お手伝いをする子はポジティブな自己像を形成する
このコラムでは、これまでにもお手伝いの効用についてお伝えしてきました。お手伝いが子どもにとってよいことは、研究者も述べています。
少し前のデータになりますが、興味深い調査があります。小学4年生〜6年生を対象に、お手伝い頻度の高い「手伝う群」とあまり手伝わない「手伝わない群」を比較したものです。
「手伝う群」は今の自分について「友だちが多い」「頑張る」「優しい」「勇気がある」などの項目に対して、「とてもそう思う」の割合が高い傾向がありました。また、将来「どんな大人になれそうか」と問うたところ、特に「良い父・母になれる」「幸せな家庭をつくる」の項目に「きっとできる」の割合が高く、そしてその割合は「手伝わない群」との間に大きな差があるということがわかりました。(「子どもの手伝い」調査「子どもの行動学研究会」調査チームと花王株式会社生活者研究センターとの共同研究1984年、2011年)
調査を行った東京成徳大学の深谷昌志教授は、「もちろん、子どもと自己像との関係は手伝っていると子どもがよくなるのでなく、生活習慣のしっかりとした子どもが手伝っているのであろうが、手伝いが子どもの自己像を支えていることは否定できない ように思えた」と述べています。
「手伝いが子どもの自己像を支える」という指摘は示唆に富むものです。子どもは家事を任され、それを完遂することで「自分は何事かを成し遂げられる」という、有能感、自尊心を持ちます。そしてその実体をともなった自信が、今の自分の肯定と将来の明るい希望につながるのだと思います。
また、お手伝いをやり遂げる子どもの姿に、親も喜びと誇りを感じます。そして一方的に世話をする・される関係ではなく、互いに支えあう者としての連帯感が生まれ、家庭は暖かな楽しい場所になっていきます。加えてお手伝いによって子どもは、生きていく上で必要な生活技術を身につけます。その意味でも、お手伝いの意義は大きいのです。
年の瀬にむけてお手伝いの機会も増える時期です。さあ、子どもと一緒に家事をしましょう。
第8回 窓ガラス掃除
いよいよ12月。年末にかけて大掃除の時期です。今回は子どもが大好きな窓ガラス掃除です。
対象
1~2歳から
期待できる効果
・実行機能を使う経験(目標、プラン、計画遂行、行動調整)
・位置や形容詞や副詞などのことばを覚える
・粗大運動(体の大部分を使っての大きな動き)の経験、微細運動(手の細かい動き)
・人からの依頼を受ける対応力
・相談しあう経験(誰がどこを掃除するかなど)
・家族に喜ばれることで勤労意欲が育つ
・仕事を任せられることで責任感が育つ
・家族の役に立つ経験ができる
ガラス窓掃除の準備
1.網戸などを必要に応じて外す
2.サッシ部分を刷毛などで綺麗にする
3.子どもと親の担当範囲を子どもと相談して決める
用意するもの
・小さなスプレーボトル(ガラス掃除用の洗剤を入れる)
・濡れたところを拭く雑巾または掃除用ミトン
・スクイージー(窓拭き用の小さなゴムベラ)
・マットやタオル(窓下部が濡れないようにする下に敷く)
・バケツやバスケットなどの入れ物(用具を持ち運びする用)
お手本を見せる
・窓にスプレーで水や洗剤を吹きかける
・スクイージーを動かす時は、窓の一番上から下にまっすぐに下ろす
・横や円形に動かすのではなく、縦に水と汚れを落とす
・1列拭き終わる度に雑巾やマイクロファイバークロス等でゴムについた水を拭き取る
・掃除後は「ピカピカな窓になったね!お手伝いしてくれてありがとう!」と感謝の気持ちを伝える
上級編
慣れてきた子は、以下のポイントに気をつけるように伝えてみましょう。
・均一な力で引くようにする
スクイージーを窓の一方の端から始め、反対側の端まで一定の圧力で動かす
・端までしっかりと
窓の端までしっかりとスクイージーを動かし、水分を残さないようにする
ことばのかけ方のコツ
・「上から下に」「右の窓から」などの声掛けをすることで、「位置のことば」が理解できるようになります
・「シュッ、シュッ」「ピカ、ピカ」などのオノマトペ等を使いながら楽しくスプレーをかけたりすることで、話す意欲につなげます
最初は子どもが好きなようにやらせる
少し雑でも、最初は子どもの好きなようにやらせてあげましょう。少し慣れてきたら、よりきれいに仕上げるコツを実際に見せてあげてください。
また、100円ショップなどで、道具を子どもに選んでもらうとモチベーションが上がります。道具が大きすぎると扱いにくいので、小さめの道具を買うようにしましょう。
発達障害の特性のある子どもの場合の注意点
発達障害の特性の強い子どもは、窓ガラス掃除の途中で飽きたり、他のことを始めてしまうことがあります。ここで親が怒り、子どもが怒られる場面にはしたくはありません。
飽きることを見越して、子どもの担当スペースを狭くするなど工夫をしましょう。安全を確保しながら、窓ガラスの表に大人、裏に子どもがスタンバイし、ゲーム感覚で同じところを同じスピードで拭くのも良いでしょう。
1列拭き終わる度に雑巾などでゴムについた水を拭くなどの動作も、真似し合うなどの工夫が考えられます。
お子さんと一緒の大掃除で新年の準備を
2024年は元旦の能登半島地震に開けた1年でした。皆さんはどんな1年だったでしょうか? 1年の締めくくりは、ぜひお子さんに窓ガラス掃除を手伝ってもらい、ピカピカのガラス窓で気持ちいい新たな年をお迎えください。
来年のお子さんとの毎日がより喜びに満ちたものになることを願いつつ、12月最後のコラムの筆をおくことにします。
皆さん良いお年をお迎えください。