『数字であそぼ。』の漫画家・絹田村子さん「なりきりごっこ遊びがキャラクター作りに活きている」、漫画好きで自由な子ども時代を語る

「数学」がテーマの漫画『数字であそぼ。』を誕生させた絹田村子先生の子ども時代にクローズアップ。影響を受けた漫画や、子どものころの体験で今漫画家として役立っていることなどをお伺いしました。

編集部のお便りから当選者発表まで、漫画雑誌を隅から隅まで読破

子どもが憧れる人気のお仕事「漫画家になりたい!」というお子さんも多いですよね。絹田先生が漫画に興味を持ったのはいつごろですか。

私は、小学校低学年ぐらいに『セーラームーン』が流行っていた世代で、アニメを見て漫画の世界に入った感じです。月に1回少女漫画雑誌を買ってもらったり、友だちと漫画雑誌を貸し借りしたりしていました。雑誌を読むときは、漫画はもちろん、編集部のお便りや当選者発表とか、雑誌の隅から隅まで読んでいましたね(笑)。

漫画を描き始めたのはいつごろですか。

本格的に描き始めたのは大学生になってからです。今は漫画もデジタル化が進んで、そんなに金額的な負担がかからず漫画を描き始められると思いますが、私が子どもの頃は道具をかなり集めないと描けなかったので、大学生になってバイトするようになってから描き始めました。

それまでは、クラスによくいる「絵を描くのが好きな子」で、小学生のときには友だちに絵を描いて欲しいとよく言われました。大学が美術系というのもあって、普通に漫画やアニメのファンアート的なものも描いたりしていました。

影響を受けた漫画を教えてください。

影響を受けた漫画はいっぱいあります!『セーラームーン』はもちろん、当時は世紀末っぽい感じの漫画が多くて『魔法騎士レイアース』ですとか、王道の『幽☆遊☆白書』や『るろうに剣心』もそうですね。あと『パタリロ!』や『動物のお医者さん』、川原泉先生のコメディー系だったり、ホラー系も好きだったので山岸凉子先生の作品なども、たくさん読んでいました。

あと漫画雑誌っていろいろなジャンルの作品が1冊に集まっていて、必ずコメディー作品がひとつは掲載されていますよね。今思い返せば、そのひとつのコメディー作品が1番好きだったので、それが私の基本かもしれません。今の私の作風に影響しているのかなと思います。

好きな科目は美術と地理…算数が好きなわけではなかった

子どものころはどんなお子さんでしたか。得意な勉強科目やスポーツ、習い事なども含め教えてください。

親自身が泳げないことが嫌だったみたいで、幼稚園のころから水泳は習っていました。中学校ぐらいまで楽しく通っていましたが、普通に泳げるだけで速く泳げるワケではないです(苦笑)。

部活でいうと、中学生のときに剣道部に入りました。『るろうに剣心』の影響で…(笑)。でも女子みんなが辞めるって言い始めたんです。なんで辞めるんだろう…と思ったんですけど、1人だけ残ると、学年が上がったとき副主将とかやらされそうでキツいと思ってしまい、私も辞めちゃいました。

得意な教科でいうと、やっぱり美術。あと地理も好きでした。地図帳を見たり、地域の話などが好きでしたね。

今、漫画を描くために「数学」を勉強していると思いますが、小学生のときは算数が好きだったのですか。

好きだったことは多分1度もないです(笑)。小学生から中学生ぐらいまでは、なんとかできていた気がしますが、高校ぐらいから「何やっているのか、ワケがわからなくなってきたぞ」みたいな感覚になった記憶があります。

大人になって「数学が面白そう」と思って『数字であそぼ。』を描き始めたのですが、見聞きしたことがある数学理論が増えただけで、ちゃんと理解しているのかというとやっぱり別物で…不思議な感じです。多分脳みそのクセとかもあると思うんですよね。向き不向きでいえば、私は不向きの方かもしれませんが、「面白そう」という気持ちを持ち続けられているから描けているんだと思います。

ドールを使ってのなりきりごっこ遊びがキャラクター作りに活きている

小さいころにやられていたことで、今、漫画家となって役に立っていることがありましたら教えてください

確か中学生ぐらいだったと思うんですけど、友だちとごっこ遊びにハマっちゃって…(笑)。友だちの家にリカちゃん人形のいろんなキャラクターのドールが揃っていたんです。それで「今日はパパに何々役になってもらおう」とか細かい設定をして、なりきって遊んでいたんですよね。

キャラクターの背後にあるものとか、自分じゃない別の人のことを考える遊びがクセになっちゃって、それが妄想力じゃないですけど、今、漫画の中のキャラクター作りに活きているような気がしています。

絹田さんが小さい頃、ご両親は絹田さんにどう接されていましたか。

水泳以外は、本当に何も言われたことがないです。家に図鑑や本があったので読んでいましたが、勉強のことも特に何も言われなかったです。高校受験のときは自分で「塾に行きたい」と言いましたし、大学も自分で受ける学校を決めました。漫画家になるときもデビューしたあとに「漫画家になる」と事後報告した感じです。

今思えば、親からほとんど干渉されなかったので、反抗することもなかったし自由に過ごしてきた方だと思います。人によると思いますが、私にとっては親が何も言わなかったことで自我が芽生えて、今に至っているような気がしています。

でも難しいですよね…私のように干渉されないほうがよかった場合もあるけど、干渉しないと何にもしない子もいるでしょうし。誰もが子育ての正解を知りたいんだろうけど、やっぱり子どもによるんでしょうね。

まんがのテーマは興味があるもの…好きな民俗学も描いてみたい

今まで、宮司・住職・牧師の息子が登場する『さんすくみ』や、なぜか死体の第一発見者になってしまうイケメンモデルが主人公の『重要参考人探偵』などを執筆され、まんがのテーマが多岐にわたっている印象です。まんがのテーマを決めるときは、どこからヒントを得ていますか

基本的には興味があるものをテーマにしています。『さんすくみ』のときは、お正月に神社で巫女さんのバイトをしたことがあって、仕事の裏側的なことが好きなので調べ始めた感じでした。

『重要参考人探偵』はミステリーがメインですけど、これも仕事の裏側というか、「探偵あるある」的なこと描きたいなと思ったのが始まりです。その時々で興味があるものに目を向け、テーマにするかどうかを決めています。

「数字であそぼ。」の今後の展開も気になるところですが、今後描いてみたいテーマやジャンルなどがありましたら教えてください。

私、子どもの頃から地理が好きだったこともあって、民俗学が好きなんですね。神社とかお祭りとか地域の慣わしとかに興味があるんですけど、そのまま漫画にすることはできないとは思いますが、民俗学に関連したものは描いてみたいとは思います。

お話しを聞いた方

【絹田村子】

9月24日生まれ、天秤座。B型。奈良県出身。「月刊flowers」2008年9月号掲載の『道行き』(第36回コミックオーディション銀の花賞受賞)でデビュー。代表作は『さんすくみ』『重要参考人探偵』など。現在『月刊flowers』で連載中の「数字であそぼ。」で、第69回小学館漫画賞を受賞。

 

絹田村子|550円(税込)

驚異の記憶力で京都の名門大学理学部に入学するも、暗記ではなく“理解”が必要な数学につまずき2留した建己。個性あふれる友人達と出会って再び数学に向き合うが、その道は前途多難で…!? 爆笑×数学キャンパスライフコメディ!

小学館漫画賞を受賞して インタビュー前半はこちら

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取材・文/綱島深雪

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