子どもの食の悩みあるあるに、専門医がアドバイス~スプーンを嫌がる、少食で体重が増えない、食事中に立ち歩く…。

子どもの食に関する悩みはさまざまですが、親が無理に食べさせようとしたり、叱って教えたりするのは逆効果です。
神奈川県立こども医療センター偏食外来 大山牧子先生に、よくある子どもの食の悩みと解決のヒントを教えてもらいました。

【お悩み1】 離乳食を始めたのですが、スプーンを嫌がります(生後6カ月)

この時期は、離乳食は栄養・カロリーを摂るというより食べる練習の段階です

子どもは、自分でお座りできますか?  もし座れるようでしたら、家族の食事の時間に機嫌よく起きているならば、椅子に座らせて食卓に参加させてみましょう。

椅子は背当てと足台のあるハイチェアやローチェアがいいでしょう。目標は、機嫌よく5~10分でも椅子に座れることです。眠いときやお腹が空いて機嫌が悪いときは、食卓に参加させなくてよいです。

また無理に食べさせようとせずに、親が食べているものに興味を持ったら、子ども用のトレイに手づかみ食を置いてみてください。触ったり、握ったりしながら、子どもは食べ物に興味を持つようになっていきます。

スプーンで与えるのは、椅子に機嫌よく座れるようになり、興味津々で口を開けたときだけにしましょう。まだミルクや母乳から栄養を摂る時期なので、栄養不足の心配はいりません。

【お悩み2】 2300gで生まれました。少食で、落ち着いて食べないため体重が増えません(19カ月)

食を強制するのはやめましょう。成長曲線で身長の伸びを確認してみてください

低出生体重だと、体重を増やすためにたっぷり母乳やミルクを与えたり、食べさせようと考えがちです。しかし、子どもは自分で必要な量を飲んだり、食べたりするものです。

食べる量を決めるのは子どもです。「もっと食べなさい!」「食べないと大きくならないよ!」と言葉をかけたり、怒った表情をしたり、無理にスプーンを口に入れたりして子どもに食を強制するのはやめましょう。

その代わり、親がよい見本を示しましょう。食事の途中で、親が調味料などを取りに席を立つと、子どもも気が逸れて落ち着かなくなるので、親は落ち着いて座り、楽しく食事をしてください。

また成長曲線に沿って、その子なりに身長が伸びていれば必要な栄養は摂れていると考えてもよいかもしれません。

【お悩み3】 粒のある離乳食を与え始めたら吐いたり、えずきます(生後8カ月)

噛むという微細運動のためには、お座りが安定していることがカギです

お座りが安定していないときは、みじん切りなどの粒状のものを与えるのは、もう少し待ちましょう。

お座りが安定している場合は、①1回の量が多くないか、②子どもが離乳食を食べてまだ唇を閉じていないのに、次の離乳食をスプーンで流し込んでいないか、確認してください。

1回の量が多いときは、量を減らして「お口ムーだよ」と言いながら、一緒に唇を閉じる練習をしましょう。

また、いつものペースト状の離乳食の一部にみじん切りにした食材を加え、子どもが欲しがるタイミングで「いつもと同じ大根さんだよ」などと言いながら、少量を下唇に乗せる感覚で与えます。子どもは親しんだ味と食感に安心しつつ、粒を唇と舌で感じると上顎と舌でもぐもぐとつぶし始め、次第に舌を横に動かして歯ぐきで噛み始めるでしょう。

【お悩み4】立ち歩くので、追いかけて食べさせています(1歳)

初めは座っていて、いくらか食べてから立ち歩くならば、それは子どもが決めたこと。追いかけて食べさせなくてよいです

親が食べさせようとしたり、「おいしいから、もっと食べて」「少ししか食べていないよ!」などと言うのは強制です。子どもは嫌で逃げ出すので強制はやめましょう。

ほかには環境の見直しも必要です。食事のときにテレビをつけたままにしておくなど、子どもの気が散るような刺激は避けてください。「みんなが食べ終わったら、テレビを見ようね」などとあらかじめルールを決めておきましょう。

親が追いかけてまで食べさせると、子どもはゲーム感覚になります。立ち歩きながら食べるのは、誤えんのリスクもあるのでやめましょう。

【お悩み5 家で作ったカレーは食べずに、キャラクターのレトルトカレーしか食べません(2歳)

子どもは視覚優位なので、パッケージとセットで記憶しています。パッケージから出したものを食卓に

カレーを含めて15~30品目以上のメニューを食べられていますか?  20品目以上を食べられていたら、家族でカレーを食べるときは、しばらくはキャラクターのレトルトカレーでもよいと思います。年齢が上がると、家族と同じカレーを食べたくなるかもしれません。

食べられるメニューが20品目以下で、食べられるものが限られている場合は、キャラクターのレトルトカレーを食べ飽きる可能性があります。ほかのカレーも試して飽きない工夫をしましょう。

また子どもは視覚優位なので、パッケージとセットで記憶しています。そのため初めからパッケージを見せないようにして、パッケージから出したものを食卓に並べることを勧めます。

すでにパッケージに執着しているときは、子どもの様子を見てパッケージを見なくても食べるようになったら、別のレトルトカレーに切り替えてみましょう。別のレトルトカレーでも食べる→さらに違うレトルトカレーも食べる→家庭のカレーも食べるというステップアップで、「〇〇だけ」にならないようにしましょう。

こちらの記事も参考に

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子どもの偏食Q&A』(大山牧子・著 中外医学社)

記事監修

大山牧子先生|神奈川県立こども医療センター新生児科
岡山大学医学部卒。1985年~20223月神奈川県立こども医療センター新生児科医長を務める。20224月から同新生児科非常勤医師として偏食外来を担当。2023年より、「こども偏食少食ネットワーク」を通じて子どもの食べることに関するオンライン養成講座を監修。著書に『子どもの偏食外来』(診断と治療社)、『子どもの偏食Q&A―あるある悩みにどう答える―』(中外医学社)など。

取材・構成/麻生珠恵
※『子どもの偏食Q&A-あるある悩みにどう答える-』(中外医学社)より引用構成

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