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後片付けが少なく簡単に作れる! SNSに投稿したパンと米粉のおやつが大ブレイク
――Instagramに投稿されていた「抹茶マグケーキ」をさっそく作ってみたのですが、簡単にできて美味しかったです!
リケコさん:ありがとうございます! マグケーキは電子レンジで1分半ほどでできるので本当に簡単です。そして美味しく、食べ切れるサイズなのもポイントです。砂糖や油の分量は控えめにしているので子どもにも安心ですし、大人も罪悪感なく食べられると思います。
特に「抹茶マグケーキ」はSNSでも再生回数がダントツで多いレシピです。抹茶は海外ではスーパーフードといわれるくらい栄養たっぷりなので、ぜひ気軽に作っていただきたいです。
――パンやお菓子もすぐに作れそうなものばかりですね!
リケコさん:作るときに「洗い物が少ない」というのが私のレシピの特徴です。ボウルの代わりにポリ袋を使ったり、容器ひとつで混ぜて焼くだけだったりするので、後片付けを気にせず取り掛かれますし、パンは「こねない」レシピなので手が汚れません。

夜、生地を仕込んでおけば、あとは冷蔵庫で発酵させて(オーバーナイト発酵)、朝起きたら焼き上げるだけ。パン作りって、こね具合や発酵できているかどうかの見極めが難しいのですが、この方法だとそういった判断が必要ないので、たくさんの方に「初めてでも成功しました!」と言っていただけました。
――焼きたてのパンを朝食で食べられるなんて夢のようですね!
リケコさん:「朝ごはんはちゃんと食べたほうがいい」とわかってはいても、忙しい朝に栄養バランスのとれた食事を考えるのって大変ですよね。だからこそ、キャロットケーキやかぼちゃスコーンのようにおやつのようでもあり、しっかり栄養もとれるレシピも考えました。

好きなもので1日が始まると、自然と元気が出ると思うんです。私も以前は、朝食は白ごはんと納豆だけということもしょっちゅうで、ストレス解消に市販のお菓子を暴食することもありました。でも、自分でパンやお菓子を作るようになって、自分が食べたいものを食べようという思考が増えて、楽しみが広がりましたね。
「ママも楽しんで」の言葉にモヤモヤした育休時代、パン作りに出合って一変! 自分にフォーカスできるように
――そもそもリケコさんはなぜパン作りを始めたのですか?
リケコさん:育休中、息子のためにシンプルな材料で作ったパンやおやつを食べさせたいと思ったことがきっかけでした。お菓子作りは子どもの頃から好きでした。でもパンは初めてだったので、いろいろなレシピを参考にしながら独学で作り始めました。

また、子どものおやつは栄養を補うための「補食」といわれることを知り、野菜や抹茶などの栄養価の高いもの、おやつは小麦粉ではなく米粉を使うというスタイルになりました。子どもを寝かしつけた後の1人時間におやつを作ったり、パン生地を仕込んだりするのが楽しくて、どんどんハマっていきましたね。
――パン作りで生活も変化していったのですね。
リケコさん:それまでは子どもを寝かしつけた後、だらだらとYouTubeを見て、寝不足のまま1日が始まり、「本当にこの時間の使い方でいいのかな?」と感じることもよくありました。子育てに対しても「おむつを替えて、離乳食を食べさせて、公園に行って疲れさせて…」というように、1日のタスクにばかり意識が向いていたような気がします。
ですが、パン作りという「自分の楽しみ」が生活に加わったことで、朝、「パンは発酵しているかしら?」とワクワクした気持ちで布団を出たり、焼きたてのパンで心が満たされ「今日も楽しむぞ〜!」と1日をスタートできるようになったりしたんです。自分自身が少しずつ活動的になり、子ども中心の生活から「自分」にもフォーカスできるようになっていった気がします。

フォロワーさんからも「会社が辛かったけど、焼きたてパンを食べられると思ったら、朝起きられるようになりました」とか「パンを焼いている20分の間に運動するようになりました」というようなメッセージをいただくことがあり、それはもちろんご自身の力ではあるのですが、生活を変えるひとつのきっかけになれたということがすごくうれしいです。
育休復帰後に転職活動。全落ちしても、ノートに気持ちを書き出すことで前向きになれた

――リケコさんは育休1年目について「子育てに翻弄されて、自分どころではなかった」とSNSに書かれていましたが、当時を振り返ってみてどのようなことが特に大変でしたか?
リケコさん:日々の子どものお世話はもちろんなのですが、特に知育や食育のような「+α」の部分が大変でした。育児に正解はなくても、「やったほうがよいこと」の情報はネット上にあふれていて、それを見るたびに「私ももっと頑張らないと」と感じていました。そうやって、自分のキャパを超えて育児を優先することが、心の余裕のなさに繋がっていたと感じています。
――「ママも楽しんで」という言葉にモヤっとしたとも書かれていましたね。すごく共感しました。
リケコさん:子どもが赤ちゃんの頃は、まさに「子どもを生かすことに必死」な状態だったので、「ママも楽しんで」と言われても、「正直それどころではない」と思いました。楽しめていない自分にモヤモヤしていたのだと思います。

ただ、仕事に復帰したり、子どもが保育園に行ったりと、少しずつ育児の比重が下がってきたとき、この「ママも楽しんで」の言葉が「自分はどうしたいの?」と真剣に考えるきっかけを与えてくれたようにも感じます。ですから、今はこの言葉をすごく前向きに捉えられるようになりましたね。
――リケコさんはもともと会社員だったのですよね?
リケコさん:はい。もともとは技術職の会社員でした。でも、育休復帰後は怒涛の生活で、これを何年も続けるのは私には無理だと実感しました。それで、まずは副業をしながら、在宅で働ける企業に転職したいと思ったのですが、転職活動では全落ちしまして…。結果をいうと、最終的にそのときは転職をしませんでした。その後、ありがたいことにフリーランスとしてSNSを仕事にさせていただいています。
――子育てしながらの転職活動、そして結果が出ない中でも前向きにチャレンジされたのですね。迷いや不安はなかったですか?
リケコさん:ものすごく悩みましたし、不安はありましたが、迷いはなかったですね。私、育休が終わる少し前から手書きでノートを書いていて、これも自分の支えになっていることのひとつなんです。はじめは、副業でやっていたYouTubeの企画を書いたりと、備忘録のような使い方をしていたのですが、次第に自分の将来像について考えたり、日々の行動と理想とのズレがないかを確認するようになったんです。

このノートを書くことで、ずっと抱えていた「人生の停滞感」が確実に軽くなったと感じています。頭の中だけで考えていると、「何も進んでいない」と感じてしまいがちですが、目に見える形で「この目標はここまで進んだ」とわかると、モヤモヤに支配される時間が減りました。
――確かに、ノートに書き出すことで客観的に見えてくることはありそうです。
リケコさん:自分の心の中も書き出しています。気分が沈んでいる時期には、ノートと対話するように、「こんなことで悲しくなった、どうしてだろう」と気持ちを掘り下げることもあります。それに、夫との関係についても気づきがありましたね。ノートに書き出すことで「私、相手のせいにしてたな」と自分の言動をじっくり見直す時間が持てて、視点が変わり、夫との関係も改善したと感じます。
――ノートはいつ書いているのですか?
リケコさん:毎日子どもを送り出して、仕事を始める前に書いていますね。ルールを設けてしまうと私の性格的にはしんどくなるので、書く分量は決めていません。パパッと3行くらい書くときもあれば、1時間かけて書くときもあります。気分が乗らなくても日付だけは書くようにしています(笑)。ノートを書き始めて4年くらいですが、これはずっと続いている習慣ですね。
子育て中だからこそ、自分のやりたいことの「種」をストックしておきたい
―子育て中、「自分の好きなことや、やりたいことが見つからない」という人も多いと思います。リケコさんがパン作りに出合ったように、やってみたいことを実現するにはどうしたらよいのでしょうか?
リケコさん:先ほども言いましたが、私も育休中、子どもが寝た後に時間ができてもYouTubeや映画を見るくらいしかやりたいことがなくて…。でも息子を見ると、いつもいろいろなことに興味を持ってるんですよね。だから「私もこんなふうだったのかなぁ?」と、息子を見ながら自分の幼少期を振り返ったり、自己分析のようなことをよくやったりしていました。

長い間、やりたいことに目を背けて生活してきたからこそ、「これはなんとかしなくては」と自分と真剣に向き合うようになれたのだと思います。
―子育てをしている中でも、やりたいことを続けるコツはありますか?
リケコさん:やりたいことの「種」をストックしていくことでしょうか。例えばSNSでマネしたいと思った投稿があれば保存しておくとか、そんな小さなことでもよいと思います。1ヶ月後には興味がなくなっていることもよくあります。それでも、「やってみる→飽きる→また始める」を繰り返す中で、ハマるものが見つかってくるんじゃないかと思っています。その時の自分がビビッと来たものを選び取る感覚で、それを繰り返しやっていくというのが私には自然なやり方でした。
―なかなか一歩を踏み出すのは勇気がいりますが、まずはやってみるということですね。
リケコさん:そうですね。私も以前はすごく慎重でしたが、今は頭で考えるより、やってみたいと思ったら、「失敗してもいい」という精神で、まず経験してみるということはすごく意識しています。以前に今と違う形でYouTubeをやっていたのですが、そのときもまず50本出すということを決めて、とにかくやりながら考えていましたね。
―リケコさんが、この先やってみたいことはありますか?

リケコさん:今、2冊目となる本を作っているのですが、私の一方的な発信ではなく、さまざまな悩みやモヤモヤを抱えている女性に寄り添えるようなものにしたいなと思っています。それをきちんと形にするのがひとつの目標です。もうひとつは、日々私が発信しているなかで、「自分も好きなことを仕事にしたい」という方からメッセージをいただくことがあるので、そのような方たちの挑戦の一歩をお手伝いできるような仕事をしていきたいとも考えています。
―ありがとうございました。やりたいことが見つからないときこそ、自分と向き合うチャンスだと捉えるのは新たな視点でした。自分の幼少期を思い出してみると、好きだったこと、やってみたかったことを再発見できるかもしれません。リケコさんのパンやおやつもぜひみなさん作ってみてくださいね!
手間なし、栄養たっぷり、平日のマグケーキと休日の強力粉パンおやつは補食。栄養がとれるなら、罪悪感なく食べることができて、健康的。そんな気づきから始まったリケコさんのパンとおやつ作り。SNSの動画再生回数3,000万回超え、話題のレンチン1分半でできるマグケーキを始め、体にやさしい、気持ちの負担にならないレシピ集。
お話しをうかがったのは
主婦兼webマーケター。子育てをきっかけに「からだにやさしい」健康視点でのおやつ、食事作りを始める。2023年7月よりInstagramでのレシピ投稿を開始。パン作りの魅力が伝わるレシピ動画が反響を呼んでたちまち大人気に。大学院での材料研究の経験を活かし、理系らしくベストな配合で、再現性の高いレシピを目指している。2024年に『身体にいいものだけ! すぐ作れる朝ごパン、米粉おやつ』(KADOKAWA)を出版。
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取材・文/平丸真梨子
