目次 [hide]
検査結果は正常なのに、なんだか不調…
気持ちが沈んだりイライラしたり。女性はホルモンの影響でさまざまな不調に悩まされることがありますよね。
筆者も2年ほど前、動悸やザワザワとした不安感がつらい時期があり、検査をしましたが異常なし。それでも夕方になると体調が悪く、医師が処方してくれたのが漢方薬でした。幸い体質に合っていたようでずいぶんとラクになり、今も調子の悪いときに服用しています。
クラシエ薬品さんにお話を聞いてみると、このように検査では現れない不調は「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれ、漢方の得意とするところだそう。
――漢方薬と西洋薬の違いは何でしょうか?
クラシエ薬品:西洋医学では、通常とは違う検査値や細胞などへアプローチを行うのに対し、漢方医学では、起きている症状に注目してアプローチをしていくところに違いがあります。
漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されていると考えられています。この3つのバランスが保たれているのが良い状態で、バランスの悪いところを元に戻していく手助けをするのが漢方薬です。

産後の女性に多い「血虚」の状態
――女性はホルモンバランスの変化で「なんとなく不調」な日が起こりがちですよね。産後は特に、身体だけでなくメンタル面での不調を感じる方が多いと聞きます。
クラシエ薬品:産後のママは、出産や授乳によって貧血になったり、髪が抜けやすくなったり。また、精神が不安定になって眠れない方や、涙もろくなったという方も多いですね。このような状態は、「気・血・水」のうち「血」の不足である「血虚(けっきょ)」と呼ばれます。
――「血虚」とは貧血のことでしょうか?
クラシエ薬品:貧血も、症状のひとつです。漢方は2,000年以上前から使っている考え方ですので、「気・血・水」を大まかな共通点を持ってとらえているんですね。「血」の中には血液も含みますし、その中の栄養なども含め、身体や精神活動を支えるものというイメージです。
――「血虚」の状態の方はどうしたら良いのでしょうか。
クラシエ薬品:血液は、食べ物からつくられます。胃腸の状態は血液を生み出す力と関わっているので、胃腸の状態を良くしてあげるのが対策法のひとつとなります。
産後のお母さんたちは毎日新しいことだらけでストレスの多い状態。身体の疲れから胃腸がうまく動かせなくなりがちですので、温かいメニューを選び、食事中は考え事をせずに楽しく食べる、ということも大切です。

漢方なら「芎帰調血飲」や「当帰芍薬散」
――産後の不調におすすめの漢方はありますか?
クラシエ薬品:血虚の方には「芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)」が適しています。こちらは、血が不足していて、胃腸が弱い方におすすめの処方です。

同じ貧血気味な方でも、冷えを伴う方には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」もおすすめです。水が溜まっていると身体の冷えにつながりますので、むくみに効くこちらが適しています。
――産後の漢方薬の服用で気をつけるべきことはありますか?
クラシエ薬品:お母さんが漢方薬を飲むと、成分によっては母乳に移行するものもあります。
特に、下剤などの漢方薬に含まれている大黄(だいおう)は、母乳に移行して赤ちゃんが下痢を起こす場合がありますので、授乳中は大黄の入っている漢方薬はお控えください。
その他の漢方薬に関しても、服用する際は、医師や薬剤師、登録販売者にご相談いただくと安心です。
月経にまつわる悩みには「加味逍遙散」や「桂枝茯苓丸」
――以前、月経痛やPMS(月経前症候群)のイライラやがひどかったとき、婦人科で「加味逍遙散(かみしょうようさん)」を処方されたことがあります。
クラシエ薬品:「加味逍遙散」も婦人科系では定番のお薬ですね。「気・血・水」の「気」であるエネルギーは、流れている状態が正常ですが、ストレスが溜まると「気滞」といって滞る状態になります。そうすると、おなかが張って痛む、胸が張る、などの症状が起こるのですが、気をめぐらせて、そのような症状を和らげてくれるのが「加味逍遙散」です。
月経痛や血の塊が出るような方は「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」を。体を温めながら血液のめぐりをよくしてくれます。

更年期症状には「知柏地黄丸」
――読者の中にはプレ更年期や更年期の症状にお悩みの方も多いのですが、良い漢方薬はありますか?
クラシエ薬品:更年期症状にはさまざまな症状があり、イライラや精神的な不調には先ほどの「加味逍遙散」や、そのほか「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」も適していますし、身体のほてりやホットフラッシュのような症状が出ている方には「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」があります。

クラシエ薬品:漢方では、生殖能力や老化現象には、五臓六腑(ごぞうろっぷ)における「腎」が関わっていると言われていますが、「知柏地黄丸」はこの「腎」のはたらきを改善する補腎薬です。

服用の注意点は?
――同じ症状に良さそうな漢方が複数あるとき、自分に向いているものはどう選べば良いでしょうか?
クラシエ薬品:まずは、かかりつけの医師や店頭の薬剤師に相談していただくと良いと思います。
また「気・血・水」のお話をしてきましたが、ご自身の体質が分かると、それに合った漢方薬を見つけやすくなります。漢方薬は効き目がゆるやかと思われがちですが、ご自身の体質に合ったものだと効き目を感じやすいんですよ。
クラシエ薬品でも「からだかがみ」という診断コンテンツがあるのでぜひ試してみてください。
―漢方薬を飲んで調子が良くなってきた場合、いつまでも飲み続けても良いのでしょうか。
クラシエ薬品:一般的には症状が良くなったら徐々に減らしていけると良いのですが、漢方薬は自分のからだ本来の機能を高めてあげるものなので、服用前と後で生活スタイルが何も変わっていないと、元に戻ってしまう場合があります。
胃腸の状態を良くする食事を心がけたり、睡眠をしっかりとるようにしたりと、養生しながら薬を減らしていただくと良いと思います。
自分の体質に合った漢方薬を見つけてみては
クラシエ薬品さんに詳しくお話していただきました。「気・血・水」や「腎」のお話など、昔の人の知恵と経験がもとになっている漢方医学はとても興味深く、さらに詳しく学んでみたくなりました。
女性は月経や出産によって不調が起こりがちですが「ホルモンバランスによる不調は当たり前」と我慢しながら暮らしている方も多いように思います。漢方薬は薬局でも購入できますので、薬剤師さんに相談しながら取り入れてみることで、いつもの不調が解消に向かうきっかけとなるかもしれません。
自分の体質に合った漢方薬は効き目が出やすいということでしたので、ご自身の体質を知る診断ツールもぜひ使ってみてくださいね。
こちらの記事もおすすめ

取材・文/寒河江尚子