7月からフランスで禁煙令! 世界で年間800万人の死因=タバコから子どもを守る 【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、フランスの新たな禁煙令について学びます。

7月1日からフランスでは新たな禁煙令が開始

フランス政府は2025年7月1日から、ビーチ、公園、バス停、学校の外、スポーツ会場など、子どもが出入りする可能性のある屋外の公共の場所での喫煙を全面的に禁止します。この新たな禁煙令は、違反者に最大135ユーロの罰金を科す厳しい措置です。

カフェのテラスでの喫煙や石畳の道での歩きたばこが文化の一部とも言えるフランスで、なぜこのような規制が導入されたのでしょうか。

子どもの健康を守るため

今回の禁煙令の主な目的は、子どもたちの健康を守ることです。フランスの保健相であるカトリーヌ・ヴォ―トラン氏は「子どもがいる場所から、たばこをなくさなければならない」と強調しています。

フランスでは、喫煙は個人の自由として尊重されてきた歴史がありますが、ヴォ―トラン氏は「子どもたちがきれいな空気を吸う権利」を強調し、喫煙の自由よりもこの権利が優先されると述べています。

特に、子どもたちは自分の意志でたばこの煙を避けることが難しいため、こうした環境を整えることが社会全体の責任とされています。

受動喫煙のリスクを減らす政策が徐々に進んできた

フランスでは、近年、公共の場での喫煙規制が段階的に強化されてきました。2007年には、職場やレストラン、バーなどの屋内公共施設での喫煙が禁止され、2016年には車内での喫煙(特に子どもが同乗している場合)も禁止されました。

これらの規制は、受動喫煙のリスクを減らし、公衆衛生を向上させるためのもので、今回の屋外での禁煙令は、この一連の流れをさらに進めたものです。 

たばこは世界中で毎年800万人の死因に

世界保健機関(WHO)によると、たばこは世界中で毎年800万人以上の死因となっており、受動喫煙もその一因です。

たばこの煙には、ニコチンやタール、一酸化炭素など、発がん性物質を含む有害な化学物質が含まれています。これらの物質は、喫煙者だけでなく、近くにいる人々、特に発育途中の子どもたちに深刻な健康リスクをもたらします。

受動喫煙による影響は、喘息や呼吸器疾患、アレルギー、さらには長期的な健康問題を引き起こす可能性があり、子どもたちが頻繁に訪れる場所での喫煙を禁止することで、彼らの健康を優先しようというのが政府の狙いです。またこの規制は、子どもだけでなく大人も含めたすべての人がより清潔で健康的な環境で過ごせることを目指しています。

喫煙文化が根強いフランスも、子どもたちが安心して過ごせる国に

フランスの新たな禁煙令は、子どもたちの健康と権利を最優先に考えた政策です。たばこの煙から子どもを守り、きれいな空気を確保することは、未来の世代を育むための重要な一歩。喫煙文化が根強いフランスでのこの決断は、公衆衛生を重視する世界的な流れとも一致しています。

7月1日から施行されるこの規制により、フランスのビーチや公園は、子どもたちが安心して過ごせる場所へと変わっていくでしょう。

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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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