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子育てがきっかけで、夫婦の価値観の違いが浮き彫りになることがあります。そして、子どもに障がいがある場合、その違いはより大きくなりやすいように感じます。
その理由の一つは、定型発達の子どもに比べて将来の姿をイメージしにくいことです。何が子どもにとってよい選択なのか判断しづらく、夫婦の意見が一致しにくくなります。また、発達がゆっくりであるため、親自身に焦りが生じやすく、ちょっとした意見の違いが思わぬ口論に発展することもあります。
その結果、自分の考えの方が正しいと頑なになったり、子どもに負荷をかけて成長を促すことが本当によいのか迷ったりすることがあります。
私たち夫婦も例外ではありませんでした。
「子どもにさまざまな経験をさせたい」私と「毎日を穏やかに暮らしてほしい」妻
息子が幼かった頃、私はできる限りさまざまな経験をさせることが子どものためになると考えていました。その中には、体力的にも認知的にもある程度の負荷をかけることが含まれていました。
一方で妻は、とにかく今を楽しく過ごしてほしいと考えていました。将来への期待を優先するのではなく、毎日を穏やかに楽しく暮らしてほしいという思いがあったのです。
こうして夫婦の意見は分かれ、一時期は口論になることも少なくありませんでした。

しかし、実際の子育てにおいて最も大きな影響を与えていたのは、意見の相違そのものではありませんでした。むしろ、意見の相違によって夫婦間の空気が悪くなることの方が問題だったように思います。
子育てとは関係のない場面でも会話が減り、家庭全体がどこか窮屈な雰囲気になります。そして、その影響は子どもたちにも及びました。
夫婦喧嘩が始まると、子どもたちは落ち着かなくなり、何かに怯えるような様子を見せていました。おそらく、家族が壊れてしまうのではないかという不安を感じていたのだと思います。
息子の「伸びしろ」に対する見立ての違い

では、私たちの意見の相違の根っこには何があったのでしょうか。
振り返ると、それは息子の「伸びしろ」に対する見立ての違いでした。
妻は息子の将来の可能性を比較的慎重に見ていました。そのため、努力によってつらい思いをするよりも、毎日を楽しく過ごすことが彼の人生にとって最良だと考えていたように思います。それは妻なりの愛情の表れだったのでしょう。
一方で私は、息子の感性や行動に成長の可能性を感じていました。歩みはゆっくりでも、できることは確実に増えているように見えたのです。
こうした見立ての違いは、子育てにおける夫婦の役割分担にも影響しました。
ときには一般的な家庭とは逆に、妻が主に仕事を担い、私が家事や子育てを中心に担うこともありました。夫婦の役割を固定せず、その時々の状況に応じて柔軟に変化させていったのです。
そうしているうちに、息子の実際の成長とともに、私たち夫婦の見立ての違いは少しずつ埋まっていきました。
私たちの場合、子育てに対する価値観の隔たりを埋めるには時間が必要でした。そして、その隔たりを埋めるうえで重要だったのは、息子の成長を夫婦で共有することだったように思います。
実際の成長をともに見つめることが、互いの見立てを近づける大きな要因になりました。
互いの意見を重ね合わせる日々が、夫婦関係をよりよいものに

子どもが成人して状態が安定すると、子育てへの意見の相違で仲違いすることはなくなります。しかし、それまでの過程で夫婦間に起こった感情のもつれは、そう簡単にはなかったことにはなりません。
子どものために話し合うことは大切ですが、難しい障がい児の子育てでは、夫婦の意見がまとまらないまま先に進めなければならないことがあります。
そのような状況では、無理に意見をまとめようとするよりも、子どもの成長について感じたことを互いに伝え合い、日々少しずつ意見を重ね合わせていくことが大切なのだと思います。
そして、そのような時間の積み重ねが、子どもが成人した後の夫婦の関係性をよりよいものにしていくのではないでしょうか。
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記事執筆
医療の分野で20年以上のキャリアを持つ作業療法士。広汎性発達遅滞がある子どもを成人まで育てた2児の父。著書『障がいのある子どもを育てながらどう生きる? 親の生き方を考えるための具体的な52の提案』(WAVE出版) はAmazon売れ筋ランキング 【学習障害】で1位 (2025.6.6)。
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