小学生の「身長の伸び」を逃さないために気をつけたいことは?公認スポーツ栄養士・柴田麗さんに聞くおすすめの間食や栄養まるごとおにぎりの作り方

アスリートの健康を栄養面でサポートされている公認スポーツ栄養士の柴田麗(うらら)さんに聞く、第二弾! 今回は小学生のお子さんを持つパパ・ママからの質問をたずねてみました。

小学生をもつ親御さんの食事のお悩みを柴田さんに質問しました!

Q.子どもの食事のバランスがしっかり取れているか自信がありません。小学生に不足しがちな栄養素やおすすめの食材があれば教えてください。

小学生の時期にもエネルギー源とたんぱく質は十分に確保する必要があります。その上で基本的には幼児期と同様で、「五大栄養素」を意識しながら主食と主菜と副菜、乳製品(牛乳など)・果物を献立の中でそろえます。これを意識していただければ、大きく栄養バランスが偏ったり、一部の栄養素が極端に不足したりすることはなくなります。

あとは主食となる炭水化物の量を増やしたり、肉や魚などのたんぱく質を多めに補ったりするなど、活動量とお子さんの成長度合いによって量を調整します。

バランスの良い食事のお手本になるのが学校給食です。給食は、身体活動が「普通」の児童の1日のうちの3分の1のエネルギーや栄養素がとれるように献立が作られています。乳製品に関しては1日の2分の1量になるように栄養士さんが栄養価計算しています。そのため、栄養バランスのとれた献立の参考になります。習い事などでスポーツをしているような活動量が多いお子さんには、積極的に“おかわり”をするようにすすめています。

栄養バランスが考えられている学校給食は、献立の参考にしたい。
栄養バランスが考えられている学校給食は、献立の参考にしたい。

学校によっては保護者向けの給食試食会がありますので、味付けやバランスを知るためにも参加してみるといいですね。

Q.習い事や塾で夕飯のタイミングが遅くなってしまいます。小学生の食事の適切なタイミングはありますか。

生活リズムを整えていくためにも、3食を食べる時間帯は重要です。

体内時計を正常に働かせるためにも、朝ごはんを食べる習慣をつけるとよいでしょう。体内時計には、脳にある「中枢時計」と、肝臓や腸、筋肉にある「末梢時計」があります。末梢時計は、食事のタイミングや午前中の運動でリセットされます。

朝ごはんは、消化器系の活動を活発にすることにもつながります。欠食や食事時間が不規則になることが続くと生体リズムが崩れ、様々なカラダの不調が出てきます。

朝ごはんから給食までは規則的に食べられる場合が多いですが、塾や部活動などをされているお子さんは、その後の夕飯までの時間調整が難しいかもしれません。

例えば、塾に行く前にごはんや果物を前倒しで食べて、帰宅後に残りのおかず、野菜、乳製品を食べるなど夕食を2回に分ける方法もあります。胃腸の負担を減らすために眠る直前に量を多く食べすぎないような工夫をするのもひとつです。

Q.朝ごはんは、パンよりご飯の方がいいと聞いたことがありますが、ご飯の方が良いのでしょうか?

ご飯の方がいいと聞くけれど?

どちらも、主な栄養素は炭水化物なので、お子さんの好みや食べやすさで選ぶとよいと思います。パンにはバターなどの食材も入っていますので、脂質が気になる場合は、おかずに脂質が多いものを選ばないなど、組み合わせでバランスをとることもできます。

Q.和食の朝ごはんで、簡単な献立例はありますか。

具だくさんのお味噌汁や豚汁がおすすめ。

ご飯と具をたくさん入れたお味噌汁があればいいですね。豚汁などにして卵を落とせば栄養価もさらにアップします。果物とヨーグルトを添えるとバランスもよくなります。

果物とヨーグルトを添えれば栄養バランスも整います。

これだけで「5つの食品群」のすべてが揃います。朝はできるだけ簡単に作れるものでよいと思います。

間食の効果的な選び方

Q.間食(おやつ)を食べるなら何を選ぶとよいですか?

食事と食事の間が4~5時間くらい空いてしまうとお腹が空いてエネルギー不足になりますので、間食を上手に使います。

スポーツをしているお子さんたちには、スポーツ活動の際の間食として脂質が少ない和菓子を補食として食べることをすすめています。脂質が少なくてエネルギー源となる糖質が多いからです。特に野球などの先発ピッチャーや陸上の長距離、水泳の長距離など持久系の競技では、エネルギー不足にならないように注意する必要があります。

他にも休憩時間がある程度とれる場合は、おにぎりやカステラ、バナナ、羊羹、おせんべいなども取り入れています。

体は筋肉にエネルギー源をためていくため、まだ筋肉量が少ない小学生年代では、こまめに食べないとエネルギー切れになりがちです。間食はその目的や食べる物の種類を選んで、スポーツ活動で不足しがちな栄養を補います。※間食の量は運動量によっても異なります。

「スポーツに行くとき、子どもには小さな羊羹と飴を持たせています」(柴田さん)

Q.買い置きしておくとよい食材はありますか?

チーズやちくわなど、手軽に食べられるものが便利。

チーズやヨーグルトなどの乳製品や、魚肉ソーセージ、ちくわ、笹かまぼこなどのたんぱく質が含まれている練り物などがあると便利です。調理の手間がかからないので、お子さんが何か食べたいと思ったときに、自分で食べることができます。

Q.間食におすすめのおにぎりのバリエーションが知りたいです。

定番のおにぎりもいいですが、煮卵や魚肉ソーセージなどのたんぱく質を加えるのもおすすめです。

キムパ風おにぎり(右)と煮卵おにぎり(左)。

キムパ風おにぎり

  • ・ご飯150gに魚肉ソーセージ1/2本、たくあん2枚、きゅうり1/8本は、それぞれ粗みじん切りにする。
3食のカラフルな食材の組み合わせが食欲をそそります。

・ボウルに入れ、いりごま適量を混ぜ、丸型ににぎる。好みで韓国のりを巻く。

煮卵おにぎり

  • ・ラップの上に塩少々をふり、その上にご飯100gをおき、中央をくぼませて煮卵(市販)1個をのせる。

・ラップごとに煮卵を包むようににぎり、ラップを外して焼きのりを巻く。

栄養バランスのよい「おにぎり」は行楽シーズンにもピッタリ。見た目や食感の違いも楽しくなります。ぜひ、間食に取り入れてみてください。

知っておきたい!スポーツをする子どもの食事サポート

Q.スポーツ後、体の疲労を回復するために必要な栄養素を教えてください。

速やかな疲労回復をのために、試合や練習の後は摂取できるタイミングで、炭水化物(糖質)とたんぱく質の組み合わせが望ましいです。例えば、牛乳とあんパン、鮭や肉系が入ったおにぎり、100%果汁ジュースとサンドイッチ、バナナと飲むヨーグルトなどです。

胃腸に負担がかからないように、脂質の多い物は避けるとよいでしょう。

炭水化物(糖質)とたんぱく質を組み合わせましょう。

Q.怪我をしたとき、少しでもはやく回復するために、特に意識してとり入れるとよい食材(栄養素)はありますか?

エネルギーとたんぱく質を摂っていただいて、骨折の場合はカルシウム・ビタミンD・ビタミンCを積極的に摂るようにしてください。筋肉の損傷などは、タンパク質とビタミンCを摂りましょう。

怪我をしていると活動量が減りますので、あまりお菓子などを食べてしまうと太ってしまうケースも。成長期なのでセーブしすぎず、油っぽい揚げ物を少し控えるなど献立の工夫をしてあげるといいですね。

カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、さばなどの青魚やきのこ類にも多く含まれています。

Q.サプリメントやジュニアプロテインなどは積極的にとり入れた方がよいでしょうか?

サプリメントは日本語でいうと「栄養補助食品」です。お子さんの体格・運動量・成長度合いに応じて食事から摂る栄養素が不足している場合に活用することが本来の目的です。普段の食事から十分に栄養素が摂れている場合は必要ありません。

その他、小学生は心身ともに消化吸収能力の成長段階です。食材を噛んで、飲み込み、消化吸収の能力をつけていくためにも、まずは食品から栄養素を摂取することが大切です。

その上で、衛生面や環境面、食欲不振など様々な理由で食事が十分にできない場合には、サプリメントを活用していきましょう。

Q.子どもがイライラしていたり、落ち込んでいたりする日など、柴田さんならどのような食材や献立を食卓に並べますか?

アスリートの場合は、試合の勝敗で落ち込むこともあるので、そのときには栄養面はそこそこに選手の好みを優先して食べたいものを調理師さんが選手に聞き、献立を決めて提供することもあります。私はまだ子どもが落ち込んでいる場面に遭遇したことはありませんが、もしそのような場面になったら、「今日、食べたいものある?」と、子どもに聞いて献立を考え夕飯を作るだろうなと思います。

女子の初潮と身長の関係。食事での留意点は?

Q.女の子は「初潮」がくると身長の伸びが止まると聞きますが、本当でしょうか?

はい、それは生理学的にも自然な流れです。初潮がきたから背が止まるのではなく、身長の伸びが終わるタイミングで初潮がくるというのが正しいです。つまり成長スパート(背が伸びるタイミング)が終わったころに初潮がくるというカラダの仕組みです。

ヒトは人生の中で2回、身長が伸びるタイミングがあります。1回目は、赤ちゃんから幼児のとき。これは第一次成長です。2回目は、思春期のときで第二次成長と呼び、この2時期に急激に身長が伸びるタイミングのことを「成長スパート」といいます。平均的に女子の方が早く、11歳(小学校5年生)頃。男子は13歳頃(中学1年生)頃にピークを迎えるのが一般的です。

Q.初潮がくる前に身長を伸ばす方法はあるのでしょうか。

成長スパートを逃さないためには、月誕生日に身長を計測し記録をつけよう。

成長スパートを逃してしまうと、「気がついたら初潮がきていた」ということにもなり兼ねません。そのために、定期的に月誕生日に身長を測ることを提案しています。記録をとっていると、いつ身長が伸び始めたのか、成長スパートの時期を把握しやすくなります。

また、成長スパートが分かりやすいソフトウェア「スラリちゃん Height!」などを活用するのもひとつの手です。成長スパートがきたら、「栄養を摂り、体を動かし、十分な睡眠をとる」。この3つを軸として成長を促してあげましょう。

体重の変化もチェックポイントです。成長期は身長と体重が増えていくことが基本です。成長期に継続的に体重が減っている時は、活動量に対して、食事でのエネルギーが足りていない可能性も考えられます。例えば、クラブチームに所属し、定期的にスポーツ活動をしているお子さんたちは週末にハードな練習をすることが多いです。週明け月曜日に体重を量り体重が戻っていなかったときは食事量をいつもより多めにするようにしましょう。主食をのどごしのよい麵類にしたり、エネルギーの高い揚げ物のおかずなどを加えたり、量があまり食べられないお子さんには間食を積極的にとることなどをすすめています。

たくさん食べられない子どもには、のどごしのいい麺類をプラスするのもおすすめ。

メジャーリーガーも太鼓判!食のサポート術がたっぷり学べる1冊

「ジュニアのためのスポーツ栄養 学んで、食べて、強くなろう!」

著/柴田麗 (Gakken|1760円)

アスリートやスポーツを頑張る子どもたち、また健康のために運動をしている方々の食にまつわるすべてをサポートしてきた柴田麗さんが、「これがあれば『ごはんのたいていのことは解決する』というお守りBOOKのような存在」を目指して、サポート現場で大切だったことをまとめた一冊。1章で栄養の基礎知識、2章ではその知識を状況に応じて活用するスキル、3章では実際の食事献立という組み立て。

楽しく、おいしく、ちゃんと栄養が摂れる工夫がいっぱいのレシピは、家族のご飯づくりの参考になることうけあいです!

「ジュニアのためのスポーツ栄養 学んで、食べて、強くなろう!」を読む>>

柴田さんに聞いた「幼児期の食事づくり」の記事はこちら

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お話を伺ったのは

柴田 麗|管理栄養士/公認スポーツ栄養士・健康運動指導士

しばた・うらら 管理栄養士、健康運動指導士。筑波大学大学院体育研究科 スポーツ健康科学科修士課程修了。株式会社 明治に入社し、プロサッカーチームの下部組織に対する栄養サポートでは、「2007年度 地域に根ざした食育コンクール」の優秀賞 農林水産省 消費・安全局長賞を受賞。現在は独立し、フリーランスの管理栄養士としてジュニアアスリートたちの栄養をサポートしている。著書に「ジュニアのためのスポーツ栄養 学んで、食べて、強くなろう!(Gakken刊)」がある。

取材・文/川越光笑(かわごえあきえ)

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