目次
幼稚園の年長から興味を持った絵画の模写
美術が好きなお母さんに勧められて絵画の模写をはじめた齋藤湊真さん。今回の作品『ラピスラズリでフェルメールをえがく』は、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』がラピスラズリという宝石を使って描かれたものだと知り、自分でも同じように描いてみたいと考え、絵の具作りからはじめたといいます。

ーーどうして『ラピスラズリでフェルメールをえがく』をやろうと思ったのですか?
湊真さん:幼稚園のときにお母さんから勧められて絵画の模写をやってみたら楽しかったので、また描きたいなと思いました。
ーーフェルメールを選んだのには何か理由があったんですか?
湊真さん:お母さんに『真珠の耳飾りの少女』が宝石で描かれていると聞いて、描くのが楽しそうだなと思いフェルメールにしました。お父さんに宝石の図鑑を買ってもらってから、宝石がすごく好きになりました。それも、このテーマを選んだ理由のひとつです。
湊真さんのお母さん:他にもムンクの『叫び』とかピカソの『夢』とかいろいろ描きましたが、『真珠の耳飾りの少女』はその中の1つでした。

ーーフェルメールを知ったきっかけはありますか?
湊真さんのお母さん:毎月ちがう画家の絵画を数点プリントし、子ども部屋に飾るようにしていました。本人がそれを気に入って、自然にフェルメールを覚えました。

絵の具作りが大変で、途中でくじけそうになったことも
ーー絵の具の素材が珍しいものだとわかったとき、どんなふうに思いましたか?
湊真さん:そんなすごいもの(宝石)で描くのは贅沢だなと思いました。
ーー絵の具の作り方はどうやって調べましたか?
湊真さん:お母さんにネットで調べてもらったり、自分で本を読んで調べたりしました。
ーー作り方がわかっても、実際にやるのは大変そうだなとは思いませんでしたか?
湊真さん:はい、大変そうだと思いました。でも、僕は絵と宝石がすごく好きなので、挑戦しようと思いました。

ーー実際に絵の具を作ってみて、大変だったところを教えてください。
湊真さん:まず材料の石を青と青じゃないものに分けるのが大変でした。そのあと乳鉢で細かく擦るところは、力がいるのでもっと大変でした。絵の具を作ることに時間がかかりすぎて、絵に色をつけるところまでたどりつけないんじゃないかと思いました。
ーーそれは自分で全部できましたか?
湊真さんのお母さん:少しだけ私も手伝いました(笑) 。実際、小学1年生の力で石を砕いていくのはなかなか難しく、力が足りないときにはサポートするようにしました。
ーー擦るのはすごく硬かったんですね。
湊真さん:はい。時間もかかるし、本当に疲れました。力が足りなくて擦るのが進まず、完成するイメージが湧かなかったのですが、お母さんが夜に少しだけ進めてくれていて、僕ももっと頑張ろうと思いました。

ーー私もこの絵の具の作り方を初めて知りましたが、こんなに大変なんだってびっくりしました。逆に楽しかったところはどんなところですか?
湊真さん:最初は本当に絵の具になるのかなってすごく緊張してやったのですが、ニカワを入れて練って完成したものを使ってみたら、本当に絵の具ができていて、最後に絵を(できた絵の具で)描いてみたら本当に楽しかったです。
※ニカワ…動物の皮や骨などを原料として水で煮て作り、固めた接着剤。
ーーどのあたりで「絵の具になりそう」って思えてきましたか?
湊真さん:粉になったものに水を注ぎアクを抜いたときに、きれいな青になってきたので、これは絵の具として使えそうだなあと思って。
ーー幼稚園のとき描いた絵と今回描いた絵は、自分ではどうちがうと思いますか?
湊真さん:ターバンの青い部分がよく見ると粉みたいに見えたところ(絵の具の塗りの質感が出ているところ)がちがうなって思います。だから今回の方が上手に描けたと思います。

ーー絵の具を作ってからレポートが終わるまで、どのくらいかかったんでしょうか。
湊真さん:絵の具を作って絵を描くのは1か月ぐらい、レポートに1か月ぐらい、合計2か月くらいかかりました。
ーー絵ができたとき、自分ではどう思いましたか?
湊真さん:最初はあまり立派じゃない、失敗したかなと思っていました。でも、学校で飾ってもらったのを見てくれた方が褒めてくれて、少し自信が持てました。
ーーどの辺がはじめに失敗したかもと思ったんですか?
湊真さん:目の部分を最初に(白目の部分も)真っ黒にしちゃったんです。でも白を大量に塗って、元に戻してやり直しました。真珠の部分も思ったより黒が混ざってしまいました。

ーーでも黒が混ざったことで、立体感を感じました。絵を描く手順はどんな感じでしたか?
湊真さん:最初は鉛筆で下書きして、それから絵の具で女の人を塗りました。顔を描いた後は真珠です。最初は真珠が一番大事なのかなと思っていましたが、ターバンの青い部分が宝石でできた絵の具で塗られていると知ってからは、ターバンを一番大事に塗りました。最後に、真珠と黒い部分(背景)を塗りました。お母さんには、黒の取り扱いには気を付けてね、と言われたので丁寧に塗りました。
好きなものは「人間っぽくないもの」
ーーもともと絵を描くのが好きなんですか?
湊真さんのお母さん:幼稚園の頃から絵を描くのが好きで、模写を教えてくれるオンラインレッスンを受けています。

湊真さん:小さい頃は、そのとき好きだった車と、妖怪やお化けなどを描いていました。あとは夜空と月を書いたりとか。おじいちゃんが読んでくれた、夜動くとかちょっと怖いけどおもしろかった「六地蔵」(昔話の「かさじぞう」)の絵も、本を見て描きました。
ーー本物のお地蔵さんは見たことありますか?
湊真さん:はい、幼稚園の帰り道にあったんです。見つけたときは走り寄ってひとつずつお参りして、でもいっぱいあると時間がかかります…。
ーーそれは時間がかかりますね(笑) 。どうしてそんなにお地蔵さんが好きなんですか?
湊真さん:千手観音とか、目が3つある妖怪とか、人間っぽくないものが好きなんです。最近は中国の幻獣とかにも興味があります。

ーーフェルメール以外にも好きな画家や絵はありますか?
湊真さん:たくさんあって選ぶのが難しいのですが、最近は、メキシコのフリーダ・カーロや、ヒグチユウコさんの絵が気に入っています。どちらも、少し怖い感じが好きです。
ーーどこで知ったんですか?
湊真さん:フリーダ・カーロは模写のオンラインレッスンのテーマで知りました。怖いのと変なのが混じっていて、好きになりました。
ーー普段から美術館などに出かけていますか?
湊真さん:最近は、岡本太郎美術館に行きました。これから行きたいのは、『最後の晩餐』がある場所(イタリア)です。どのくらい大きいのか見てみたいです。
日本なら以前にも行ったことのある日光東照宮で、また『眠り猫』を見たり、周りの場所を観察したりしたいです。
興味を持ったものは、その都度親子で一緒に調べたり集めたり
ーーお子さんの研究をサポートする上で、大変だったことや気をつけたことはありますか?
湊真さんのお母さん:石を粉にするところは手伝いましたが、絵はYouTubeと本を見て、本人が頑張ってくれたと思います。最後にレポートにまとめるのが本当に大変で。文字を書くのが嫌いで、1日1枚とかのペースでした。レポートだけで1か月くらいかかったのではないでしょうか。人生初の自由研究なので、レポートを書くのもはじめての経験。何をどうすればいいのかよくわかっていなかったんだと思います。

ーーお子さんの「好き」を伸ばすために心がけていることを教えてください。
湊真さんのお母さん:夢中になるものが次々に変わるんです。今まで応援したものから急に興味が移ってしまうと一瞬さみしい気持ちになりますが、一度好きになったものは「好きの殿堂入りをしたんだな」と受け止めて、新たに好きになったものを一緒にネットで調べたり、関連する本を買ったりして、応援しています。
次回の自由研究は世界へ!?
ーー次に自由研究をするなら、どんなテーマに挑戦してみたいですか?
湊真さん:模写ならピカソを描いてみたいですが、描きたい絵はいっぱいあって選べません。他には、エジプトの砂漠でエメラルドや金、ペリドットを発見した人をテレビで見て、僕も宝石を探したいと思いました。
ーーおお~自由研究が世界規模に!
湊真さんのお母さん:去年から古代エジプトにも夢中になっていて、今はアラビア語をオンラインで習っているんですよ。
ーーえー! 普通なら全然読めない文字ですよね。
湊真さん:今は少し読めます!

ーー将来やってみたいことはありますか?
湊真さん:たくさんありすぎて選べません。人を助けることをしたいし、彫刻もしたいし…、キャラクター作りや、考古学なんかもしたいです。
ーーまだ小学2年生の湊真さんですが、好奇心いっぱいで興味を持っているたくさんのことを一生懸命話してくれたのがとても印象的。お母さんの、子どもの興味が移っても「好きの殿堂入りをしたんだな」という受け止め方も素敵だと感じました。
自由研究コンクール結果発表はこちら!

ほかの受賞者のインタビューもおすすめ
取材・文/苗代みほ 撮影/五十嵐美弥