今回は、基本の重ね煮を作り置きしてから、カレーとひじき煮の2品に展開する方法を見ていきます。一見ちぐはぐに思える組み合わせですが、シンプルな味わいの重ね煮だからこそ、どちらも自然なおいしさに仕上がります。
アレンジの幅広さを、ぜひご家庭でも試してみてください。
重ね煮の基本
重ね煮のメリット
重ね煮は、塩を加えて加熱するだけのシンプルな調理法です。調味料による味つけに頼らなくても、野菜そのものの味わいが濃厚に感じられるため、野菜が苦手なお子さんでも不思議と手が伸びることは珍しくありません。

また、野菜がやわらかく煮えるので、離乳食や幼児食にも取り入れやすく、味覚が育つ時期にも安心して食卓に出すことができます。使う野菜を選べばアレルギーへの対応もできるため、ご家庭の食事に合わせやすいのも特徴です。
また、調理工程が簡単なので、作り手の負担が少ないのはもちろんですが、子どもと一緒に取り組みやすいという利点もあります。野菜を切って、香りを感じる、そんな何気ないひとときの中で、食への興味や感謝の気持ちが自然と育まれます。
余計な添加物を使わず、いつもの食材だけで作れる重ね煮。無理なく続けられる身近さが、子育て世代に広く支持されている理由といえそうです。
重ね煮の基本については、こちらの記事をご覧ください。
最初のステップ【基本の重ね煮】
今回ご紹介するのは、重ね煮をベースにした「カレー」と「ひじき煮」の展開レシピです。まずはカレー、ひじきに合う具材を使い、基本の重ね煮を作ります。
工程はとてもシンプルですが、野菜の旨味がぎゅっと詰まった一品に仕上がります。もちろん、そのまま食べてもやさしい味わいで、十分に満足できるおかずになりますよ。

・材料
(作りやすい分量)
しめじ 1パック
エノキ 1株
玉ねぎ 2個
にんじん 2本
じゃがいも 1個
塩 小さじ1/4(鍋底用)、小さじ1/2(具材の上用)
水 大さじ2(無水鍋の場合は不要)
鶏肉 250g
・作り方
【1】無水鍋、または土鍋を用意し、底に塩小さじ1/4をまきます。
しめじとエノキは、石づき部分を切り落とし、ほぐして食べやすい大きさに切ります。玉ねぎは薄皮をはずしてから縦半分に切り、薄めのくし切りにします。

じゃがいもは一口大に切ります。にんじんは小さめの乱切りと細切りの、2種類を用意します。
野菜のあく抜きは必要ありません。皮ごと使える点も、重ね煮の魅力です。
【2】しめじ、玉ねぎ、じゃがいも、にんじんの順に鍋へ重ねます。いちばん上に鶏肉をのせます。

【3】土鍋を使う場合は、蒸気穴に菜箸を挿して塞ぎ、水を加えます。
【4】塩小さじ1/2を全体にふりかけ、蓋をします。
【5】弱火で30~40分加熱します。
【6】火を止め、蓋をしたまま10分ほど蒸らします。

野菜だけの重ね煮の場合、一度にたっぷり作っておけば、冷蔵保存がきくので、4~5日分の下ごしらえとして活用できますよ。今回は材料に鶏肉を使っているため、2~3日のうちに食べ切ってください。
調理の手間を減らしつつ、忙しい朝や夕方にも温かいごはんを用意できるのは、心強いですよね。
アレンジレシピ【カレー】
重ね煮を使って、煮込み時間をぐっと短縮したカレーに仕上げます。野菜の旨味がしっかり溶け込んだ、やさしい味わいの一皿になります。

・材料
(2人分)
重ね煮 野菜 150g~200g、鶏肉 150g程度
カレールウ 2かけ(お好みの量)
水 400ml
・作り方
【1】重ね煮の中から、じゃがいもとにんじんを中心に、野菜を約150g~200g用意します。 重ね煮の鶏肉を150g程度用意し、食べやすい大きさに切ります。
【2】鍋に水と【1】の具材を入れて中火で温めます。
【3】カレールウを加えて溶かし、5〜10分ほど煮込みます。

スープにとろみが出たら完成です。
野菜の甘みとコクがルウとなじみ、まろやかなカレーがあっという間に完成します。辛さ控えめのルウを使えば、小さなお子さんにも安心して出せる一品になりますよ。
大人向けに作りたい場合は、最初に生姜とにんにくを油で炒めてから具材を加えると、コクが増します。
アレンジレシピ【ひじきの炒め物】
重ね煮があれば、副菜も手早く用意できます。次に、ひじきと組み合わせて作る炒め物を作る工程を見ていきましょう。調味料はしょうゆだけなのに、素材の持つ甘みが感じられますよ。
冷めてもおいしく、作り置きやお弁当にもぴったりです。

・材料
重ね煮 約200g
乾燥ひじき 20g
ちくわ 2本
しょうゆ 大さじ1
ごま油 大さじ1
・作り方
【1】ひじきは水で戻し、水気を切ってください。ちくわは薄切りにします。 重ね煮を約200gを目安に取り分けておきます。
【2】フライパンにごま油を熱し、ひじきとちくわを入れて炒めます。全体に火が通ったら重ね煮を加えて、さらに炒め合わせます。

【3】しょうゆを加えて全体になじませたら、最後に火を強めて汁気を飛ばします。
重ね煮の甘みと野菜のやわらかさが、ひじきやちくわとよく合い、しょうゆだけの味つけでも満足感のある一品になります。ごはんとの相性もよく、常備菜としても重宝しますよ。
重ね煮が生きるアレンジ例
重ね煮は、ひと鍋仕込んでおくだけで、いろいろな料理に展開できるのが魅力です。味つけがシンプルなので、ほかの素材や調味料と組み合わせてもなじみやすく、余った野菜も無駄なく使いきれます。

ここでは、朝・昼・夜の食卓に活用できるアイデアを確認します。
そのままで食べる
まず試してほしいのが、重ね煮をそのまま味わう食べ方です。 火を通しただけとは思えないほど、野菜の甘みと旨味が引き出されていて、塩ひとつまみとは思えないやさしい味わいに驚くかもしれません。食材の香りも生きており、冷めてもおいしく食べられます。
ごはんに添えて副菜にしてもよし、パンとあわせてサンドイッチのように楽しんでもよし。特に胃腸の調子が優れないときや、調味料を控えたい場面にもぴったりです。
朝・昼・夜で大活躍|スープ、炊き込み、炒め物に
朝は、重ね煮をみそ汁やスープに加えるだけで、温かくて栄養が摂れる一杯になります。
昼には、ごはんと一緒に炊いて炊き込みごはん風に。塩味がなじんでいるので、出汁がなくても仕上がりますよ。
夜は、ハンバーグや炒め物に活用すれば、下ごしらえの手間がぐんと減り、時短にもつながります。
重ね煮が冷蔵庫にあるだけで、メニューに悩まず、調理時間そのものを減らすことができますね。
ひと鍋で広がる、重ね煮のやさしいごはん
重ね煮は、野菜を切って重ねるだけで、素材の旨味をしっかり引き出せる調理法です。ひと鍋仕込んでおけば、忙しい日々のごはん作りがぐっと楽になります。
今回は、重ね煮からカレーとひじきの炒め物へ展開するレシピをご紹介しました。どちらも、下ごしらえ不要で仕上がるとは思えないほど、深みのある味わいに仕上がります。 もちろん、そのままでも満足できるやさしいおかずになりますし、朝・昼・夜のさまざまな献立に応用できるのも魅力です。
まずは身近な野菜から、気負わずにひと鍋作ってみてください。きっと、日々の食卓が少しずつ整っていくのを感じられるはずです。
こちらの記事もおすすめ
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)