15歳未満のSNSを禁止にしたフランス、教育にデジタルを取り入れる日本…。3児とフランス移住した母が感じた“子育て観”の大きな違い【vol.12】

フランス在住ライターの綾部まとです。夫と3人の子どもたちと一緒に、パリ郊外で暮らしています。
フランスでは2026年1月から、15歳未満のSNS禁止が可決されました。この直後、私の子どもたちが通う小学校と幼稚園からは「子どものスマホやゲームの時間を制限するように」というお達しがきています。
小学校でタブレットを支給し、デジタル教育を積極的に進める日本とは、真逆をいく動きですよね。これには日本のいいところ、フランスの持つ裏の顔が見えてくるように思います。
今回は日本とフランス、それぞれの「子どもへのデバイス制限」の違いについて比べてみました。

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フランスでは小学校・幼稚園で「子どものデバイス利用」にルールが追加

ある冬の日、家に帰ってきた子どもたちから「ママ、これにサインして」と渡された手紙を見て、私は驚きました。

そこには「大至急、お子さんがスマートフォンやゲームの画面を見る時間をコントロールしてください」と書かれていたのです。

どうやら、クラスの様子を見ていると、低学年の子どもの間でも、あまりに過剰で危険なスクリーンの利用が目立つとのこと。これは子どもの健やかな成長に関わる、命と同じくらい大切な「健康上の問題」なのだ、と強い語気で訴えられています。

長女から渡された、校長先生からの手紙。長男・次女からも、それぞれ同じ内容のものが。

また、以下のような、年齢別に家庭が守るべきルールも設けられていました。

3歳未満:禁止
デバイスの利用は子どもの発達を害する恐れがあります。この時期の子どもには、対話や周囲からの関わり合いが必要です。親自身のデバイス利用も、子どもとの関係に悪影響を及ぼさないよう注意してください。

3歳〜6歳:非推奨であり、例外的な利用に留める
利用時は必ず大人が付き添い、教育的なコンテンツのみを見せてください。子どもだけでスマートフォンやタブレットを見せるのは厳禁です。

6歳〜9歳:制限し、管理下に置く
明確なルールを設けた上で、利用時は常に大人が同席してください。自分専用のデバイスを持たせることや、ひとりでインターネットにアクセスすることは禁止です。

9歳〜12歳:適度に、かつ管理下に置く
大人の積極的な監視のもとでやらせてください。ただし、SNSや生成AIの利用は完全に「禁止」です。子どもに専用の端末を買い与えることは避けてください。

背景にあるのは、2026年1月に可決された、15歳未満のSNS利用を原則として「完全禁止」にする法案です。

この動きは、フランスだけではありません。 2024年に世界に先駆けて「16歳未満禁止」を決めたオーストラリアを筆頭に、2026年に入ってからはスペイン、ブラジル、インドネシア、マレーシア、さらにはトルコやUAEでも可決・施行されています。

では、日本ではどうでしょうか。

日本では「GIGAスクール構想」で小学校でもタブレット

日本では、子どもに対するSNSやデバイスの利用を禁止する法律はありません(2026年6月現在)。むしろ国「GIGAスクール構想」のもと、小学校の段階からひとりずつタブレット端末が支給され、宿題も授業もデジタルで行うのがスタンダードになりつつあります。

もちろん、日本にも子どものネット利用に関する「青少年インターネット環境整備法」は存在します。ただ、携帯電話会社に対してフィルタリング機能の提供を義務付けたり、保護者が利用時間を適切に管理する「ペアレンタルコントロール」を推奨したりと、「安全に使いこなせる環境を整えましょう」というレベルです。

日本にいた頃、友だちの家にて。このあと女の子チームは動画、男の子チームはゲーム。

国や学校が家庭の領域まで踏みこんで、スクリーンタイムを制限するフランス。幼い頃からデジタルに慣れ親しみ、教育に活かしていこうとする日本。

この差はどこから生まれてくるのでしょうか。

「公園にSwitchを持って行けない」治安の差 

これはあくまで私の考えですが、ひとつは日本とフランスの「治安の差」だと思います。

日本にいた頃、当時小学2年生だった長男は、友だちの家や公園にSwitchやタブレットを持って行き、友だちとゲームをしていました。「公民館にWi-Fiがあるから」と、集合している子たちもいました。

でも、フランスで同じことをやろうとすると、そうはいかないのです。

そもそも、11歳以下の子どもだけで公園に行くことは、治安の面であまり推奨されていません。高学年になって、子どもだけで公園に行ったとしても、ゲームを持っていたらすぐに盗まれてしまいます。

フランスの公園。大人も子どももいる。

ちなみに、大人の付き添いなしで入れる公民館は、私の住んでるエリアでは聞いたことがありません。もしあったとしても、危ない人がいそうだから、行かせないと思います。

ゲームやタブレットを持って行き来ができない、治安の悪さ。これはデバイスがこの国で広がらない、ひとつの理由なんじゃないでしょうか。

「子どもにはスポーツ、自然、家族の時間が必要」教育観の差 

二つ目は、フランスならではの「子どもはこうあるべき」という、保守的な価値観です。

先日、とても教育熱心なフランス人のママ友と話していたとき、彼女がこんな不満を漏らしていました。

 「うちの子の日本人の友だちが、すごくゲームをやっているの。その影響を受けて、うちの子までゲームをやりたいって言い出して、本当に嫌だわ」

彼女だけではなく、フランス人と話していると「子どもはスポーツをしたり、自然に触れたり、家族や親戚と会ったりするべきだ」という、「子育ての正解」があるように思います。実際に、それらのどれかを子どもがやったと伝えると、とても喜ばれることが多いです(笑)。

できなかったときに悪いママになった気がするので、この教育観は、個人的にはあまり好きではありません。日本で楽しそうにゲームをする子どもたちを見ていたので、「それだけが正解じゃないよ」と私は思っています。

子どもと料理、美術館、工作も「子育ての正解」とされているけれど……。

「デジタルに頼らず、リアルな体験を尊ぶべきだ」という、伝統的で厳格な子育て観が、この差を生んでいる気がします。

その「正解」は誰にとって?

クラスでの発表のために調べ物をする長男と長女。

2026年1月、国を挙げて「15歳未満のSNS禁止」へと大きく舵を切ったフランス。日本とは真逆の動きを見せるその背景を掘り下げてみると、そこには両国の「治安」と「教育観」の決定的な差がありました。

どちらのやり方が正しい、間違っているということではありません。育てる環境も違えば、子どもの個性だってそれぞれです。理想の国なんてないし、世界共通の正解なんてどこにもない。

国や周りが決めたことを妄信するのではなく、目の前の子どもにとっての正解を選んでいければと思います。

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この記事を書いたのは

綾部まと ライター・作家

三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。

X:@yel_ranunclus
Instagram:@ayabemato

<文/綾部まと>

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