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幼児期の食事作りで知っておきたい五大栄養素
Q.幼児期の食事作りで、親にとって「これだけは気をつけたい」ことはなんですか?
絶対にこれをやらなければいけないというルールはありません。あまりプレッシャーを感じずに毎日の食事作りをしていただきたいです。
幼児期は、味覚の形成もまだ不十分です。基本的には、楽しみながらお子さんがさまざまな食材と出合う「食体験の環境」を作る時期と考え、お子さんと一緒にそれぞれに合った食事スタイルを見つけていただきたいです。
食体験を楽しむ中で意識するとしたら、まずは、「五大栄養素」をバランスよくそろえるということを心がけてみると良いと思います。
Q.五大栄養素を簡単に教えてください。
五大栄養素とは、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルのことで、食事からとれる主な栄養素です。
主食のご飯やパン、麵類は炭水化物、主菜の肉や魚、卵、大豆製品でたんぱく質と脂質、副菜の野菜や果物、牛乳・乳製品でビタミン・ミネラルを主に摂取することができます。
どの食材にどの栄養素が豊富なのか、といった栄養バランスと食材を結びつけて知るのに便利なのが、厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」です。

「食事バランスガイド」はコマの形をした図。バランスの取れた食事にするために1日に必要な量の目安を示しています。イラストで描かれているので見た目にも分かりやすくなっています。
1日の中で、上から主食・副菜・主菜・乳製品(牛乳など)・果物と5つの食品群に分け、料理例なども紹介されています。それを目安に献立を考えると5大栄養素がバランスよくとれる食事の骨組みをつくることができます。
お子さんの好みに合わせて食材を組み合わせていただくと栄養バランスが整う毎日の献立作りに活用できます。
Q.幼少期は偏食や食事量にムラがあるお子さんも多いです。1日の食事で5つの食品群をすべて揃えた方がよいのでしょうか?
3日~1週間くらいの長いスパンでバランスを整えられればよいです。「昨日は外食でお肉を食べたから、今日のおかずはお魚にしていこう」という程度のいい意味での“ゆるさ”も必要です。
幼児に不足しがちな栄養素
Q.特に、幼児期に不足しがちな栄養素は何でしょうか?
毎日の食事からエネルギー源やたんぱく質が十分にとれている前提でいうと、鉄・カルシウムが不足しがちな栄養素としてあげられます。幼児期は第一の成長期にあたり、身長も体重も増えていきますので、そのぶんの血液や骨の材料を補う必要があります。
カルシウムは、幼児期に限らず、日本人のどの年代にも不足しがちな栄養素でもあります。幼児期から意識して摂取できる習慣を作っておくと良いですね。


痩せ型や肥満傾向、見直すべきポイントとは
Q.幼児の食事量の目安はどのくらいですか? またやせ型や肥満傾向の子どもの食事で気をつけた方がよいことがあれば教えてください。
3~5歳くらいの食事量は、大人の1/3~1/2量がおおよその目安です。
痩せすぎや太りすぎは、見た目で判断されがちですが、保育園や幼稚園での身体測定や定期健診で注意を受けなければ問題ないと考えてよいでしょう。この時期はあまり神経質にならなくても大丈夫です。
一方、痩せや肥満と判定された場合には、食生活の見直しが必要です。やせ型の要因はエネルギー(カロリー)やたんぱく質が足りていないことが考えられます。お子さんによっては、食が細い場合もあるので、3食以外に間食を取り入れるとよいです。
肥満気味のお子さんは、3食の食事以外で過剰に甘いものやスナック菓子を食べていないか?食事で揚げ物ばかりを食べていないか?寝る直前に夜食を食べていないか?など食生活を見直してみましょう。また、活動量が少なくないかなど活動量もチェック項目の一つです。
他の子と見た目を比べて保護者が肥満だと判断してしまうこともありますが、数値が基準値内であれば心配いりません。幼児期はその体型の特徴から、いわゆるぽっちゃり体型に見えやすいものです。背が伸びるピーク(成長スパート)をむかえるときに身長の伸びへと移行していきます。もし数値として「痩せ」や「肥満」という結果が出た場合は、医師や栄養士に相談することをおすすめします。
「背を伸ばしたい」必要な栄養素は?
Q.将来的に子どもの身長を伸ばしたいです。幼児期の食事で気をつけることはありますか?
身長の伸びについては、エネルギーやたんぱく質を十分にとれていることが1番大切です。他にも骨の主材料となるカルシウムは骨の強さを維持するためには欠かせません。カルシウムは、五大栄養素に含まれるミネラル(無機質)の一種です。カルシウムは、骨や歯の形成の他筋肉の収縮、神経伝達など重要な役割を果たします。
また、摂取したカルシウムの吸収を助けるビタミンDも必要です。また、食事と同じくらい、十分な睡眠も重要です。米国国立睡眠財団では、幼児期(3-5歳)の推奨睡眠時間は10時間―13時間とされています。

好き嫌いがある子どもへの対処法
Q.好き嫌いがある場合、細かく刻むなど工夫して食べさせた方がよいのでしょうか?
幼児期はまだ味覚形成が不十分なので好き嫌いがあるのは当たり前のことです。色などで気づかれてしまうケースも多いのですが、なるべく苦手食材だと気づかれないよう形を変えて細かく刻んで入れるのもとてもよい方法だと思います。
「お友達と一緒に食べたら食べられた」など小さなきっかけで食べられるようになることもあります。子どもが嫌いな食材だからと、一切食卓へ並ばなくなると味覚の変化に気が付きにくくなりますので、形を変えたり、味付けを変えたりしながら、お子さんと少しずつ歩み寄りながら見守るのがいいのではないでしょうか。
忙しい朝におすすめ!幼児期の朝ごはんメニュー
柴田さんに幼児期におすすめの朝食例をお伺いし、再現してみました。野菜は、ベビーリーフを添えています。栄養価が高い色の濃い野菜を中心に添えるようにします。茹でたブロッコリーを保存しておいたものでもよいそうです。
包丁を使わずに作れる朝ごはん

包丁を一切使わない洋食の献立なら、時間がない朝でもパパッと準備できます。
- 主食/食パン
- おかず/ハム、目玉焼き
- 野菜/ベビーリーフ
- 果物/いちご、100%オレンジジュース
- 乳製品/スライスチーズ
野菜もたんぱく質もとれる!具だくさんミネストローネ

時間のない朝、一品で野菜とたんぱく質をとることができる具沢山のミネストローネスープ。時間のある時に多めに作って保存し、朝ごはんに出すのも一案です。

材料(作りやすい分量)
野菜ジュース(食塩不使用)…1本分(約1リットル)
ツナ…1缶
ミックスビーンズ…1缶
しょうが、にんにく…各1/2かけ
好みの野菜(食べやすい大きさに切る)
玉ねぎ…1/2個
にんじん…5㎝長さ分
しめじ…1/2株
じゃがいも…1個
キャベツ…3~4枚
塩…小さじ1/3
固形ブイヨン…1個
油…適量
作り方
1.鍋に油をひいて中火で熱し、みじん切りにしたしょうがとにんにくを炒める。香りが出たら玉ねぎが透明になるまで炒め、他の野菜も加えてさっと炒めて塩で下味をつける。
2.1.に野菜ジュースを加えて中火で15~20分ほど野菜がやわらかくなるまで煮込んだら、ツナとミックスビーンズを加えてブイヨンを加えて1〜2分煮込む。味をみて足りないようなら塩・こしょう各少々(分量外)で調味する。
3.器に盛り、好みで粉チーズをふる(味に深みが出て乳製品もプラスできる)。

柴田さんのお話から、幼児期は特に基本となる五大栄養素をバランスよくとることが成長には欠かせないことが分かりました。一回の食事で完璧にしようとせず、1日や数日のスパンでバランスよくとればOKという考え方は、取り入れやすく参考にしていきたいですね。
小学生の食事や補食についても、柴田麗さんにお話を聞きました。記事を読む>>
小学生の食事のお悩みについて聞いた記事はこちら

メジャーリーガーも太鼓判!食のサポート術をたっぷり学べる1冊

アスリートやスポーツを頑張る子どもたち、また健康のために運動をしている方々の食にまつわるすべてをサポートしてきた柴田麗さんが、「これがあれば『ごはんのたいていのことは解決する』というお守りBOOKのような存在」を目指して、サポート現場で大切だったことをまとめた一冊。1章で栄養の基礎知識、2章ではその知識を状況に応じて活用するスキル、3章では実際の食事献立という組み立て。
楽しく、おいしく、ちゃんと栄養が摂れる工夫がいっぱいのレシピは、家族のご飯づくりの参考になることうけあいです!
「ジュニアのためのスポーツ栄養 学んで、食べて、強くなろう!」を読む>>
お話を伺ったのは

しばた・うらら 管理栄養士、健康運動指導士。筑波大学大学院体育研究科 スポーツ健康科学科修士課程修了。株式会社 明治に入社し、プロサッカーチームの下部組織に対する栄養サポートでは、「2007年度 地域に根ざした食育コンクール」の優秀賞 農林水産省 消費・安全局長賞を受賞。現在は独立し、フリーランスの管理栄養士としてジュニアアスリートたちの栄養をサポートしている。著書に「ジュニアのためのスポーツ栄養 学んで、食べて、強くなろう!(Gakken刊)」がある。
取材・文/川越光笑(かわごえあきえ)