家族とともにオニヤンマ採集に奔走した自由研究が受賞! 両親の子育て方針は「親も一緒に楽しむこと」【岐阜県 小学1年生 大城湊太さん】

大城湊太さんの自由研究「トンボノート2024~オニヤンマをさがせ!~」。

「小学館の図鑑NEO」と「HugKum」が昨年開催した「小学生の図鑑・自由研究コンクール」で、【小学一年生賞】を受賞したのが岐阜県の小学1年生大城湊太さんの自由研究「トンボノート2024~オニヤンマをさがせ!~」。作品からは目当てのトンボを捕まえるまで家族でさまざまな場所を訪れたこと、捕まえたときの喜びや楽しさが伝わります。なぜトンボを題材にしたのか、どんなふうにトンボを採って標本が作られたのか、その背景を大城さんファミリーにお話を伺いました。

岐阜県内を家族で回って念願のオニヤンマを採集! 丁寧な作業で標本にも

【自由研究部門】「トンボノート2024~オニヤンマをさがせ! ~ 」岐阜県 1年生 大城湊太さん

「オニヤンマを採集したい」と、岐阜県内を家族で探し回った湊太さん。素早く飛ぶトンボを捕まえるのにとても苦労したそう。採集してからは、種類を見分けるために図鑑とトンボを何度も見比べたり、標本づくりに挑戦したり、難しい作業を諦めずにやり遂げています。本や図鑑を見てただデータをまとめるのではなく、実際にたくさんのトンボを捕まえていて、種類や特徴、そのときの場所、感想もつづられていました。

取材では、ちょっと緊張気味の湊太さんでしたが、大好きなトンボについてお父さん、お母さんと一緒にいろいろとお話ししてくれました。

【小学一年生賞】を受賞したのが岐阜県の小学1年生大城湊太さん。

――トンボをテーマにしたのはなぜですか?

湊太さん:虫が好きでカブトムシとかクワガタ、バッタとかいろいろな虫を採っていて、初めて自分の力で採ったのがトンボだったからです。最初はハチをテーマにしようと思ったんですが、オオスズメバチよりもオニヤンマのほうが強いことを知ってトンボにしました。

――オオスズメバチよりもオニヤンマのほうが強いんですね。

湊太さんのお母さん:本で読んで知ったようです。あとはスズメバチ対策の虫よけグッズとしてオニヤンマのキーホルダーが売られていて、それを付けて虫採りをしていました。それで、スズメバチはオニヤンマが苦手なんだということを知ったのだと思います。

トンボがいる場所を調べてめぐり、ついにオニヤンマを採集

――トンボを採るときは誰と一緒に行きますか? いつも行く場所はありますか?

湊太さん:家族と一緒に行っています。行く場所は、岐阜県内の公園や、トンボがたくさんいる川沿いのスポットなどです。

――トンボを探すときに絶対持って行く道具はありますか?

湊太さん:網と虫よけとジッパー付保存袋と熱中症対策の塩飴と帽子を持って行きます

ハチを捕まえるときは氷スプレーも持って行きます。昆虫博物館の館長さんが、5月と6月にスズメバチの女王が巣を作るから、そのときに氷スプレーがあればそれを凍らせて採れるって教えてくれたんです。それで持って行くようになりました。

――昆虫博物館はよく行くんですか?

湊太さん:たまに家族で行っています。

弟とトンボを捕まえる湊太さん(左)。

――トンボを捕まえるときのコツがあったらぜひ教えてください。

湊太さん:トンボは同じところをぐるぐる回って飛んでます。だから、じっと飛ぶところを観察して、網が届くところにトンボが飛んできたときに、採ります。

――たくさんトンボを捕まえていましたが、どのトンボが1番うれしかったですか。

湊太さん:やっぱりオニヤンマです。どこにでもいるわけじゃないのでたくさん探しました。岐阜県内の公園をめぐってようやく見つけました。

――身近にたくさんトンボがいる場所があるのはいいですね。

湊太さんのお父さん:オニヤンマは僕も採ったことがなくて、どこにいるのかなぁと思って調べて行きました。行ったとしても必ずいるわけではないので2人で探しましたね。

――そんななかで捕まえられたときはどんな気持ちでしたか?

湊太さん:よっしゃー! って。お父さんと一緒に捕まえられてうれしかったです。このときはオニヤンマが前から飛んできて、それで網でぱって採りました。

湊太さんのお父さん:無我夢中でした。ラッキーでしたね。オニヤンマはなかなかいなくて、先ほど話したトンボ天国にもトンボはたくさんいますが、オニヤンマはいないんですよね。

――今回のこの自由研究で、すごい頑張ったところや工夫したところはどこですか。

湊太さん:文字を書くところです。書くときは図書館で借りた本を見て、いろんな色を使って、見やすいようにしました。

湊太さんのお父さん:書くのはすごい大変で、「もうやめてもいいよ」っていう話もしたんです。でもこのノートを小学校に持って行って友だちに教えてあげたいからって言って、いろいろと細かく書き込んでいましたね。

名前やどんなトンボなのかの解説、性別ごとに大きさのほか、取ったときの感想もきれいな色使いでつづられています。

昆虫博物館の館長さんの協力を得て標本作りにも挑戦

――標本を作っていたのもすごいなと思いました。標本作りは難しかったですか?

湊太さん:難しかったです。標本箱を作るところとか、クワガタとかの真ん中に針を刺すのが本当に硬かった。作るときはお父さんも手伝ってくれました。

――標本はどうやって作りましたか?

湊太さんのお父さん:昆虫博物館の館長さんにどうやって作るかを聞きに行って、教えてもらいました。

――頭の部分が上向いてるように作ってありましたが、どうやりましたか?

湊太さん:頭をクルっと3回くらい回すと、頭が取れます。それからまた頭と体を接着剤でつけました。これも館長さんが教えてくれました。

湊太さんのお母さん:学術的に目が離れているか、くっついているかでトンボの種類が異なることもあると、昆虫博物館の館長さんに教わりました。それで頭を上に向けているんです。

――研究者が見てもちゃんと観察できるレベルを作ったんですね。

湊太さんのお父さん:体のなかには猫じゃらしの茎を入れているんですけど、これも館長さんに習って一生懸命作りました。

「頭を取るのは怖くなかった?」と聞くと「怖くなかった」と湊太さん。
湊太さんが作ったオニヤンマの標本。きちんとデータも書き込んでいます。

――これからトンボを捕まえに行ってみたい場所や、こんなトンボをいつか捕まえてみたいという種類があれば教えてください。

湊太さん:捕まえてみたいトンボはマルタンヤンマです。日本にもいる絶滅危惧種なんです。

湊太さんのお母さん:弁天池(岐阜県恵那市)にいると聞いたんですけど、館長さんもまだ捕まえたことがないみたいで…。

湊太さん:メスならあるけどオスはないんだそうです。オスのほうがきれいだし青いです。

――もしまた自由研究をやるなら、どんなテーマに挑戦したいですか。

湊太さん:虫。マルタンヤンマに興味があります。捕まえてその研究がしたいです。

――将来なりたいものはありますか?

湊太さん:昆虫博士です。

――お父さんやお母さんが話すことを隣で聞いていても、もし内容に間違いがあれば即座に訂正するほど昆虫に詳しい湊太さん。その知識や行動力はすでに昆虫博士のようでした。

「虫を採りたいと言われたら採らせてあげたい」とお父さんは調べて現地へ向かうお手伝い

トンボが好きで採りたいと思っても湊太さん1人では捕まえるのは困難。そこにはお父さん、お母さんの協力があったことがわかります。そこで湊太さんのお父さん、お母さんにも、湊太さんのことや普段の子育てについて伺いました。

――湊太さんは小さな頃から生き物に興味を持っていましたか。

湊太さんのお父さん:そうですね。自宅には、妻が好きで子どもが生まれる前からフトアゴヒゲトカゲを飼っていて、小さい頃から生き物に触れる機会がありました。

僕自身は東京出身で虫に触れることがあまりなかったのですが、一緒に虫採りをするうちにだいぶハマってしまいました。当時は北海道にいて、湊太が3歳のときに転勤で岐阜県に引っ越しました。

――普段から虫やトンボを一緒に採っているんですね。

湊太さんのお父さん:採りたいって言われたら、採らせてあげたいなと思って。ツテや知り合いに聞いたりして、探しています。オニヤンマが採れたときは、家族5人で大盛り上がりでした。

――普段はどんな性格のお子さんですか。どんなことが好きで得意ですか?

湊太さんのお父さん:作ることが好きで、折り紙が得意です。難しいドラゴンも、最初は2人で本を見ながら1時間ちょっとかけて作ったんですよ。僕はそれでお腹いっぱいになっちゃってその後作らなかったんですけど、1人でずっと練習して今では何も見ずに短時間で作れるようになりました。それを友だちに作ってあげたらすごい喜ばれて、たくさん作ってあげるようになったみたいです。頑張って練習して何かをやるのが得意だと思いますね。

この日も折り紙でドラゴンを折ってくれました。細かなところまで丁寧に仕上げています。
完成したドラゴンとパチリ♪
完成したドラゴンとパチリ♪

――自由研究を進める過程をそばで見ていてどんなふうに感じられましたか。

湊太さんのお母さん:主人と一緒にやっていることが多くて、そばで見てるだけだったんですけど、素直にすごいなと思って。いつもは“ザ!男子”っていうがさつな性格なんですけど、物を作るときだけはとても丁寧に作るので、標本を作るときも念入りに取り組んでいましたね。

――図工も大好きですか?

湊太さんのお母さん:製作が好きですね。家でもプラスチックや空き箱を取っておいて、それで作っています。何かを見てっていうより、自由に作ることが多いです。

自由研究も一緒に楽しみ、「好きにやっていいよ」と声掛け

――自由研究をサポートする際に気を付けたことはありますか。

湊太さんのお父さん:一緒に楽しんでたっていうのは正直ありますね。僕もこういう体験をあんまりしてこなかったので、自然豊かな岐阜県に来たのはすごくよかったです。

初めてトンボを取ったときは、1人で1時間くらいずっと追いかけていて。取ったときの顔がすごいうれしそうで、それを見て自分も喜んだ思い出があります。

――データもすごく細かく書いていましたが、書き進める際は声掛けをしていましたか?

湊太さんのお父さん:これを書いてみたら面白そうだね、やってみる? と言っていたところもありますが、あんまり無理させたくなかったので、好きなようにやっていいよと伝えていました。友だちが見たときにこういうデータがあったらわかりやすいかなって、本人にもそういう意識もあったと思いますね。

湊太さんのお母さん:トンボを好きになる前は恐竜が好きだったんです。そのときは「そうたノート」っていうのをつけていて、好きなティラノサウルスがいつの時代で、どれぐらいの大きさでっていうのを、ひらがなが書けるようになってから自分で細かく書いていたんです。その流れがあったので、ここに書くのはあんまり苦痛ではなかったんだと思います。

恐竜が好きだった頃の湊太さん。

――取ったトンボは、見れば種類がわかるんですか?

湊太さんのお母さん:本を見て調べるんです。ただ、違いが細かいので、先ほどから話に出ている館長さんも、実際に柄などを見て本で調べないとトンボの種類はわからないんだそうです。

今回標本箱を作った際も、博物館に持って館長さんに全部種類が合ってるか確認してもらったんですが、専門家から見ると3、4個違っていたのがあって。作り方を教えてもらったので、できたから見せに行こうと軽い気持ちで伺いました。それでも忙しいなかたくさん調べてくださいました。

子どもたちがどんな性格で、なにに興味を持ってるのかをアップデートしていきたい

――今回のトンボやその前の恐竜など、お子さんが何かに興味を持ったときはどんな風に向き合ってますか。

湊太さんのお母さん:私たちが知らないことが多いので、博物館もこの歳になって行くと、意外に楽しかったり、一緒に楽しませてもらったりしているという気持ちですね。

――子育て全般で大切にしていることがあればお聞きしたいです。

湊太さんのお父さん:なるべく家が居心地がいいというか、安心安全の場にというのは思っていて。

外に出ればうれしいことも大変なこともあるので、家に帰ってきて、僕らに話してもいいし、話さなくてもいいんですけど、寝て、次の日にまた「よし行くぞ」っていう、“心が回復する家”を作りたいねって話はよくしています。そういう意味では、僕もなるべく家にいるようにしています

湊太さんと、お母さん、お父さん。

――お忙しかったら、休みの日に一緒に虫採りに行くのは大変じゃないですか?

湊太さんのお父さん:やっぱり子どもが第一だよねって2人でよく話しているので、子ども優先で。本当に楽しくやっています。コミュニケーションのなかで、子どもたちがどんな性格で、なにに興味を持ってるのかは、やっぱりアップデートしてかなきゃいけないことだと思うので、そこはなるべく知るようにしてますね。

――興味や好きなことに気づいたとき、その気持ちをどう育んでいますか?

湊太さんのお父さん:やっぱり一緒にやることと話を聞くことですね。そして見てあげて褒めることだと思います。湊太には湊太に、弟には弟に、その子に合わせたリアクションだったり、対応をしたりするようにしています。

湊太さんのお母さん:親だけじゃなくて、おじいちゃんやおばあちゃん、学校の先生など第三者に褒めてもらったり、認めてもらったりすることが自信になっていくとも思っています。今回の賞をいただいたときも、学校の先生に伝えて、一言かけていただきました。親に褒められるのはいつものことだと思ってしまうので、ちょっと違う刺激も大切にしています。

子どもの好きなことを親も楽しむ! 子育てのことは夫婦で共有する姿勢が印象的

最後に、今回の受賞と取材について、「こういう機会も彼にとっては価値観が変わることだと思って、オンラインでの取材ではなく、小学館の本社に直接来ました」と、わざわざ岐阜県から、来てくれた理由をお話ししてくれたお父さん。この日はご両親のほか、湊太さんの弟と妹、そしておじいちゃんおばあちゃんも一緒に来ていて、普段からあたたかな家族に見守られながら過ごしているのだなと感じました。

子どもの好きなことを親も一緒に楽しむ姿勢、そして常に夫婦で話をして、子育てで大切なことを共有している様子もとても印象的。湊太さんが次に狙う絶滅危惧種の「マルタンヤンマ」を捕まえられるのか、今後の昆虫博士の活躍も楽しみです。

自由研究コンクール結果発表はこちら

応募数3653件の中から受賞者が決定『小学生の図鑑・自由研究コンクール』 おもしろい着眼点やハイレベルな完成度の力作ぞろい!
最優秀賞 最優秀賞は応募部門3つ(自由研究、図鑑、自学ノート)より、それぞれ1作品が受賞しました。 【自由研究部門】「こんにちは赤...

ほかの小学一年生の受賞作品もチェック

【自由研究コンクール最優秀賞】滋賀県の小1髙橋 凜さん「お母さんのお腹に宿った赤ちゃんを研究したい!」3姉妹の末っ子を見守った作品が家族の一生の宝物に
夏休みに生まれた妹を自由研究のテーマに 髙橋凜さんの作品タイトルは「こんにちは赤ちゃん~いもうとのたんじょうみっちゃ...
小1とは思えない完成度!【自由研究コンクール】東京都 柊優さんは標本図鑑でオスとメスを徹底比較「将来は科学者になりたい」
細部まで完成度の高い図鑑 柊優さんの自由研究は、生き物のオスとメスの違いを図鑑にまとめた「オスメス図鑑」。生き物を捕ったり飼育したりす...

取材・文/長南真理恵 撮影/五十嵐美弥

夏休み☆小学生の自由研究 大特集

編集部おすすめ

関連記事