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聞いて覚えられない子は「見て覚える」学習法で
九九といえば、暗唱して覚えるのが一般的です。
1の段から9の段まで「インイチがイチ」「インニがニ」…「クハシチジュウニ」「ククハチジュウイチ」と、私たちが当たり前のようにして覚えた暗唱は、唱えて「聞いて覚える」学習です。 でも、聞いて覚えるのが苦手な子もいます。うちの子、暗唱を繰り返しても九九が覚えられないという場合、「聞いて覚える」学習法が合っていないのかもしれません。
聞いて覚えるのは、「聴覚ワーキングメモリ(一時的に記憶し保存して操作)」が関わっていて、繰り返し唱えることで長期記憶へと定着させるそうです。「聴覚ワーキングメモリ」がうまく働かないと長期記憶へたどり着かず、九九を覚えるのが難しくなります。
「聴覚ワーキングメモリ」に対して、目で見て覚えるのは「視覚ワーキングメモリ」の働き。繰り返しの暗唱でも覚えられない場合、見て覚える「視覚ワーキングメモリ」に働きかける方法をとってみてはいかがでしょうか。
九九表の半分を見て覚えればいい!
算数障害の研究で知られる熊谷恵子先生は、聞いて覚えられない子には「見て覚える」学習法を提唱しています。「見て覚える」とは九九表の場所で覚える方法です。
九九表の場所といっても1の段から9の段まで全部覚える必要はありません。半分だけ覚えればいいのです。2×3と3×2の答えは同じですから、どちらかを覚えていればいいわけです。
そこで、熊谷先生が提唱しているのが、こちら。色のついた部分の場所と位置だけ覚えれば1の段から9の段まですべての答えを覚えることができます。

詳しくは、『算数障害がわかる本 解けない理由と支援のしかた』(熊谷恵子著 講談社)をご一読ください。本書は、算数障害をわかりやすく解説しています。算数が極端に苦手という子におすすめです。
「覚えられなければ、九九表を見て、その都度確認すればいいんだよ」
耳で聞いても、九九表を見ても覚えられないという子がいます。暗記するのが難しい子です。私は専門家ではないのであまり詳しくは説明できませんが、そもそも短期記憶(一時的に覚えたことを保存)が弱いと、九九が覚えられないといわれています。
特別支援教育の技術を教えている先生から「覚えられなければ、九九表を見て、その都度確認すればいいんだよ。何度も見ているうちに覚えるよ」と言われて目からウロコでした。
暗記のハードルが高くて次に進めないのなら、九九表を見てもよいことにすると、救われる子は少なくないはずです。どうしても九九が覚えられないようなら、先生に相談して「合理的配慮」を申し出てもいいと思います。
「暗記より安心が大事」と考えて、tobiracoでは学習下じき「かけざんの九九をまなぶ」を扱っています。下じきなら手元でいつでも確認できて安心です。

難関中学を目指す子が九九でつまずいていた
私はtobiracoを運営する前は、教育雑誌の編集者として学校や塾の先生たちを取材してきました。
九九で思い出すのは、ある進学塾の先生の話です。算数に特化したその塾には、いわゆる御三家の難関中学を目指す子どもたちが通っています。成績優秀な子の集まりですが、そのなかでも成績がずばぬけてよいのに、どうしても100点を取れない子がいました。
先生が不思議に思って、その子の過去の答案1年分を検証したところ、7×4の計算が必要な問題だけ間違っていたことが判明。試しに、その子に7×4の答えを聞いてみると「21」と答えたそうです。先生の「発見」がなければ、その子はずっと7×4は21と思い込んでいたかもしれません。
7の段を唱えてみてください。とても言いづらいと思いませんか。言いづらいということは、耳から覚えづらいということです。塾の先生の話を聞いて、暗唱だけに頼っていると意外な落とし穴があることを知りました。
九九は暗唱が目的ではなく、覚えるための手段のひとつにすぎません。算数が得意な子でも、暗唱による覚え方でつまずきます。暗唱だけに頼らずに、九九表を見て確かめることが当たり前になってほしいと思います。
「九九の助」で、学校のペースではなく、その子のペースで学習を

どの学習にもいえることですが、学習はその子の理解のペースで進めることが理想です。でもほとんどの学校は35人の子どもたちを同じ学習法で同じペースで教える一斉授業です。
2年生2学期の最大の壁である九九も一斉授業で、暗唱して覚えます。学校のペースで覚えられないと、のちのち桁の大きなかけ算やわり算でつまずくことになります。
九九を自分のペースで学びたいという子におすすめしたいのが、「九九の助 九九計算尺・九九表シールセット」(以下、九九の助)です。
九九の助は、「かけ算九九研究会」の先生たちが考案した教材です。具体物(いちご)から、抽象(丸)、そして数字へと九九表をステップを踏んで覚えることができます。
計算尺で量感をイメージできます
九九表に独自の計算尺をあてると、3×2や7×8を単なる数字の羅列ではなく量感としてイメージできるようになります。

九九の助には、ゲーム感覚の楽しさも
九九の段を1段覚えるごとに、ごほうびとして忍者のシールを貼って達成感を得られます。

B5判の九九表シールも
さらにうれしいことに、B5のノートに貼れる九九表シールもセットされています。九九を暗記できなくても、ノートに貼った九九表で確認できます。

学校の授業では早すぎるというときや理解が追いつかないというときに、ぜひ遊び感覚で学べる「九九の助 九九計算尺・九九表シールセット」をお試しください。
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学び方はひとつではありません。幼稚園時代に九九の暗唱を歌で覚えて、小学校でかけ算の意味を理解した子の話を聞いたことがあります。ひとつの学習法にこだわらず、その子にあった方法で学ぶことができればそれが一番ではないでしょうか。
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教えてくれたのは
元子育て雑誌編集者。道具で発達を支援するネットショップ「tobiraco」を運営。現場で効果のあった教材を特別支援学校の先生と商品化。商品化された教材は「トーキングゲーム」「すきなのどっち?」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」「きもち.つたえる・ボード」「トライゲーム やってみたいのはどっち?」など。また医師と放課後等デイサービスとで「療育アロマ」を共同開発。「安心にまさる環境なし」をモットーに教材から生活用具まで販売。編集した書籍に、『発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 小学館)、『自信を育てる発達障害の子のためのできる道具』(佐藤義竹・著 小学館)がある。
