最難関中学受験は本物の学力をつける最高の舞台
――エルカミノは少数精鋭でありながら、最難関中学の合格率が大手塾に全く引けをとらないと有名です。貴塾の教育方針を教えてください。
村上さん:私たちの方針は明快です。「考える力」を基礎から徹底的に育てる。これは、御三家や最難関校が求める力と同じです。中学受験の合否を握る算数を柱に、子どもたちに「もっと知りたい」「もっと挑戦したい」と思わせる環境を作り、楽しみながら学力を鍛える。そうして身につく力こそが、「勝つ受験」に必要な本当の学力だと考えています。
―― なぜ「最難関中学合格」を目指すのでしょうか?
村上さん:最難関中学受験は、基礎学力、論理的思考力、問題解決力など、本当の学力を育む場です。他では味わえない難解な問題や、独自の視点が求められる出題に向き合う中で、子どもたちは限界を超えて成長します。その力は社会でも通用するスキルとなり、未来を切り拓く基盤になる。これこそが、最難関中学受験に挑む意義です。
今の中学受験はそもそも偏差値にこだわっていない
――昨今は難関校を目指すというより、偏差値以外の価値に重きを置く「偏差値にこだわらない教育」も謳われていますが、いかがお考えですか?
村上さん:そのフレーズを耳にするたびに、現代の中学入試で求められる力は何かが正しく理解されていないと感じます。おそらく、親御さんの多くが自分の中学受験のイメージを引きずっているからだと考えています。
――と、言いますと?
村上さん:昔の中学受験は、偏差値至上主義と詰め込み教育でした。でも、今の中学受験、特に御三家や最難関校の過去問を見てください。(1)の答えが(2)の手がかりになり、(3)でさらに深く問われる。単に公式を覚えていれば解ける問題ではないのは一目瞭然です。
論理的思考力や問題解決力を基盤に、初見の問題にどうアプローチするかが合否を分けます。

村上さん:知識だけでなく、「広い視野」や「深い思考力」がなければ戦えない。これは今の時代、偏差値にかかわらず必要だと言われている力です。
難関校ではこのような力が高いレベルで試されるため、結果的に〝偏差値〟という序列ができているに過ぎません。
「たくさん勉強してたくさん覚えたものが勝つ」という自分の受験の成功法を子どもに押し付けてしまう親御さんが多いですが、今の中学受験生にとっては的外れなのです。
うさぎの力を最大限に伸ばす環境が必要
――エルカミノさんは、イソップ童話「うさぎと亀」の「うさぎを伸ばす教育」を公言されています。
村上さん:その通りです。もしうさぎに適切な指導があれば、うさぎは余裕で亀に勝ったと思いませんか? 私たちは、速く走れる子ども、つまり才能のある子を発掘し、伸ばす教育に力を入れています。なぜなら、本当は優秀だけど学校の授業で何をすればいいのか分からない子どもたちに、学ぶ意欲を失ってほしくないからです。
〝うさぎ〟にこそ、自分の力を正しく発揮できる環境を整えなければなりません。

――学校だけでは不十分なのでしょうか。
村上さん:学校教育では、学習指導要領が改定され、みんなで議論したり発表したりする時間を中心とした授業形態に変化しました。しかしこれにより、基礎学力が育つ前に「対話型」の課題へ移行してしまうため、学びの基盤が不十分なまま次の単元に進んでしまう危険があります。
例えば「時計」の単元では、「時計がない時代はどうやって時間を計っていたのだろう?」「1分ってなんだろう?」といったテーマについてみんなで話し合うことに多くの時間を割くので、時計の読み方や時間の計算といった基礎を、昔ほどしっかりやる時間がないのです。
まずは、ポテンシャルを引き出すためにも子どもが思考力を伸ばせる環境を整えなければなりません。
――うさぎを育てる土台作りは難しいのでは?
村上さん:一番難しさを感じるのは、子どもへの指導ではなく、親の目が行き届きすぎてしまうことでしょうか。
子どもが「19×7」を暗算している横で、親が、「20×7の答から7を引けば簡単だよ」と教えてしまう。これでは走って基礎体力を鍛えている子に「自転車の方が楽だよ」と言うのと同じです。

――どうするのがよいのでしょうか。
村上さん:7×9=63。63を一桁ずつ分けて、3が下の位(1の位)、6が繰り上がって次の位(10の位)の手順を、頭の中で筆算と同じように進めていかなければなりません。その上で、「こう工夫するともっと楽になるよ」と教えれば、子どもも「本当だ!」と実感できるでしょう。正しい過程を踏まなければ、子どもの成長を妨げてしまいます。
エルカミノの柱は算数。自ら考える力を育て、受験に勝つ
――エルカミノは「算数」が柱なのですね。
村上さん:算数は計算力だけじゃなく、子どもの論理的思考力を鍛えるための最高のツールです。国語が言葉で論理を組み立てる科目なら、算数は数字でそれを行う科目。同じ「考える力」を育てる別のアプローチなんです。
さらに、「どうやって答えにたどり着くか」を重視しています。パズルやひらめきを促す問題を取り入れて、考える楽しさを教えています。この思考力は算数だけでなく、国語や他の教科にも活かされます。
受験指導を経験した講師が低学年も指導。大学受験もこの頃から意識
――低学年はどのような授業なのですか?
村上さん:算数では、週替わりでパズル問題に取り組みます。3年生になると「面積迷路」など、発想力を鍛える問題にも挑戦。
国語は課題図書を4~8回の授業でじっくり読み解き、論理的思考の基礎を築きます。ジャンルは物語文に限らず、百人一首や世界遺産など、多岐に渡ります。授業で初めて読む形を取るので、課題図書は公表していません。
――指導する先生はどんな方々ですか?
村上さん:低学年の指導も、6年生の受験指導を経験している講師が担当します。時には子ども向けの柔らかい雰囲気ではないかもしれませんが(笑)、講師には「太陽のように明るく、子どもに寄り添う存在でいてほしい」と伝えています。
講師には共通テストも解いてもらっているんです。出口となる大学受験を知らなければよい指導はできませんから。

――家庭学習との連携はどのように図っていますか?
村上さん:宿題として、家では市販の公文のドリルなどで、計算や漢字に取り組んでいただきます。塾は、考える楽しさを味わう場。両者の役割分担が、子どもをバランスよく伸ばすポイントです。
最難関中学を目指せるか。鍵を握る小学3年末の進級テスト
―― 進級テストや合格実績について教えてください。
村上さん:3年生の終わりに進級テストを実施し、しっかり基礎ができているかを確認します。合格率は約7割です。
――進級テストを小学3年生の終わりに行うのはなぜですか?
村上さん:1つ目は、この時期が中学受験に必要な学力を正確に判断できるタイミングだからです。この時点で、6年の中学受験時に最難関中学合格に必要な学力の6〜7割程度を見極めることが可能です。
2つ目は、3年生の終わりであれば、カリキュラムの移行や新しい環境への適応も比較的スムーズに進められるからです。お子さんに合った学びの場を見つけることが大切です。
2024年は最難関中学への合格者を多数輩出
――合格実績についても伺えますか?
村上さん:2024年度の中学入試では、御三家をはじめとする最難関中学に多数の合格者を輩出しました。子どもたち一人ひとりが自分のペースで成長し、その結果として難関校への合格を果たしています。詳細な実績については、ぜひ弊社HPをご確認ください。
――2025年度の中学入試もいよいよですね。この時期、どんな思いで生徒たちを見守っていますか?
村上さん:中学受験は子どもたちにとって、単なるゴールではありません。成功も失敗も、すべてが未来への糧。最後まで全力で挑戦し、自分の可能性を広げてほしいと思っています。
後編では家庭での算数センスの磨き方、4年生から最難関校を目指すにあたり大切なことを伺いました

記事監修

取材・文/黒澤真紀