岸優太が演じる等身大の主人公に思わず感情移入!
連続ドラマ化された「ナンバMG5」も記憶に新しい、小沢としおのヤンキー青春コミックを実写映画化した『Gメン』。主人公の門松勝太は、いかにも漫画テイストの“熱きおちこぼれヒーロー”ですが、岸優太が絶妙な塩梅の温度感で演じたことで、観る者がとても感情移入しやすい等身大のキャラクターとなりました。
本作では、問題児ばかりが集う武華男子高校1年「G組」に転入してきた勝太が、G組のメンバーや上級生などの仲間たちと出会い、熱い友情や絆を育んでいくという青春エンターテインメント映画です。
高校生役と言いつつも、演じるのは竜星涼、恒松祐里、矢本悠馬、森本慎太郎、りんたろー。、高良健吾、田中圭といった“大人”の俳優たち(笑)。全員がとことん振り切って、それぞれのキャラクターをかなり盛った感じで演じているところがツボです。とはいえ、そこにはちゃんと血が通っているので、観ている者も気がつけば『Gメン』ワールドにどっぷり入り込めるはず。
ふりきったコメディやド派手なアクションの先に展開される友情ドラマ
岸さん演じる勝太は、何事にも全力で挑むも、常に空回りしてしまうトホホな高校1年生。女子には弱いけど情にはすこぶる厚く、見かけに反してケンカがめっぽう強いです。
そんな勝太が、人生初の彼女が欲しいと、“彼女できる率120%”という噂のモテモテ男子校である私立武華男子高校に転校してきました。ところが勝太のクラスは、問題児ばかりが集められた、はきだめのようなG組でした。
クラスメイトは、ヤンキーとオタクのみ。そんななかで、勝太はいろんな出会いを果たし、青春を謳歌しようとハッスルしていきます!
メガホンをとったのは「おっさんずラブ」、「極主夫道」シリーズやドラマ「unknown」などで知られる瑠東東一郎監督。瑠東監督といえば、とびきりのコメディであっても、そこにきちんと人間ドラマを描ける実力派です。
例えば、竜星涼演じるイケメン瀬名拓美や、森本慎太郎演じる、もはや絶滅危惧種といえそうな金髪リーゼントで昭和キャラの梅田真大、矢本悠馬演じるプロレスオタクの肝田茂樹、りんたろー。演じるG組イチの武闘派、薙竜二など、かなりディープなキャラのオンパレード。でも、彼らと勝太との関係性が丁寧につむがれることで、ちゃんと友情パートが盛り上がっていきます。
また、今回は、勝太がケンカに強いというキャラクターなので、ヤンキー映画の醍醐味であるガチバトルシーンが盛りだくさんに登場。そこも期待を裏切りません。
他にも特筆すべきは、ド派手な特攻服をまとったレディースヘッド・上城レイナ役の恒松祐里や、一見清楚なのに、かなり男前な担任教師・雨宮瞳の吉岡里帆といった女優陣の肝がすわった熱演です。特に、吉岡さんは、のけぞるほどの毒舌キャラで、まさかの笑いをとっていきます!
あちこちに散りばめられた、令和世代に響く熱いメッセージ
豪華キャスト共演による“青春ヤンキー映画”という印象を受ける本作ですが、実はその奥底にあるメッセージは、きちんと令和バージョンになっております。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、いろんなアイデンティティーに悩む人たちや、知られざるトラウマを持つ人も登場します。
「おっさんずラブ」もそうでしたが、瑠東監督はそこの表現が過不足ないんです。しかも、コメディがとことんはっちゃけているぶん、じんわりパートとの振り幅がすさまじく、観る人はその落差に琴線を揺さぶられそう。
また、外見と内面がまったく違うといういわゆる“ギャップ萌えキャラ”も多く、そこも好感度大。悪役でさえ、それぞれに愛すべきキャラに仕上がっているのも、本作の魅力です。
そして、もう1点。私が心を打たれたのは、男たちが自分たちのガチバトルにどう折り合いをつけるかというシーンです。そこは、単に頂上決戦に向けて戦い続けるという紋切り型のアクション映画とは一線を画し、今を生きる私たちの心に響く提案をしてくれます。その落としどころが、Hugkumで紹介するに値するすてきな見どころだとも思いました。
ということで、昭和世代から令和世代まで、幅広い層に刺さるであろう青春エンターテイメント映画『Gメン』。ママやパパ、安心してください!親子で楽しく観られるおすすめ映画です!
原作:小沢としお『Gメン』(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊) 監督:瑠東東一郎
出演:岸優太、竜星涼、恒松祐里、矢本悠馬、森本慎太郎、りんたろー。/吉岡里帆、高良健吾、尾上松也、田中圭…ほか
公式サイト:https://g-men-movie.com/
©️2023「Gメン」製作委員会 ©️小沢としお(秋田書店)2015
文・構成/山崎伸子