独学で英検1級・TOEIC満点へ。引きこもりで孤独だった人生を変えた英語学習 「馬鹿にされた過去を見返したい」積み上げた10年の勉強法【英語講師 とげまるさん体験談】

英語講師として働く和田 啓さんは、大学生の頃に引きこもりを経験。心理カウンセラーさんの一言をきっかけに英語学習をはじめ、数々の難関試験を突破してきました。そして、その勉強法について「とげまる」という名前でXやnoteでの投稿を続けています。現在、福岡県の北九州市にある大学受験TG、およびTG外語学院で英語を教えるとげまるさんにインタビューし、効果的な学習法やモチベーションを保つコツなどを伺いました。

大学になじめず引きこもりの日々。カウンセラーの一言が英語学習のきっかけに

――大学時代に引きこもりを経験されたことが英語学習のきっかけだったのですね

とげまるさん:大学入学を機に福岡から上京しましたが、もともと人見知りな性格に加え、知り合いが一人もいない東京という土地に強い孤独を感じていました。加えて、男子校出身だったこともあり、女子が多い大学の環境にはなかなかなじめませんでした。

「サークルに入れば状況が変わるかもしれない」と思い参加してみたものの、内向的で不器用な性格が影響し、周囲とうまくコミュニケーションを取れず、任された仕事でも失敗が続いて悩む日々が続きました。
そうした中で、「コミュ障」などの心ない言葉をかけられたり、仲間外れにされたりといった出来事が重なり、大学1年の後半から半年ほど、まったく大学に通えなくなってしまいました

それで、僕の状態を見かねた母からスクールソーシャルワーカー(カウンセラー)の先生に相談してみるようにと勧められたんです。はじめは本当に引きこもりのような状態でしたが、自分の悩みを相談する中で少しずつ学校にも行けるようになり、3年生に進級することもできました。そして、ちょうどその頃、そのカウンセラーさんが受け持っている別の生徒さんの英語の課題を手伝うという機会があり、すごく褒めていただいたんですよね。それで先生に「英語の勉強をやってみたら?」といわれたんです。

はじめは「どうせやっても無理だろう」と思っていたけど…

――英語はもともと得意だったのですか?

とげまるさん:中高生の頃から英語は好きでしたし、大学も英文科に通っていましたが、当時の英語力は、英検2級、TOEIC405点で、「英語ができる」というレベルではありませんでした。だからカウンセラーさんに勧められたときも、はじめは正直「どうせやっても無理だろう」みたいな気持ちもありました。とはいえ当時大学3年生で就職活動が近づいてるので何かしなきゃという焦りもあったんですよね。それに加えて、自分のことをいじめていた人たちを見返したいなという気持ちも強かったです。

405点だったスコアが半年後には730点、1年後には905点に!

――そこからTOEICなどの勉強を始めたのですか?

とげまるさん:そうですね。集中して勉強したことで半年後にはTOEICのスコアを730点まで伸ばすことができました。そこからさらに1年後には905点を取得し、勉強の成果を実感しましたね。

勉強法は英語界隈で有名な方を参考に。過去を見返したい気持ちもモチベーションになった

――それはすごいですね! どんなふうに勉強されたのですか?

とげまるさん:はじめは情報が全然なかったので、Morite2(もりてつ)さんATSUさんといった英語学習者の間で有名な方の勉強法や教材選びの参考にしました。

TOEICの問題集。難易度の高い韓国のTOEIC公式問題集も活用されているそう。

とげまるさん:単語の暗記はATSUさんの勉強法を参考にして、1日100個の単語を紙に単語と日本語訳を5回ずつ書いて、声に出しながら覚えるということをやっていました。そして寝る前にその日やった単語のリストを見直して、日本語訳を赤シートで隠して確認し、言えなかった単語はもう一度覚え直して翌朝また確認するということを繰り返していました。

――すごい勉強量ですね。途中で心が折れることはなかったですか?

とげまるさん:TOEICは短い間にスコアを伸ばすことができたものの、その後は100点近くスコアを落とすこともありましたし、はじめの頃に受けた英検準1級一次試験では、4点足りず不合格になったこともありました。力を入れて取り組んでいたことが上手くいかないのはショックでしたが、僕は10年単位で目標を立てていたので、そこで諦めるということはなかったです。それに、大学時代に自分を馬鹿にしていた人たちを見返したい気持ちもあったので、自分の決めたことはやるというスタンスは崩しませんでした。そして結果としては、20代のうちにTOEIC満点、英検1級、ケンブリッジ英検CPE(C2)、国連英検特A級に合格するという目標を達成することができました。

(左)TOEIC満点をとったスコア表(右)ケンブリッジ英検の合格証

ケンブリッジ英検や国連英検など世界的な試験にも挑戦

――TOEICや英検は受けたことのある方も多いと思うのですが、ケンブリッジ英検や国連英検はどういった試験なのでしょうか?

とげまるさん:ケンブリッジ英検は日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ヨーロッパで大学院に入ったり、就職したりするときの語学力の証明になる試験ですね。A2(初級)、B1(初中級)、B2(中上級)、C1(上級)、C2(最上級)というレベルがあり、C2は英検1級やTOEIC990よりも上とされています。

国連英検特A級の合格証

とげまるさん:国連英検は6つのレベルがあり、英語力だけでなく国際社会や国際情勢への理解も問われるので、こちらもかなり難しいですね。例えば「トランプ大統領が選出された後、世界がどのように変わっていくと思いますか」のようなことを面接で聞かれるので、普段から英字新聞や海外のニュースなどを見て考えをまとめておくなどの対策が必要でした。

毎日努力して目標を達成できたことは自信になった

――たくさんの難関試験に合格されたことで、ご自身の心境にも変化はありましたか?

とげまるさん:試験に合格することで、自分に自信を持てたということはあります。自分が定めた目標に向かって毎日コツコツ勉強することによって、目に見える結果を手にすることができたのは自分にとっては大きな自信につながりました。とはいえ、僕は資格だけをとっていればいいという考えではないんです。試験を受けるのはあくまで自分の今の立ち位置を知るためという感じです。

英検1級の合格証

留学しなくても、お金をたくさん使わなくても英語力は身につけられる!

――英語学習のモチベーションを維持するコツはありますか?

とげまるさん:僕の場合は勉強していく中で、英語がどんどん好きになっていったというのが大きいですね。先ほどもお話ししたMorite2(もりてつ)さんや、 ATSUさん、そしてTOEIC関連でたくさんの書籍を出されている神崎正哉先生のような方に憧れて、自分もそうなりたいと思うことが一番のモチベーションです。僕よりもずっと英語のできる方が日々勉強されている様子を目の当たりにすると、自分ももっと頑張らなきゃと思いますね。

――和田さんはXで勉強時間を投稿されていますね。

 とげまるさんのX(@KTogemaru)の投稿より

とげまるさん:ほぼ毎朝、Xで「学習宣言」をして、1日の終わりに「学習時間の報告」をしています。自分で1日の計画を立ててそれを実行するというのは、勉強を習慣化させるのにかなり効果的だと思います。

スピーキングやライティングにはChatGPTの活用も

――今はどんなふうに勉強をされているのですか?

とげまるさん:インプット(リスニングやリーディングなど)7割、アウトプット(スピーキングやライティングなど)3割と決めて勉強しています。英語って話すことや書くことに重きをおきがちですが、何も知識がない状態では無理ですよね。だからまずは英語をたくさん読んだり聞いたりすることがすごく重要だと思っています。

毎日英語に触れないと気持ち悪いと感じることもあるそう。

とげまるさん最近はChatGPTを活用することも多くて、例えば英字新聞などで読んだ記事を1分間英語で要約して話した後、それに対する意見を1分間で説明するというのをやっています。ChatGPTが自然な英語に直してくれるので、それを何回も繰り返して修正していくというのをやっています。ライティングの添削にも活用していますよ。

――ChatGPTが相手なら英語を話すハードルも下がりますし、お金もかからないですね!

とげまるさん:そうなんです。「改善点を教えてください」とお願いすると良い点と悪い点を教えてくれるので、ぜひ活用してみてください。

子どもの英語にも資格試験はおすすめ!SNSでつながりを作ってモチベーションアップに

――HugKum読者の中には、子どもの英語教育に関心がある方も多いと思います。何かアドバイスはありますか?

とげまるさん:個人的には英語の早期教育には少し疑問もありますが、お子さんが英語をやってみたい、英語が好きという気持ちなのであればぜひ応援してあげてほしいです。いろいろなやり方がありますが、子どもが達成感を感じられるという点では、資格試験は効果的だと思いますね。アニメや歌などの聞き流しなどもよいとは思いますが、なかなか成長を感じにくい部分もあります。僕もリスニングをずっとやっていても「前よりもわかるようになった」と感じるまでに5、6年かかりました。

普段は英語講師として塾で教えているとげまるさん

とげまるさん:以前小中学生に英語を教えていたことがありましたが、子どもたちはやっぱりテストでよい点を取れるとすごく喜ぶんですよね。もちろん、子どもの性格などによりますが、資格試験をうまく活用するとよいかなと思います。英検が一番メジャーではありますが、個人的にはケンブリッジ英検もおすすめです。ケンブリッジ英検は試験の問題自体も英語ですし、記述式の問題も多いので英語力を鍛えたいというお子さんはぜひ受けてみてほしいです。

――やはり試験で結果を出すのもモチベーションにつながりますね。

とげまるさん:SNSをのぞいてみると、「おうち英語」だったり、子ども向けの英語イベントがあったりしますよね。僕の知り合いもそれに参加されて、フォロワーさん同士で仲良くなって情報を共有し合っているそうです。語学って孤独な学習になりがちなのですが、SNSなどを使って学習者同士でつながって、お互いに励まし合うのは有効だと思います。あとは、自分の小さな成長を見つけることも大事だと思います。例えば、1週間前に比べて単語を多く覚えられたとか、問題集がスムーズに解けるようになったとか、何でもいいので、小さな成長を見つけて、それを自分で認めてあげるということが継続の力になるはずです。

――ありがとうございました。現在とげまるさんは、語学情報ウェブサイト「ENGLISH JOURNAL」で英語学習法に関する連載をされているそう。具体的な勉強法をもっと知りたい方はぜひチェックしてみてくださいね。サイトはこちら

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お話をうかがったのは

とげまる(和田 啓) 英語講師

中央大学文学部卒。大学在学中、いじめが原因となって引きこもりを経験するが、心理カウンセラーの勧めで英語学習を独学で始めたことがきっかけで自信を取り戻す。Xアカウントで学習に役立つ情報や自身の学習記録を発信中。 保有資格:ケンブリッジ英検CPE(CEFR C2/C2 proficiency)、国連英検特A級、 英検1級、TOEIC L&Rテスト990点、英単語検定1級。現在、福岡県の北九州市にある大学受験TG、およびTG外語学院で英語を教えている。

X:@KTogemaru

note:https://note.com/united_togemaru

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取材・文/平丸真梨子

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