【中学受験】医師が教える直前期の体調管理術。感染症の予防になる食材から、緊張を和らげる工夫まで解説

受験直前、緊張や体調不良にどう備えるべきか?西葛西駅前家族のクリニックの総合内科専門医、精神科専門医、波多野良二先生に伺いました。医師としての知見と受験生の親としての経験を交えたリアルなアドバイスは必見です!

受験直前期の睡眠・食事・運動で気をつけるポイント

― 受験直前の時期に、特に意識しておくべき生活習慣(睡眠・食事・運動)についてアドバイスをお願いします。

夜22時までには布団に入り、8時間以上の睡眠を確保できるとよいですね。塾があって22時就寝が難しい場合は、なるべく遅くならないように。睡眠不足は免疫力を低下させるだけでなく、翌日の集中力にも大きな影響を与えます。試験当日も普段通りのリズムで臨めるよう、今からでも早寝早起きを習慣にしましょう。

― 食事についても教えてください。

感染症の予防に役立つ栄養素が含まれているほうれん草やブロッコリー

食事は野菜を多く、先に摂ってください。ポリフェノールを含むほうれん草やブロッコリーなどは、感染症の予防にも役立ちます。野菜が苦手なお子さんは、スープにすると食べやすいかもしれません。

― 運動についてはいかがですか?

風邪を心配して体育を休む方もいらっしゃいますが、運動は適度に行うのが良いです。寒い中、体育を見学していると体が冷えて風邪を引いてしまいます。運動は気分転換にもなりますね。こうした基本的な生活習慣は、感染症予防にもつながります。健康的な日常を維持して、免疫力を高めていきましょう。

感染症を防ぐには?当日、体調が悪くなったらどうする?

― 受験直前の時期、感染症の予防にはどんな対策が有効ですか?

日常生活では、手洗い・うがいの徹底、十分な睡眠、栄養バランスの良い食事、そして適度な運動習慣を整えるのが重要です。インフルエンザワクチンは2回接種しておくとよいでしょう。

― 波多野先生のお子さんも中学受験をご経験されたそうですが、直前はどのように過ごしましたか?

我が家の場合では、試験が続くと疲れも出るので、次の試験に備える方がよいと考えました。連戦で後半に疲れが出ないよう、日程を組む際には2月2日だけは入試を入れず休息を優先したスケジュールを立てました。

― もし受験当日に体調を崩してしまった場合、どうしたらいいでしょうか?

無理をして試験に挑むのではなく、次の日程に備える方がよいと思います。わが家は直前の体調不良はあまり考えていませんでしたが、万が一そうなった場合は、その日の学校は「ご縁がなかった」のだと考えていました。

学校によっては別室で受験させてくれるところもあるので、本人の体調にもよりますが、焦らずにまずは相談してみるとよいと思います。

緊張に押しつぶされないコツは「他人と比較しないこと」

― ストレスも体調に影響を与えそうですが、具体的にどのような影響がありますか?

緊張やストレスが過剰にかかると、免疫力が低下し、風邪や虫垂炎などの感染症にかかりやすくなってしまいます。精神的ストレスによって自律神経が乱れ、お腹が痛くなるお子さんも多いですね。「試験の朝になると毎回お腹が痛い」と訴えるお子さんは珍しくありません。

― 緊張しやすい子どもにはどのようなアドバイスをすれば良いでしょうか?

大切なのは、他人と自分を比較しないこと。他の受験生の様子が気になるのは自然ですが、それに振り回されず、自分がやるべきタスクに集中するよう促してください。事務的に黙々と課題を進めるのがよいでしょう。余計な緊張を感じる暇がなくなります。

緊張は「頑張ろう」という気持ちの表れです。「緊張は悪いことではないよ」とお子さんに伝えて、安心させてあげてください。プラセボ効果を活用してみるのも一つの方法です。市販薬をお守りに、「お腹が痛くなってもお薬があるから大丈夫よ」といった簡単な工夫をしてみてください。気持ちが落ち着き、実際に症状が軽くなることもあります。

※プラセボ効果とは、本来は薬としての効果をもたないプラセボ(気休めの薬や処置)を服用し得られる効果のこと

― 保護者としてどんなサポートが必要ですか?

リラックスできる環境を整えてあげてください。「大丈夫?」や「頑張って」など、プレッシャーを与える言葉は控えましょう。お母さまの方が緊張で体調を崩してしまう場合もあります。親の緊張は子どもに伝わるものなので、保護者の方もリラックスして臨むのが一番です。

試験前日は早く寝る。ゲームやYouTubeは避けて

― 試験前日はどのように過ごすのが理想的ですか?

普段通りの生活を心がけてください。勉強は早めに切り上げ、テレビを見たり、家族と話したりして気分をほぐすのがよいでしょう。ただし、ゲームや動画視聴など神経を刺激する活動は眠りの質が低下するため、おすすめしません。

― 試験当日はどう準備をすればよいでしょうか?

いつも通りの時間に起きて、普段食べ慣れた朝食をとる。新しいことを試さないように。普段のリズムが子どもに安心感を与えます。

― 連日の試験が続く場合、何か特別な対策は必要でしょうか?

連日の試験は体力的な負担が大きいので、受験校の厳選も考えておきましょう。無理をして全ての日程を詰め込むより、あえて受験を見送る日を作り、体力を温存して次の試験に臨む方が、良い結果につながるのではないでしょうか。

【まとめ】受験直前期に気をつけたいこと

・22時前までに布団に入り、8時間は寝る

・食事は野菜を先に多くとる。ほうれん草・ブロッコリーが感染症予防におすすめ

・体育は休まず、適度に体を動かす方が免疫力が高まる

・手洗い・うがいをする

・インフルエンザワクチンは2回接種がのぞましい

・試験日程は過密にせず、休息を設ける

・過度に緊張しないためには、他人と比較せず、自分のやるべきタスクを粛々と行う

・「緊張は悪いことではないよ」と声をかける

・市販薬をお守りにするなど、気持ちが落ち着く工夫をする

・「大丈夫?」「頑張って」と親は言わない

・前日前夜も普段通りに。普段のリズムが子どもを安定させる。

 

 

入試本番、元気に試験へ向かうために、予防できることは今から実践していきたいですね。波多野先生にお聞きした直前期に気をつけたいこと、ぜひ参考にしてみてください。

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記事監修

波多野 良二先生|総合内科専門医・精神科専門医
1965年、京都市生まれ。千葉大学医学部・同大学院卒業、医学博士。精神保健指定医・日本精神神経学会専門医・日本内科学会総合内科専門医。漢方や認知行動療法なども行い、丁寧・適切な診察が評判。2020年に「西葛西駅前家族のクリニック」を開業。

取材・構成/黒澤真紀

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