エッセイスト・ハラユキさん家の中学受験は急きょ公立・私立併願受験に! 思いがけない選択だったけど、どちらの経験もできてよかった

イラストレーター、コミックエッセイストのハラユキさんは、息子さんが一昨年に中学受験を経験。元々私立校のみを受験するはずが、実際は公立私立併願受験に! その理由、そして中学受験にマイナスなイメージがあったハラユキさんですが、ポジティブな面を見出すことになった濃厚な受験期間についてお話を聞きました。

中学受験は行きたい学校が見つかったら受験しようかな、くらいの感じでスタート

――息子さんは現在、私立の中学校に通われていますが、区立の公立校に通う選択肢はなかったですか?

ハラユキさん うちは夫が中学受験経験者で、わりとしっかり勉強をしてきて学歴があるタイプ。私よりも教育熱心なところがあるので、受験はしたほうがいいのではないかという考えを持っていました。

一方で私は中学受験文化のない地方で育ち、小中高は塾にも行っていないですし、学歴社会とは無縁でした。そもそも地元の公立校がダメだとは思っていないですし、「小さいうちから塾に行くなんてありえない」という考えでした。ただ、住んでいるエリアの小学生が高い割合で中学受験をするので、私が知らないからとはねつけるのも違うのかなと思っていて。

そんななかで大きな決め手はうちの息子が、通っていた公立小学校になじめなかったのか、学校に行きたくないとしぶしぶ通っている状況だったことです。以前の住まいであるバルセロナで通っていたブリティッシュスクールが自由な校風だったので、そことのギャップがあったのかもしれません。

どうしたものかなぁと思いながらも、とりあえず受験のことを調べつつ、ゆるゆるっと塾へ。そのときも「絶対受験をする!」というより、準備をしておいて、行きたい学校が見つかったら受験しようかな、くらいの感じでスタートしました。

写真はイメージです

中学受験は頭がいい子だけのものじゃない! 学校によって個性があることに気が付いた

――学校見学には行っていましたか?

ハラユキさん 息子が小学4、5年生くらいのときから母子で行っていました。そのくらいの年齢だと本人は受験するかどうかもわからないので気軽に行けましたし、6年生になると模試などで忙しく、早めに見学に行っていたのはよかったと思います。

私個人は中受には乗り気ではなかったですが、取材をすることが多い仕事柄、学校見学は楽しかったです。

息子が「自由で制服のない学校に行きたい」と希望していたので、実際に行くかどうかは別として該当する学校中心に行ってました。星野源さんが行っていた自由の森学園はすごくいい学校で、授業では先生の教え方が上手。遠すぎて通えなかったんですが、面白かったです。校内でヤギを飼っているとのことで武蔵中学校に行ったり、自由学園にも行ったりしました。

――見学の際、なにか感じたことはありますか?

ハラユキさん 日本の学校には画一的なイメージがありましたが、学校によってそれぞれ違って個性があることに気が付きました。いい学校がこんなにあるんだと実感しましたね。

あとは受験って頭のいい子だけがするものだと思っていましたが、個性があったり、特性があったりする子は、それにあった学校のほうが行きやすいだろうから、これだけ偏差値も校風の幅も広い学校のなかから選べるのはすごいことだなと。

これらのことを知って、あまりいいイメージがなかった中学受験に対して、ネガティブな要素が減るという変化がありました。その後、息子が行きたい学校が見つかったこともあり、中学受験をすることになりました。

――受験期間に苦労したことはどんなことですか?

ハラユキさん 総合的に親の時間をめちゃくちゃとられることです。そもそも私の場合、中学受験のシステムを知らなかったので、どういう仕組みなのかを理解するのにすごく時間を取られました。今でこそペラペラ話せますが、最初は公立も私立もなにもわからない、塾のことだって知らないわけで。

見学も楽しかったけど、コロナ禍だったので見学の予約も争奪戦で、結局最後まで予約が取れなかったところもあります。模試も多くてスケジュール管理も必要だし、親の事務能力が試されました。

思いがけず、急きょ公立私立併願受験に! どちらの経験もできてよかった

――志望校は私立だけでしたか?

ハラユキさん うちは国立も受けています。息子はもともと作文が苦手なので、適性検査に作文がある国立などの公立校は無理だろうと志望校には入れていなかったんです。

ですが、6年生になったころ。週に一回うちで息子に英語を教えてくれた友人カップルがいて、その彼から「自分が行っていた中高一貫校がすごくよかった」と聞き、試しに見学に行ったらすごくいい学校で。息子も「急に行きたい学校の一位に躍り出た! 受検したい!」と言い出し、受検することに。

ただその学校は、試験科目にわりと珍しい科目がありました。受検まで半年しか時間がないなか、その試験科目も友人カップルに教えてもらうことになり、私は週に1回みんなの分のご飯を作り、家の掃除。大変でしたが、そんな状況になりました。

東洋経済オンライン『東京の「中学受験」体験してわかった”摩訶不思議”』より

――結果的に、国立も私立もどちらも受けることにしたんですね。

ハラユキさん そうです。受験内容が違うので、勉強する内容も異なり、時間もないのでめちゃくちゃ大変でした。国立を受けると決めてからは、それまでの塾に加えて、国立対策できる塾で講習も受けました。

その後受験を迎え、国立の方は落ちてしまったんですが、私立では一番行きたかったところに合格。

結果としてはどちらも体験したことで、どちらの仕組みもわかりました。公立の試験は大変だけど考える力が求められたりと面白いんですよね。うちの場合、特殊な科目を勉強・練習ができたので、その経験ができただけでもよかったな、悔いはないなと思っています。

息子がやりたくないことを無理やりやらせない「心が壊れたらいつでも撤退しよう」

――ご主人とは育った環境が違うとのことでしたが、学校選びの方針は夫婦で食い違うことはなかったですか?

ハラユキさん ありました。息子はふわふわとした自由を求めるタイプなので、夫は今どき学歴が一番ではないけれど、ある程度しっかりした学校に通ったほうが生きていくベースを作れるのではないかというタイプで。

私としては小学校がつまらなそうなのが見ていて辛かったので、息子に合っていて楽しく通え、よさを伸ばしてくれる学校がいいなと思っていました。

夫は自由すぎる学校だとふわふわした子がよりふわふわするのではないかと心配していたので、先に息子と私で見に行って気に入った学校に、夫も連れて3人で見に行っていましたね。方針が合わないところを受験するのは嫌だなと思っていました。

――嫌だなという思いはハラユキさん、ご主人ともにですか?

ハラユキさん ふたりともですね。

夫は夫で私には受験は無理そうだと思っていたようです。実際に私も中学受験が本格的に始まる前、仕事やPTAなどいろいろなストレスも重なって鬱になってしまいました。

でも鬱が治って、なんとなく嫌だなと思っていた受験にもさっき話したような面や、意外にも息子が塾を嫌がらず、習ったことを家で話してくれるなどポジティブな面を見出して前向きに取り組めるようになりました。

息子がやりたくないことを無理やりやらせるのだけは絶対にしたくなくて、「息子の心が壊れたらいつでも撤退しよう」と思っていたので、息子が受験したい! と思うようになったことも大きかったです。かと言って、勉強を一生懸命やるかと言われればそうでもないんですけどね(笑)。

――そこは子どもですからね。

ハラユキさん そうですね。でも息子のあまりのふにゃふにゃっぷりに、夫が息子に指摘して小競り合いというか、よくもめていました。私としてはどっちの気持ちもわかるなぁと思いつつ、息子にとって受験がマイナスになるようならすぐに撤退しようと。

受験生の親はほかに気を逸らせるものがあるくらいがちょうどいい

――この先の世界を考えるとAIも席巻し、勉強だけが大切じゃなくなるかもしれない、不透明な部分が多い分、親も迷いますよね。

ハラユキさん そうだと思います。よく中学受験って親もハマっていっちゃうから「受からないと人生がダメになる」「正解はこれだ!」と押し付ける場合もありますが、押し付けるのはおかしいし決められるわけないと思うんですよね。

悩みながら進むくらいが正常でまっとうな気がして。迷いのない親って「〇〇すべき!」とかって怖いじゃないですか。気持ちが右往左往して大変ですが、ほかに気を逸らせるものがあるくらいがちょうどいいじゃないですかね。

――気を逸らすまい! としている方がほとんどな気がします。

ハラユキさん 中学受験ってすごく難しいことをやっていますよね。なんてすごいことを! って思うんですけど、やっているうちに麻痺してくるんです。

私の場合、親子で通っている高円寺のシェアスペースで息子が勉強をしていたら、そこにいた方が息子のテキストを見て「こんな難しいことをやってるの? 偉いね」って褒められたりびっくりされたりして。そこで「そうだった! この子は頑張ってるんだ!」って改めて思ったことがありました。

麻痺しないようにと思っているタイプだったけど、麻痺してるんだって気づけて。第三者の目線はありがたいなと思いましたね。

東洋経済オンライン『中学受験「ギスギスしない親子」が通う意外な場所』より

――それは忘れずにいたいですね。

ハラユキさん そう思います。子どもは頑張ってますよ。中学受験はいいところもあるけれど、システム的におかしいことや歪みみたいなのもあって、そこを親が認識してあげないといけないなって。無理やり学力が高いところに行って……とかね、親や学校、塾のさじ加減で子どもを壊しちゃうと思って。

中学受験をして本当によかったかどうかって、直後ではわからないかもしれない

――大変なこともあったかと思いますが、中学受験したことはよかったですか?

ハラユキさん そうですね。息子に基礎学力が身につきましたし、校風が合って友だちがすごくできて本当に楽しそうなんですよね。通学には1時間以上かかるのに、相性がいいとこんなに楽しく行くんだと。自由なので、夫は勉強に不安があるようですけど(笑)。

でも中学受験をして本当によかったかどうかって直後ではわからないんじゃないかと思って。5、6年後とか……もう少しあとで振り返ったときに「もっと厳しい学校に行っていたら変わっていたかな」とかもあるかもしれない。

だから現段階ではよかったけど、様子見ですかね。自由教育ならではの自分で考えさせる教育は、すぐに結果が出るわけじゃなく、成功も失敗もあるので、見守るしかないかなと。

息子自身は受験してよかったと言っています。私個人的にはPTAで小学校時代に苦労したので、PTAがないことも本当によかったです。

――最後に、受験期間を振り返って、心に残っていることはありますか?

ハラユキさん 息子はもともと好みにうるさいタイプでしたが、学校見学で子どもの好みがわかったのは印象的でした。大きな音が苦手だからか、「人数が多すぎる大きな学校は苦手」と言い、大きな学校、特に男子ばかりが大人数いる文化祭に行くと、着いて10分で「ここはもう嫌だ」ということもあって、行かなければわからない好みがわかりました。

学校行事に行くことがありますから、親も学校と相性がいいほうがいいのかなと思います。

――たくさんのお話、ありがとうございました。

ハラユキさんならではの冷静な視点や言葉がとても印象的

もともと、小さいうちから塾に通うことになるなどの中学受験にネガティブなイメージがあったハラユキさんだからこそ話せる、中学受験のポジティブな面や冷静な視点がとても印象的でした。

インタビューの最後に、「一度公立を見てしまった分、私立の学費の高さが気になって、息子がゴロゴロして「遅刻した」「休みたい」とか言われると、こんなにお金をかけてるのに「なに言ってるんじゃ!」という気持ちになってしまう自分はいますね(笑)。私立は学校が休みの日が多いので「もっとやってよー」って、これは本音です(笑)」と、心のうちも明かしてくれました。

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お話を伺ったのは

ハラユキ イラストレーター・コミックエッセイスト

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、『ほしいのは「つかれない家族」』(講談社)、『誰でもみんなうつになる』(KADOKAWA)、『ワンオペ育児モヤモヤ脱出ガイド』(講談社)など。オンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

プロフィール画像/山中散歩

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