冷えたら、カットして出来上がり。
ういろうのおすすめ
ういろうは比較的日持ちする和菓子なので、通販で購入したり、贈り物に利用したりできます。
御堀堂の外郎詰合せ
ういろうの老舗和菓子店として山口でよく知られている「御堀堂」のギフトセット。特製の餡にわらび粉と小麦粉を練りこんだ「白外郎」、沖縄産の黒糖を練りこんだ「黒外郎」、抹茶の苦味も魅力的な「抹茶外郎」の詰め合わせです。
本多屋の外郎重ね 夏みかん
創業大正6年の「本多屋」は、山口県でういろうやわらび餅などの蕨菓子を作り続けてきました。そんな老舗が手がけるのは、蜜漬けした夏みかんを生地に練りこんだ夏季限定のういろうです。
ふじや 阿波ういろうセット
昔ながらの製法にこだわり、上白糖、米粉、国産餅米粉、北海道産小豆などを使って作り上げる「阿波ういろう」。保存料、着色料は一切不使用。どこか昔なつかしさを感じる素朴な味わいを楽しめます。
阿波ういろう
徳島県で作られる「阿波ういろう」は、かつて阿波国で和三盆が作られるようになったときに生まれたと言われています。中にゴロっと入った栗も楽しめます。
大須ういろ
名古屋ういろうとして有名な「大須ういろ」。白、抹茶、桜、黒、ないろの5つの味を詰め合わせたセットです。見た目にも美しく、お土産にも最適です。
地域のういろうを楽しもう
ういろうは日本でもかなり古くから親しまれてきた和菓子のひとつです。そして、名古屋だけでなく、日本各地でういろうが作られてきた歴史があります。それぞれで使っている材料が違うため、できあがったういろうの食感や味わいも異なります。そんなういろうの味の違いを楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。
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文・構成/HugKum編集部