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「食べない」が偏食ではなく、治療が必要な「小児摂食障害」のことも
大山牧子先生は新生児科医として40年以上診療する中で、早産や生まれつきの病気のために飲んだり、食べたりすることに課題を持つ子どもを診てきました。しかし健康な子どもでも、「偏食」などに悩む親は多いものです。なかには小児摂食障害が原因のこともあります。
小児摂食障害は、思うように子どもが食べないこと(経口摂取障害)が2週間以上続き、以下の機能不全が1つ以上みられると疑われます。
・栄養失調など「栄養面」での機能不全
・ミルクや食べ物の食感を変える必要があるなどの「摂食技能面」での機能不全
・子どもが食べることを避けるなどの「心理社会面」での機能不全
また小児摂食障害は遺伝ではありません。
小児摂食障害の専門家は少ない
小児摂食障害は専門家による対処が必要です。専門家が多職種連携して行うことが望ましいですが、専門家が少ないことが課題です。乳幼児健診やかかりつけの小児科で相談しても「経過観察」と言われてしまい、ママ・パパが悩むケースが多いです。
食べる技能は3歳に完成。早期受診が大切!
神奈川県立こども医療センターの偏食外来は、原則0~3歳が対象です。理由は、食べる技能は3歳に完成するためです。そのため気になるときは、早期受診が必要です。
受診したほうがよい主な目安は次の通りです。
- ●10カ月までに固形物を食べられない
- ●1歳までに粒のあるものを食べられない
- ●1歳4カ月までに、大人からの取り分けが食べられない
慢性的な便秘や睡眠に課題がある子どもは「食の悩み」も併せ持つ傾向に
子どもの偏食外来では、授乳の様子や食べることへの困りごとなどの問診をして原因を探ります。あわせて慢性的な便秘や睡眠に問題があるときは、まずは治療を優先します。
特に、昼寝をしない、昼寝の時間が一定でない、遅寝・遅起きの習慣がついている、夜なかなか寝ないなど睡眠に課題がある子どもは、食の悩みが多い傾向にあります。
自閉スペクトラム症も小児摂食障害の傾向が
自閉スペクトラム症(以下ASD)を持つ子どもにも、小児摂食障害の傾向があります。ASDの特性である、複雑な触覚刺激を嫌う、特定の食品・食感・においを避けるなどが影響しています。
初めての食べ物や苦手な食べ物は、子どもにとってモンスターのように感じる場合も
子どもは、本当は食べたいと思っています。しかし、初めての食べ物や苦手な食べ物をモンスターのように怖いと感じる子もいます。また、食べる技能を獲得していないから食べられない子もいます。
対策としては、ママ・パパが強制せずに、食べ物に興味を持てるようにすることが大切です。
離乳食の本では、手づかみ食べは9カ月ごろからと記されていますが、6カ月ごろから自分で食べ物を触ったり、握ったりする経験を積極的にさせてほしいと思います。
ママ・パパの関わり方が影響していることも。強制していないか確認を
小児摂食障害は、ママ・パパの関わり方が影響することも。そのため食事のあり方を見直してみましょう。原因として多いのは、次のことです。
- 1 食事を強制する
「一口だけでも食べよう」「なんで食べないの?」「おしいしいから食べよう」「食べないと大きくならないよ!」などの言葉かけは強制です。また子どもの意思を無視して、スプーンを口に入れたりするのも強制です。ママ・パパが強制すると、子どもは食事をさらに拒むようになります。
2 親子で一緒に食事をしない
親の都合などで、親子で一緒に食事をしない家庭もあります。しかし家族で食卓を囲み、ママ・パパがおいしそうに食べる姿を見て、子どもは食べ物に興味を持つようになるものです。離乳食の時期でも機嫌がよいときを見計らって、親子で一緒にテーブルを囲みましょう。
3 いつでも食べられる環境を作っている
偏食が多かったり少食だったりすると「何か食べさせないと!」との不安感から、いつでも子どもが好きなものを食べられる状態にしている家庭もありますが、これが習慣化していると食の悩みは解決しません。
神奈川県立こども医療センター偏食外来は、オンライン相談も可能
神奈川県立こども医療センター偏食外来は、2015年に立ち上がりました。年齢相応の⾷事を⾷べたがらないお⼦さんを対象にした外来です。これまで800人以上の子どもの診療にあたってきました。遠方や忙しいママ・パパは「オンライン偏食外来」を利用することもできます。
オンライン偏食外来は原則0~3歳が対象で、初診は60分です。自費で、初診は11,000円(税込)です。
子どもの食事の様子の動画を元に、医師がアドバイス。自宅で環境調整や行動療法を実施
「偏食外来」では、医師とママ・パパが二人三脚で小児摂食障害の課題に取り組んでいきます。
まずはママ・パパからの聞き取りをもとにして、自宅で環境調整や行動療法を行います。そして、食事の様子を動画で撮影して、次の診察のときに医師に見せてアドバイスを受けます。動画を見ることで、食事中の子どもの表情、姿勢、目線、手や口の動き、椅子とテーブルの関係、家族とのやりとりなどをチェックができますので、パパ・ママの言葉かけや関わり方で、直したほうがよい点を見つけて、再び自宅で環境調整や行動療法を行います。受診回数は、個人差がありますが4回程度です。
神奈川県立こども医療センター 偏食外来・オンライン偏食外来>>>
*偏⾷外来に関するパンフレットが神奈川県⼩児保健協会のウェブサイトにて公開されています。受診前にぜひご覧ください。
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記事監修
取材・構成/麻生珠恵