震災のニュースを見ることで子どものメンタルが不安定になったら?頑張り屋さんや真面目な子に多い、変化の兆しと子どもへの関わり方

2024年元日の夕方に発生した能登半島地震。地震発生後、ニュースなどではショッキングな映像が流れ、見ているだけでつらいと感じるママ・パパも多いと思います。また大人同様にショックを受けている子も。被災者でなくても「うちの子、いつもと様子が違う」と感じているママ・パパもいるのではないでしょうか。震災によるショックから子どもの心を守る方法を、兵庫教育大学名誉教授 冨永良喜先生に聞きました。冨永先生は、臨床心理士、公認心理師で、1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに、震災で傷ついた子どもの心のケアに取り組んでいます。

悩みやストレスを抱えているところに震災が引き金となり、心身の不調が

被災地に暮らしていなくても、震災をきっかけに心身に不調をきたす子どもがいます。

  • ●眠れない
  • ●イライラしている・怒りっぽい
  • ●食欲がない
  • ●おなかが痛いなど体の不調を訴える
  • ●ママ・パパから離れられない、ひとりで眠れないなど、これまでできていたことができなくなった

など、気になる様子があるときは、子どもへのかかわり方を見直しましょう。

上記のような様子は、震災が直接の原因になっているわけではなく、日ごろから何か悩みやストレスを抱えていて、心の中のコップの水があふれそうなときに、震災のショックが加わって、コップの水があふれ出てしまった状態です。比較的、頑張り屋さんや真面目な子に見られる傾向があります。そのため震災への不安を払しょくするのと併せて、ストレスケアを意識して行うことが大切です。

子どもの好きなことをしてストレス解消

子どもが「ひとりで眠れない。ママ、一緒に寝よう」と言ってきたときは、「いいよ」と、子どものSOSサインを受け入れてください。また「一緒に寝ようって、よく言ってくれたね。怖いと思うのは、命を守ることにつながる大切な気持ちだよ」と伝えましょう。なかには「恥ずかしい」と思いながらも頑張ってママ・パパにSOSサインを出している子もいます。

「おなかが痛い」など体の不調を訴えたときは、「大変なことがあったから、体が頑張り過ぎているのかもね」と言って、ゆっくり休ませましょう。

そして

  • ●好きな音楽を聴く
  • ●ゆっくりお風呂に入る
  • ●親子で一緒に散歩をする
  • ●スポーツをする
  • ●自然を楽しむ

など、子どもが好きなことをしてストレス解消をしましょう。ストレスが解消されると、子どもの様子も変わっていきます。

ただし、子どもが好きだからといっても長時間のゲームや動画の視聴は勧めません。疲れから、かえってストレスが溜まりやすくなります。

親子で防災対策を見直して、震災の不安を軽減

またストレス解消をする一方で、震災への不安を軽減すことも大切です。「最近は、地震に強いおうちが建てられるようになったんだよ」と耐震の話をしたり、親子で家庭内の防災を見直すといいでしょう。親子で家具が転倒しないように対策をしたり、防災リュックの中身を確認して、必要なものは買い足したりすることで、震災への不安がやわらでいきます。

登園・登校を渋るときは、I(アイ)メッセージで親の気持ちを伝える

なかには震災後、「小学校に行きたくない」「幼稚園(保育園)に行きたくない」と言い出す子もいます。そうしたときは「なぜ?」と理由を聞いてあげてください。子どもの意見を頭ごなしに否定するのはNGですが、「行かなくてもいいよ」と、すぐに受け入れるのはやめましょう。

「〇〇ちゃん、これまでそういうこと言わなかったよね…。ちょっと疲れているのかな? でも、また小学校に行って、友だちと遊べるようになるといいなとママ(パパ)は思うよ」と、I(アイ)メッセージで「登校(登園)できるようになるといいね」という思いを伝えましょう。

Iメッセージとは、相手に配慮しながらも、I=(自分・私は)を主語にして思いを伝えることです。不安なときは、かかりつけの小児科医や担任の先生、スクールカウンセラーなどに相談してください。ママ・パパだけで解決しようと思わないことが大切です。

幼児は、スキンシップや遊びを通して心の安定を

震災後、幼児で「夜泣きをするようになった」「ママ・パパから離れなくなった」「ちょっとしたことで泣くようになった」など、いつもと違う様子が見られたときは、親子のスキンシップを大切にしましょう。

ボール遊びや追いかけっこをするなど、体を使う遊びの時間も十分にとってください。言葉が未発達な幼児は、ママ・パパのぬくもりを感じたり、親子で楽しく過ごすことで心の安定を取り戻していきます。

災害時の子どものメンタルケア、こちらの記事も

能登半島地震から1ヶ月。「地震ごっこ」で怖い気持ちを整理する子どもたちも。生死に関わる恐怖体験をした子に必須なメンタルケアを、ストレスマネジメントの専門家に聞く
地震ごっこは止めず、見ていて怖がる子はほかの遊びに誘って 震災後、少し時間が経つと「地震ごっこ」を始める子どもの姿が見られるようになります...

記事監修

冨永良喜先生|兵庫教育大学名誉教授
臨床心理士、公認心理師。日本ストレスマネジメント学会前理事長。災害や事件による子どもの心のケアをはじめ、ストレスマネジメントによる心の健康教育に取り組む。著書は『図解でわかる14歳からのストレスと心のケア』(監修/太田出版)など多数。

取材・構成/麻生珠恵 写真/繁延あづさ

編集部おすすめ

関連記事