【8浪から慶應薬学部へ進学】「目標は東大だった」4浪で信州大学に合格するも1年で退学。学歴を追い続けた理由、今思うことは「学歴は人の一部にしかすぎない」《慶應生よしださん|後編》

小3から中学受験をがんばって、名門進学校・巣鴨中学校に合格したよしださん。けれどゲームざんまいの毎日で成績が降下、高3夏に自主退学しました。よしださんにとってのリベンジは「東大合格」。しかし、一度も東大の本試験を受けることなく、8浪して慶應義塾大学薬学部に進学することになりました。学歴ってなんだろう、大学に進学する意味とは? よしださんと一緒に考えていきます。

前編では巣鴨高校退学までのお話を伺いました

中受のリベンジをしたくて高校を退学。「実力」で東大を目指そう

――よしださんは高校3年の夏に、巣鴨高等学校を自主的に退学したのですね。あと少しで卒業だったのに、なぜ退学を?

よしださん 高校をやめるのは躊躇がなかったですね。僕の家は4人兄弟で、すぐ下の弟とは双子です。兄も下の弟も高校をやめているんで、親も「またか」くらいだったかもしれません。

リベンジしたかったんですよ。中学受験で開成に入れず、第3希望の学校に行きました。中学のうちは成績がよかったのですが、ゲームざんまいになって高校からは赤点の常連になり、夏休みの宿題もできていなかった。ある意味勢いで退学した感じではあったのですが。

もともと巣鴨には入れる実力があるんだから、多少サボっても勉強し直したら、最低早慶、東大も夢じゃないぞと思っていました。自分の努力で学歴を手に入れようと思ったんです。

高校受験を一時期検討していたときに受けた駿台学力テストの数学で成績優秀者に

――なぜ学歴にこだわるのですか?

よしださん お世辞にも高学歴と言える人が身内におらず、そのことがずっと悔しかったんです。幼い頃から夢中で見ていたクイズ番組や周囲の影響もあって、「偏差値が高いことこそかっこいい」という価値観を自然に持つようになりました。勉強が得意な自分でありたいし、高学歴で頭を使う仕事、難しいことを仕事にしている人になりたい。頭のいい人って考えていることや、やっていることが本質的というか、説得力がありますよね。

だからとりあえず東大を目指そうと思いました。東大じゃなくても賢い人はいますが、東大はわかりやすい、だから東大を目標にしたいと思ったんです。

――親御さんはどのように受け止めていたんですか?

よしださん 衣食住のサポートをしてくれて、予備校代も払ってくれました。僕が「東大以外は受けない」と言っていたのを聞いて親は強い意志を感じたようで、のちのち、「何年かかってもいいから合格してほしかった。そうでないと一生後悔するだろうと思った」と言っていました。

ただ、大学進学後の進路についてなどは、親と相談した記憶はないですね。母親は大学受験の情報をたくさん持っていたわけではないですし、僕も親も、とりあえずまずは大学に入ってから決めていこうと思っていました。

2浪までは大学入試そのものを受けず。3年目から本腰を入れた

――高3、そして浪人してからの受験勉強はどのようにされましたか。

よしださん 高3のときは予備校にも通っておらず、巣鴨高校退学後は学校にも行かなくてよくなったので、ゲームをやる時間が長すぎて、浪人しました。現役、1浪のときもゲームにハマっていましたね。親からは何も言われませんでした。「何年かかければ受かるだろう」と思っていたようです。弟も先に高1のときに巣鴨を退学しているので、ふたりとも高校のフォローなしで受験するわけですが、自主的に受験の情報を集めるわけでもなくて、ふたりでゲーム対戦をして日々が終わっていく感じでした。

実は、浪人2年目までは、どこも受けていないんです。それでも、「やればできる」という思いはありました。中学時代の成績と高校入ってからの勉強でなんとかなると。ただ、国立は科目も多いですしだんだん勉強もわからなくなり、このままでは……、という焦りも出てきました。もう東大にこだわるのではなく、東工大や京大なども視野に入れようと思い始めました。

8浪目で慶應義塾大学薬学部に入学したよしださん

よしださん 3浪目からは本腰を入れて勉強もし始め、「どんなに下げても東工大(現東京科学大学)に」と思って、1日5~6時間は机に向かい、あとはゲームして、の生活になりました。でも、今思えばやみくもにみんなが使っている問題集をやっているだけで、勉強のスタイルも定まっていないし、駿台や河合に籍だけ置いているような感じで、いまひとつ勉強に集中できてはいませんでしたね。

センター試験(現共通テスト)だけは受けて、やはり二次試験は受けませんでした。実は東大の二次試験は生涯一度も受けていません。東大はセンター試験の足切り(規定の点数に達していないと二次試験を受けられない)があり、受けられませんでした。

4年目に信州大学理学部に合格。でも東工大への夢はあきらめない

――それでも4年目には国立の信州大学理学部に合格されたんですよね、すばらしいです!

よしださん 4浪目には、「そろそろ合格が欲しい」と考えて信州大学の理学部を受験し共通テストで581/900点を得点、数学では600点中510点を取れて合格しました。二次試験は数学だけで受けられたのが信州大を選んだ理由でもありました。

でも、自分の本命は東工大なので、仮面浪人をしようと、最初から思っていました。だから1年生のときにほぼ授業いっていないんです。それでも2年生に上がれる仕組みだったので2年生になれましたが、すぐに休学し、2年生の年に、退路を断つ意味で信州大学を退学したんです。

――なんと! 高校、大学と退学され、潔いですね。それで、東工大を目指して……。

よしださん そうです。その頃から「集団塾がそもそも向いてなかったのかもしれない」と感じて、6浪目の10月から個別指導の「家庭教師のトライ」に変え、出会った先生と本当に波長が合って、そこから徐々に成績も上がっていきました。僕のことをすごい信頼してくれる先生で、僕もその期待に応えようと頑張るという理想的な関係を作れて、成績が上がっていったときは、生まれて初めて勉強が楽しいと思えました。

勉強がフィットして、得意な数学のほか、理科も化学がわかるようになって東工大模試の成績も上がりました。でも、2回受けてまた不合格でした。

8浪目で慶應義塾大学薬学部に合格。勉強を続ける意味とは?

――結局、慶應薬学部に入学したのですね。

よしださん 化学が少しずつ理解できるようになり面白さを感じ始めたことから、入学後に化学を学べる薬学部を志望校の一つとしました。それに、薬剤師の資格を得られたらいいなと思って。数学、英語、化学だけで受けられるのも、自分にはメリットでした。8浪目で、ようやく着地しました。東工大には受からなかったけれど、ほっとしましたね。

とはいえ、薬学部の勉強って難しいですね。今2年なんですが、ちゃんと卒業までいけるか、心配ではあります。文系の学部に入り直そうか、という思いも少しあります。

――そんなに受験を繰り返すなんて、勉強が苦手と言いながら、勉強を続けることを大事と思っているのでは。その理由は?

よしださん 勉強は面倒なことを繰り返したり間違いを正したりするなど、地味だけど根性の要る作業を繰り返さないといけないので、それを若いときにすることに価値があると思います。試験中は自分の力だけしか使えず、落ちたら次は1年後っていう、精神的にもつらい状態で過ごすので、合格した人への評価はもう少し高くてもよいのではないかと感じます。

とはいえ、大学に入ってから痛感しましたが、受験の時期が長すぎて、受験以外の話題にまったくついていけず、苦労しました学歴や受験の苦労話などはたいていの人には興味がなく、浪人期間中は外部の情報をあまり見なかったので世間の流行とかにもうとくて、自分が知らないことなんて世の中に山ほどあるんだなと。入学してから今のトレンドを追えばいいと思っていましたが、それでは遅すぎました(笑)。

慶應構内での写真(よしださん撮影)

よしださん たとえどんなに高い学歴を得ようと、人同士で生活するためのスキルは学歴だけで完結するはずはなく、学歴はあくまでその人の持つ側面のほんの一部にしか過ぎません。ただ、学歴をはじめとする頭の良さに関連した指標は人々から信頼を得やすい優れた道具だとは思います。両面があると思います。

自分がずっと受験勉強をしてきたので、人に勉強を教えることにも興味を持ち、今塾でアルバイトもしているのですが、そんな自分の経験も踏まえて、何か教えられることがあるかもしれないな、と思っているところです。

――長い長い受験勉強期間、お疲れ様、と言いたいですね。ご本人の学歴や名門大学合格へのへの熱意について、「そんなにこだわらなくても?」と思いつつ、読者の皆さんもお子さんに対してある程度同じようにこだわる部分を感じているのではないでしょうか。

よしださんが言うように、「学歴のある人は人から信頼を得やすい」という側面は、大なり小なりあるでしょう。が、同時にご自身が言うように、「学歴はあくまでその人の持つ側面のほんの一部にしか過ぎません」。勉強を通して、また勉強以外のことを通してどんな体験をして生きていくのか。お子さんに対してだけでなく、保護者自身も考えていけるといいですね。

【前編から読む】名門・巣鴨高校を退学し、ゲーム依存だった頃など幼少期からのお話を伺いました

お話を聞いたのは

よしださん 慶應義塾大学薬学部学生

1998年、東京都港区生まれ。小3から中学受験の準備をはじめ、開成、海城などを目指し、巣鴨中学校に合格。在学中にゲームに夢中になり、高3夏に自主退学。東大を目指して勉強を続けるも、ゲームとの両立が難しく、4浪目あたりから東工大や京大などに進路を変更。4浪目で信州大学に入学するが、仮面浪人をし、受験を続けて8浪目に慶應義塾大学薬学部に合格、現在2年生。休学して文系受験をする計画もある。

note: よしだ(慶應多浪)
X:@keiotaro6
YouTube:@taro-e6s1l

この記事を書いたのは

三輪泉 ライター

インタビューを中心に教育、子育て、医療、介護、食などのテーマで WEB・雑誌・書籍などの記事を執筆。お話を伺う方にたくさんの学びをいただいています。社会福祉士、法定成年後見人、中学校・高等学校教諭一種免許状、生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)

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