親が手を貸しすぎるのはNG…「自由研究テーマが見つからない子ども」に親ができることは? 非認知能力の専門家・井上顕滋先生が解説

夏休みも中盤から後半に入ると、多くの家庭で密かに高まる焦りがあります。それは「自由研究のテーマがまだ決まっていない」という問題です。周りのお友達がとっくに課題を終えたという話を聞けば、なおさら焦るでしょう。なんとか期限内に終わらせてあげたい、学校で恥ずかしい思いをさせたくない。そうやって先回りして手を貸そうとするのは、子どもを心から大切に想っている親御さんだからこその自然な愛情です。
しかし、子どもの将来的な自立という視点に立つと、この「先回りの手助け」は少し立ち止まって考える必要があります。
親御さんの理想的な関わり方に関して、小・中学生、高校生を対象とした日本初の非認知能力専門塾「Five Keys」を設立し、これまで6万人以上の保護者を指導してきた、非認知能力開発の専門家・井上顕滋がお届けします。

自由研究という宿題は、きれいに整った作品を学校に提出すること自体が目的ではありません。子ども自身が頭を悩ませながら試行錯誤し、「自分の判断と努力で完成させる」ことに意味があります。親が焦って手を貸しすぎることは、子どもの大切な成長機会を奪ってしまっているとも考えられます。

以前、私が主宰する塾の保護者から「夏休みの課題はどこまで親が手を貸すべきか」という質問を受けたときには、「何のための宿題だとお考えですか?」「親が手を貸すことで、どのような成長機会が失われると思いますか?」と逆質問をして、親が手を貸さず、子ども自身にやりきらせる方が、有益であることに気づいていただきました。

なぜ子どもは自由研究のテーマを見つけられないのか?

子どもがテーマを見つけられない原因は大きく分けて3つあります。

  1. 「自分で考える力(問題解決力や決断力)」が十分に育っていない
  2. 「好奇心(身の回りの多様な物事に関心を持つ力)」が弱い
  3. 「めんどくさい、やりたくない」と逃避している

宿題や習い事など、日頃から「与えられたタスク」をこなすことばかりに慣れている子どもは、いざ「自由に決めていいよ」と言われても、自分の頭で考えることに慣れていないため、止まってしまいます。好奇心が弱い子も、扱いたいテーマが見つからず止まってしまうでしょう。ここで大人が「それならお母さんが代わりに考えてあげるね」とお膳立てしてしまうのは禁物です。子どものためを思うのであれば、「自分の宿題は自分でやる」という一線を毅然と示し、本人にやらせる関わりが不可欠です。

ここで親が焦って手を貸し、先回りしてテーマを決めたり、調べる手順をすべて用意したりしてしまうと、子どもの脳は「自分は考えなくても、めんどくさがって待っていれば親が何とかしてくれる」と学習してしまいます。この状態が定着すると、考える力や好奇心はさらに衰退し、ますます「自分で何もできない子」になっていくという、恐ろしい負のスパイラルに陥ってしまいます。

こうした過剰介入の弊害は、多くの研究でも実証されています。 2024年にアメリカのラ・シエラ大学の心理学研究チームが行った、過干渉な親(ヘリコプターペアレント)に関する53の研究を対象としたメタ分析では、親の過度な先回りやコントロールが、子どもの不安や抑うつ症状、自己効力感や自己調整能力の低下、さらには低い学業適応(勉強や学校生活に、無理なく前向きに馴染めているか)と関連していることが示されています。また、自己調整能力や自己効力感の低下が「先延ばし」や「回避行動」と強く関連していることも多くの研究で明らかになっています。

この悪循環のメカニズムは、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンの「自己決定理論」からも説明できます。人間が内発的なモチベーションを持って主体的になるためには、「自律性(自分で決めている感覚)」と「有能感(自分には成し遂げる力があるという感覚)」が特に重要であるとされています。

親の最適なスタンスは、あえて「ほっとく」こと

では、テーマが決まらずに悶々としている我が子を前に、私たちはどうすればいいのでしょうか。お勧めしたい最適なスタンスは、あえて「ほっとく(見守り、信じて待つ)」ことです。

ここで言う「ほっとく」とは、子どもへの無関心や放置ではありません。子ども自身に「自分でやり遂げる」という境界線を毅然と引いた上で、その葛藤を乗り越える力を信じて、手出しをせずにじっと待つということです。

「放置」とは違う、前向きな「ほっとく」ための具体的なサポート

しかし、「ほっとく」と言っても、ただ突き放すだけでは子どもは不安になり、宿題を諦めてしまうかもしれません。大切なのは、ただ無関心に投げ出す「放置」と、子どもの自律性を信頼して見守る「自律的見守り」の違いを理解することです。

大人がどのように関わるかによって、子どもの気持ちは大きく変わります。

この「自律的見守り」を家庭で無理なく実践するための、具体的な3つの関わり方をご紹介します。

1. 「どう思う?」と問いかける、何気ない雑談

日常のふとした会話の中で、正解のない軽い問いかけをしてみます。例えば、「最近、学校でいちばんおもしろかったことって何?」「なんで今年はこんなに雨が多いんだろうね?」といった程度で十分です。 ここで大切なのは、「親が答えを言わないこと」です。子どもに「どう思う?」と問いかけ、「考え始めるきっかけ」や「興味を持つきっかけ」を与えます。

2. 子どもの小さな「気づき」を拾って問いかける

生活の中で、子どもが「あ、セミの抜け殻がある」「虹ってきれいだね」と呟く瞬間があります。その小さな呟きを見逃さず、「本当だね、不思議だね」とそのまま言葉を返してあげてください。 これだけで、子どもは「自分の感じたことに価値があるんだ」と実感できます。その後に「なんでだろうね、どうなってるんだろうね、調べてみたら?」と問いかけると、子ども自身が自らわくわくしながら調べ始めるかもしれません。

3. 調べるための「環境」だけを用意し、境界線を越えない

子どもが「これについて調べてみたい」と言い出したら、初めて親の出番です。ただし、代わりに調べてあげるのではなく、「一緒に図書館に行って本を探す」「インターネットの検索の仕方を教える」といった環境づくりに徹します。ただしインターネットで調べようとすると、先にAIからの回答が出てきてしまうので、子どもの能力や経験を優先させるのであれば、あえて図書館や興味の対象を直接見たり、感じたりできる場所へ連れて行ってあげるなどのサポートに限定する方がよいかもしれません。どの本を選ぶか、どんな画用紙にどうまとめるかといった決定については、親は一切手を出さずに、子どもに委ねる境界線を守りましょう。自分でやり遂げる一線を守らせつつ、主導権を完全に子どもに預けることが重要です。

自由研究は「プロセス」こそが重要

自由研究のゴールは、立派なレポートや工作を完成させることではありません。最も大きな価値は、その作品が完成するまでの「思考や葛藤のプロセス」にあります。

「何をやろうか」と真剣に悩み、自分の好きなことを掘り起こし、計画を立てて、思い通りにいかないときに工夫を重ねる。この一連の経験こそが、認知能力と非認知能力という「車の両輪」を力強く回し、考える力、やり抜く力、そして「やればできる」という自己効力感を育ててくれます。ぜひ今年の夏休みの課題は手を貸さず、子どもを信じて最後まで見守ってあげてください。

この記事を執筆したのは

井上 顕滋 非認知能力開発の専門家

子ども向け非認知能力開発専門塾「Five Keys」代表。2004年Result Design株式会社を設立。非営利型一般財団法人 日本リーダー育成推進協会 特別顧問。心理学・脳科学をベースに、20年以上にわたり子どもから経営者まで「人の可能性を引き出す指導」を行っている。子ども向け非認知能力開発専門塾「Five Keys」創設者として、延べ6万人以上の子ども、保護者を指導。

最先端の心理学および脳科学を体系的に学び、それらを融合させることで独自の能力開発メソッドを確立し、これまでに3,000社以上の企業で経営者・経営幹部への指導・研修を実施。エグゼクティブコーチ、メンタルトレーナーとしてオリンピック出場の日本代表選手や 世界一に輝いたプロスポーツ選手のサポートも行っている。

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