【前回までの流れ】
● 嘘をついても結局はバレてしまい、自分を苦しめるだけ。小さな嘘が積み重なれば、周囲との信頼関係は壊れる。
● 成績が伸びない原因を他人(先生)のせいにしていたが、実際は自分の努力不足や不真面目さが問題だった。
● 周囲の人からの信頼を失い「伸びない」と判断されてしまうと、そこから挽回するのは非常に難しくなる。
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【偏差値33からの逆転中学受験】自業自得ってこういうこと? 嘘とサボりが僕を追いつめた… 「時間泥棒」だった自分にダメ出し
僕の中学受験生活は、小学6年生の9月を迎えても、思うように成績は上がらず、気分は落ち込むばかりだった。特に算数の偏差値は30台のまま。塾のクラスもずっと底辺クラス。
周りの友だちは次第に成績を上げて、上位クラスへと移っていく。だけど、僕はどれだけ塾に通っても一向に結果が出ないから取り残されていた。学校でも、同じ塾に通っている友だちから「あいつは、塾の一番下のクラスなんだ」と言いふらされ、みんなから馬鹿にされることが日常だった。
お母さんからは「お金がかかるのに、一向に成績が上がらないじゃない!」と責められた。僕としては、真面目に塾の授業は全部出席しているし、宿題だってやっている。それでも成績は上がらない。お母さんの小言も、僕にはただの嫌味にしか聞こえなかった。
「僕なりにやっているのに、文句ばっかり言われるから、モチベーションなんて上がらない」。僕は、いつもそう思っていた。残された時間の少ないことは、十分にわかっていた。だけど、何をどうやったら状況を打開できるかは、わからなかった。
気持ちは落ち込んでいく一方で、自分から進んで勉強しようという気持ちなんて、次第にどこかへ消え失せていた。お母さんは、「全寮制の中高一貫校に行かせたい」と言っていたけど、僕はもはや「受験なんてしなくていいじゃん」としか思えなかった。
あきらめかけた僕の前に現れた「合格請負人」
お母さんは、ついに業を煮やしたようだった。今までの学費は決して安いものではない。それなのに結果が出ないどころか、むしろ悪くなっていった。このままでは投じた教育費がすべて無駄になりかねない…。そこで、お母さんは藁にもすがる思いで、僕に家庭教師をつけることを決断した。
最初に派遣された家庭教師の先生は、正直言って塾の先生と何ら変わらない感じがした。説明もわかりにくいし、ただ問題を解かせるばかり。特別な教え方という感じでもない。だから、僕はお母さんに正直に言った。
「塾の先生と変わらないよ。これなら家庭教師なんていらないんじゃない?」と。
お母さんは悩んだ末に言った。「料金は高いけど、最上級の先生にお願いするわ…」
それを聞いた僕は内心(お母さん、お金大丈夫?)と心配になった。家庭教師をつけるだけでも高いのに、さらに最上級の先生なんて、本当に大丈夫なのかと思った。
そして、数日後に現れたのが、「合格請負人」と呼ばれている源先生だった。
源先生との初めての出会い
源先生は東京大学を卒業し、建築家として活動しながら、受験生の家庭教師をしている人だった。これまで多くの受験生を難関校に合格させている。聞くところによると、たった半年間の授業で偏差値70の難関中学に合格させたり、国立大学医学部に合格させたりするといった実績もあるらしい。

「そんなすごい人が来るなら、怖い人なのかな…?」と僕はビクビクしていた。母も「威圧感のある人かもしれないわね…」と心配そうにしていた。
でも、実際に僕たちの前に現れた先生は、拍子抜けするほど優しそうな人だった。小柄で、穏やかな笑みを浮かべ、威圧感なんてまるでなかった。
第一印象では「この人で本当に大丈夫なの?」と僕も母も思ったのが正直なところだ。だけど、その疑念はすぐに消えることになる。
予想外の教え方に戸惑う
源先生の教え方は、僕がこれまで受けてきた授業とはまったく違った。
「たくさんの問題を解くだけでは意味がありません。問題を理解しないまま解いても、何も身につかないんですよ」。
先生はそう言って、僕にひとつの問題をじっくりと解かせたんだ。ときには1問を1時間以上かけて考えさせることもあった。さらに、算数は4年生の内容からやり直すことになった。(もう、9月も終わりなのに大丈夫なのかな…)と僕は正直不安になった。

「塾に行かなくたって、中学受験で難関校に合格することはできるんです。小学校で使っている教科書をじっくり読み込んで、正しく理解すれば、受験の問題だって解けるんですよ」
先生はそう言うけど、最初は意味がわからなかった。僕は塾で受験のテクニックを教わって、大量の問題を解くことが合格への近道だと信じていたからだ。だけど先生の指導を受けるうちに、少しずつ僕の考えが変わり始めていった。
少しずつ変わり始めた僕
源先生は、「すべての教科において、国語力が大切だ」と口を酸っぱくして話した。そして、算数にしても、理科にしても、問題文を正しく理解することが、答えを導く鍵だとも教えてくれた。
先生の言う通り、問題を作った出題者の意図を理解すると、「何を求められているのか」が見えてきて、今まで解けなかった問題が少しずつ解けるようになってきた。
あるとき、先生から「君は何のために勉強するんだ?」と聞かれた。そのとき、僕は「受験のためです」と答えた。すると先生は「それじゃあ、成績は伸びないはずですね」と言う。そのとき、先生が言いたかったことをすぐには理解はできなかったが、先生に教わるうちに徐々にわかってきた。
僕はただ言われたことをこなしているだけで、本当の意味で勉強をしていなかったんだ。
源先生との出会いによって、僕の中で何かが変わり始めた。そして、その変化はこれから大きなものへとつながっていくことになる。
● “努力しているつもり”では成績は伸びない。言われたことをこなすだけではなく、自分で考え、理解しながら取り組むことが大切。
●問題を解く前に「なぜそうなるのか」を考える習慣が必要。
●「何のために勉強するのか」を自分の中にもつことが成長の第一歩。受験のためだけではない、自分の学びの意味を見つけることがモチベーションにつながる。
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僕の母目線で書かれた【シングルマザーの中学受験・奮闘実録】はこちら

執筆/清宮翔太