スクールリュック「UMI」の誕生秘話
スクールリュック「UMI」は、廃棄された漁網を再生した生地で作られています。半世紀以上、世界のトップブランドの鞄を製造してきた豊岡鞄のメーカーが、なぜスクールリュックを製作することになったのでしょうか?SDGsの取り組みや開発秘話など兵庫県豊岡市発のバッグブランドを運営する株式会社アートフィアーの森下拓磨さんにお話を聞きました。
スクールリュック開発のきっかけ
森下さん:60年以上ビジネスバッグを中心にハイブランドのバッグを生産している工場を母体とした会社として、6年ほど前から環境に対しての取り組みについて考えることがありました。当時は環境に配慮した素材が少なく、普通の生地と比べると4倍くらいの価格になるなど、配慮した素材でバッグを作ることは難しい状況でした。
そんな時に、日本財団さんから我々が所属している“豊岡鞄”という組合に「漁師さんが使っている網をアップサイクルして生地にできる工程が組めそうだ」というお話をいただきました。
私達はその素材を使ってビジネスバッグやトートバッグを作りはじめました。作っていく中で、このSDGsの取り組みは子どもの頃から触れられたほうがいいのではないかなということでランドセルとして使えるスクールリュックの開発をすることになりました。
スクールリュックの開発で苦労した点
森下さん:大人用のバッグは今までに沢山作っているのですが、ランドセルは初めて作るのでなんども試行錯誤しました。
モニターさんに試作品を試してもらったときには、大人には気にならない硬さや重さなど、直球の言葉が返ってきて、ビジネスリュックの経験値が活かせる点とそうでない点が明確になりました。
ビジネスバッグを製作するときは、だいたい2回くらいの試作で完成するのですが、何十回も試作を重ねました。モニターとして社員のお子さんに実際に小学校に持っていってもらったりして、クッションもいろんなパターンを試し、どういう構造にしたら軽く感じるか、厚みはどれくらいがベストなのか、細かい検証を何度も重ね、2022年に第一弾を発表しました。
子どもからの要望で多かったのは「軽くしてほしい」ということ
森下さん:アンケートで多かったのは「重たい」、「もっと容量がほしい」ということでした。たっぷり入ってらくらく持てるランドセルを作ろうということで、“たっぷりらくらく”というキーワードでデザインを考えていきました。
スクールリュック「UMI」のおすすめポイント&SDGsの活動
スクールリュックUMIの特徴
森下さん:まずは大容量ということで、ビジネスバッグによく採用されている拡張機能を付けました。通常だと13Lくらいの容量が拡張ファスナーで拡張すれば15Lまで容量が増えます。両手に持っていた荷物を中に全部入れることでフリーハンドになり、歩いていても安心です。
荷物をいっぱい入れると今度は、スクールリュックが重たく感じてしまうのでショルダーの部分にも耐圧分散する機構を入れて肩にしっかりフィットするようになっています。
2025年モデルはそれにプラスして、体温の熱が伝わることで、ひとりひとりの肩にフィットしていく「HUMOFIT®(ヒューモフィット)」を搭載しています。これにより荷重分散効果が高まり鞄が軽く感じ、身体や肩への負担軽減につながります。
あとは、蒸れにくい背面構造です。夏場の登下校なども快適に過ごせるように、背面部分は接触冷感素材を使用し、さらに空気層を確保することで風が流れながらも背面もフィットする構造になっています。
スクールリュック「UMI」とSDGs
森下さん:1本売れるごとに海の環境保全活動に寄付をしています。ランドセルを買ってくれたお子さんに、「海をきれいにする取り組みのひとつにみんなは参加してくれてるんだよ」と伝えることもあります。
あるお子さんが、学校で環境に関する授業の中で「この子が使っているランドセルは環境のことを考えてつくられているんだよ」と紹介されたと嬉しそうに報告してくれました。
時代に合わせて進化していくランドセル
近年のランドセルの変化について感じることはありますか?
森下さん:実際にナイロンランドセルというのは市場に増えてきてますし、今後増えてくるとは思います。
インスタライブなどでお客様から頂く質問で「革よりも汚れやすいですか?」と聞かれることがよくあります。私たちからするとナイロンは汚れにくいものなのですが、まだまだ固定概念や先入観などで浸透するまでは時間がかかるのかなと思います。
私たちの会社には、“進化する鞄創造ブランド”というビジョンがあります。工場ではビジネスバッグを含め年間で5000本くらいの修理を承っていて、取っ手がほつれたり、ファスナーが破けたり…いろいろな修理があるんですけど、そこから得られるヒントがたくさんあるんですよね。
角がすごく擦れやすいなら、もしかしてここにガードの素材を入れておけば破けないのかなとか、見えない部分までも常により良いものに変えていきたいと思っています。
少しでも課題があれば、企画にフィードバックして、長く持ってもらえる鞄を作っていく。スクールリュックも同じように、子どもたちのニーズや使用方法に合わせて進化し続けていきます。
通年販売開始!1か月間のレンタルサービスも
つくり手の想いを聞くと、実物が見てみたくなりますよね。スクールリュック「UMI」のレンタルサービスでは、もっとゆっくり商品を試してもらえるようにと最長1か月レンタル可能に。また、4月からは通年販売をすることでいつでも欲しいときに手に入るようになるのだそう。お盆や年末など親戚や家族が集まるときにプレゼントしたり、セカンドランドセルとして切り替えやすくなりますね。
インスタライブや展示会などの情報はホームページからご確認ください。
スクールリュック「UMI」詳細は>こちら
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取材・文/やまさきけいこ