課題図書にこだわらず、まずはワクワクできる本を選ぼう
――読書感想文を書くためには、どのような本を選ぶのがよいのでしょうか。
安田さん:「読書感想文を書くなら課題図書」と考えている方も少なくないと思います。でも、課題図書は読書が好きな子にとってはおすすめではありますが、読書自体が苦手な子にとっては、課題図書にこだわらなくてもいいかもしれません。
それよりも、乗り物好きな子なら乗り物の本、生き物が好きなら生き物について書かれている本など、自分の好きなものの本を選ぶのがおすすめです。本を手に取った段階のワクワクした気持ちをどれだけ高められるかで、読書感想文がスムーズに書けるかどうかが決まるといってもよいかもしれません。
――本選びがまずは重要ということですね。
安田さん:そうですね。たとえばインターネットで「乗り物 児童書」「宇宙 児童書」などと検索してみるとたくさん出てくるので、楽しく読める本と出合えると思います。子どもたちを見ていても、好きな本だと感想文もどんどん鉛筆が進むんですよね。「文章をスラスラ書けた!」という経験は、これから先、文章に対する苦手意識をなくすことにつながるので、読みやすい本を親子で一緒に探してみてください。

書く前の準備が重要! 親子のインタビューで子どもの気持ちを引き出そう
――そもそも読書感想文の書き方がわからないという子どもも多いと思うのですが、親はどのようにサポートして進めるのがよいのでしょうか?
安田さん:いきなり原稿用紙に向かっても、何を書いたらよいのか迷ってしまいますよね。おすすめなのは、保護者が子どもに、その本についてインタビューをして、子どもの言葉を引き出していくという方法です。

低学年は「3つのステップ」でまとめる
――なるほど! 作文を書くための素材を集めるということですね。
安田さん:「どうしてこの本を選んだの?」「この本を読んでどう思った?」「印象に残ったセリフは?」のように、どんどん質問していき、子どもが答えたことを要約せずにそのままメモしていきます。録音してもOKです。特に以下のポイントは読書感想文の中でも重要な部分になるので、ぜひこの3つのステップでインタビューしてみてください。
インタビュー例
保護者:「この本を読んでどんな気持ちになった?」
子ども:「悲しかった」
保護者:「なんでそう思ったの?」
子ども:「主人公がいつもひとりぼっちだったから」
保護者:「悲しい気持ちになったのは、どの場面だった?」
子ども:「遠足の日に、一緒にお弁当を食べる友だちがいなくて、一人で食べてたところ」
安田さん:こんなふうに聞いていくだけです。この3つの質問でも、文章としてまとめていくと、原稿用紙の半分くらいは書けるのではないでしょうか。
――特に小学校低学年くらいだと、感想が「面白かった」「楽しかった」のように単調になりがちなのですが、どのように書くのがよいのでしょうか?
安田さん:それでもよいと思います。最初の一文で、「僕はこの本読んでとてもワクワクしました。」や「私はこの本を読んで嫌な気持ちになりました。」のように書いて、その後に、先ほどの質問例の2番目で聞いたように「なぜそう思ったのか」を書きます。この、「理由の部分をしっかり書く」ことの方が大事なので、細かな表現テクニックなどにとらわれなくても大丈夫です。
高学年は「3つのステップ+自分の経験」でボリュームアップを
――高学年になると、指定の文字数も多くなってきます。文章をふくらませるコツはありますか?
安田さん:高学年くらいになると、自分の経験を思い出せるようになるので、先ほど例に挙げた「悲しかった」、「どうして悲しかったのか」、「この場面が悲しかった」という構成に加えて、その場面に対して自分の似た経験や、その場面を読んだときに感じた気持ちに近いエピソードなどを加えていきます。その経験の部分をさらっとではなく、詳しく思い出して書くと、かなり読みごたえのある感想文になります。
「文章が書けた!」という自信で作文への苦手意識を取り除こう!
――インタビューしながら、それをメモしていくという方法なら、親のサポートとしてもそこまで負担が大きくないですね!
安田さん:そうですね。作文って、手を動かしているとエンジンがかかってくるんです。一度書き始めると、気持ちがのってどんどん自分で進めていけるので、まずは最初の一文を書くところまで持っていけるといいですね。
その点、インタビューで書く内容が決まっていれば、それを書き写すだけなのですぐに書けます。あとは、子どもが一文でも書けたら「はじめの文章が書けたね! すごいじゃん!」「この文章いいね!」などと声をかけることも大切です。
私も、教室で子どもたちが作文を書いているときはうろうろしながら、原稿用紙をのぞいては「いいね!」と声をかけています。先ほどもお伝えしましたが、自分が「文章が書ける」と思うと、苦手意識がなくなり、どんどん自分で書けるようになりますよ。

――なるほど! 親が手直ししたりするのはNGですか?
安田さん:夏休みの宿題の一つとして、「書いたものを提出する」ということがゴールであるならば、そこまでしなくてもよいかと思います。子どもによっては保護者に添削されるだけで嫌になってしまうケースもあります。
でも、もし子どもにやる気があって、保護者もやらせてみたいと思うのであれば、「ママ(パパ)だったら、こんな感じで書くかな?」というふうに添削して、それを参考に子どもが考えてもう一度書いていくという作業をしてみてください。
――最後にこれから読書感想文に取り組むHugKum読者にメッセージをお願いします。
安田さん:今年の夏は、ぜひメモ帳片手に、お子さんへのインタビューに取り組んでみてください。「書く」というのは普段慣れていない人にとってはハードルが高いと思いますが、「しゃべるワーク」と考えれば、気持ちも楽になると思います。「文章が書けた!」という小さな成功体験は、積み重ねていくと、長い目で見るとすごくお子さんの「書ける!」という自信につながっていくと思います。
――ありがとうございました。安田さんの書籍「書くことが好きになる! おうちで作文教室」には、読書感想文だけでなく、楽しく作文に取り組めるワークがたくさん掲載されています。ぜひ親子で読んでみてください!
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・原稿用紙を前にすると、何を書けばいいかわからず手が止まってしまう。そんな作文や文章を書くことに苦手意識のあるお子様にこそ取り組んでいただきたい本書。少しずつステップアップしながら作文を作っていきます。ぜひ、おうちで楽しく作文の学習に取り組んでみてください。
お話を聞いたのは…?
幼い頃から書くことが大好きで、書く楽しさを子どもたちにも知ってほしい思いから、年長・小学生・中学生向けの作文教室やワークショップを、長野県佐久市、埼玉県川越市で開催。通信教育講座・オンラインレッスンも行っている。ジャーさんは小学生の頃からのニックネーム。高校野球報道メディア「高校野球ドットコム」初代編集長。著書に『書くことが好きになる! おうちで作文教室』(明日香出版社)、『スポーツ感動物語 アスリートの原点4 遅咲きのヒーロー』(学研プラス)、『野球ノートに書いた甲子園』(ベストセラーズ)などがある。
取材・文/平丸真梨子
