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「怖くて病院に行けない」「退学になるかも」10代の女の子が発するSOS

――10代の妊娠は、昔より増えているのでしょうか?
にじいろさん:10代の人口自体が減っていることもありますが、10代の妊娠は、昔より減っています。また、20年ほど前と比べると性交経験率も中絶率も減ってきています。具体的な件数を数字で見ると、20年前は10代の妊娠が年間約5万件、10年前は約3万件ありましたが、今は1万5,000件くらい。ここ数年、中絶数・中絶率は微増していますが、長い目で見れば昔より減っているといえる状況です。とはいえ、これは決して少ない数字ではありません。
10代の妊娠の中で一番多いのは19歳、次が18歳という内訳にはなりますが、15歳以下でも年間約600人が妊娠しています。年齢が低ければ低いほど、性被害が疑われる可能性も高く、体にも負担がかかります。
――にじいろさんのもとには、どんな相談が寄せられることが多いですか?
にじいろさん:今は受けつけていませんが、コロナ禍で妊娠相談をしていたときにはSNSのDMに10代の女性からたくさん相談が届きました。
そのとき多かったのは、「妊娠しました」という相談よりも、「妊娠したかもしれない、どうしよう」という悩みでした。確かめたほうがいい、病院を受診したほうがいいことはわかっているけれど、怖くてできない。親を含め、誰にも言えない。「どうしよう、どうしよう」という状態でとどまっている子が大半でした。性教育の授業で学校を訪れた際、終わってから「こういうことをしたんですけど、妊娠の可能性はどれくらいありますか?」「生理が遅れていて不安です」と相談を受けることもありました。
――「妊娠したかも」と思っても動けなくなるのは、知識がないからなのでしょうか?
にじいろさん:「検査薬というものがあるらしい」「病院に行ったほうがいいらしい」など、ざっくりとわかっている子がほとんどだとは思います。ですが、わからないのは、もっと具体的で現実的なことです。
検査薬はいつ使えて、いくらくらいで、未成年でも買えるのか。産婦人科に1人で行ったら親に連絡されてしまうのか。いくらかかるのか。そもそも自分だけで診てもらえるのか。保険証を使ったら親にバレるのではないか…そういうことがわからないから、怖くて行動に移せないのでしょう。それに高校生の場合は、学校に妊娠を知られたら退学になるのではないかという不安も大きいのだと思います(※文部科学省は、妊娠したことを理由に学校側が安易に退学処分や自主退学の勧告を行わないように求める通知を出しています)。
――「親や先生に言ったら絶対に怒られる」と思ったら、なかなか言い出せないですよね。
にじいろさん:「怒られるから」だけではありません。「心配や迷惑をかけたくない」と思っている子が、すごく多いんですよ。関係性が悪いわけでも、怒るような親御さんでもない。でも気を遣ってしまって、心配をかけたくないから言えなくなってしまう子もいます。性格にもよりますが、これは本当に多いと思います。
子どもの妊娠に親が気づけるチャンスは?
――ニュースなどで「子どもが妊娠していることに親も気づかなかった」というケースを見ると驚いてしまうのですが、実際にあり得ることなのでしょうか?
にじいろさん:そういったニュースが流れると、ネットのコメント欄には「親が気づかないわけがない」「異常な家庭だ」といった書き込みが並びますよね。でも、隠そうと思えば隠せてしまうというのが実際のところだと思います。
ある程度の年齢の女性なら、少しお腹が出ていると周りの人が「妊娠しているのかな?」という目で見る可能性がありますが、中高生だと、周りがそんな目で見ることのほうが少ないですよね。「ちょっと太ったかな」で終わってしまう。本人がわからないようにしていたら、なおさら気づけないと思います。
――親が気づけるチャンスがあるとしたら、どんなところでしょうか?
にじいろさん:体調や体型の変化、食事の変化で「あれ?」と思うことはあるかもしれませんが、妊娠初期で体型の変化に気づくのは難しいと思います。
家庭で気づける可能性があるのは、家にあるナプキンが減っていない、サニタリーボックスが使われていないといったことです。すぐに妊娠を疑うわけではなくても、可能であれば「最近、生理はどんな感じ?」と声をかけられるとよいですね。もちろん、根掘り葉掘り聞くのは管理的でよくないですが、家族が早い段階で「あれ?」と気づけるとよいと思います。
妊娠を打ち明けられたときの対応:①最初に伝えたいこと/避けたい声かけ

――わが子に妊娠を打ち明けられたとき、親は動揺してしまうかと思いますが、どんな言葉をかけたらよいでしょうか?
にじいろさん:まずは、勇気を持って話してくれたということに対して、「よく話してくれたね、ありがとう」と伝えてほしいです。現実には驚いたり「何でそんなことになったの?」「まだ高校生でしょう」などと言いたくなってしまうかもしれません。でも、言ってしまった後でもいいので、「話してくれてよかったよ」「ありがとう」と言ってあげてください。
そして、「この先はサポートするよ」「味方になるよ」という姿勢を示すことが大切だと思います。細かいことは一つひとつ考えて決めていかなければいけませんが、「力になるからね」というスタンスでいてほしいです。
――反対に、避けたほうがよい対応はどんなものでしょうか?
にじいろさん:「産めるわけがないでしょう」「中絶するしかないよね」というように、「こうすべき」「これはあり得ない」と一方的に意見をぶつけるのは避けてほしいです。まずはお子さんの味方になること。そして情報提供をすること。そこを意識していただけたらと思います。
妊娠を打ち明けられたときの対応:②子どもに確認すること・相談先と産婦人科選び

――妊娠について、親はどんなことを確認しておくと良いでしょうか?
にじいろさん:まず確認したいのは、相手との関係性と、娘さん自身も望んでいた性行為だったのかというところです。性被害ではなく、例えば高校の同級生と付き合っていて、お互い同意の上での性行為での妊娠というパターンであれば、とにかく早く産婦人科を受診すること。中絶する場合は期限もありますから、これは早いほどいいです。受診につなげる段取りをしていくことが、親の大事な役割と言えます。
――性被害が疑われる場合は、警察に行くべきでしょうか?
にじいろさん:いきなり「警察」と言っても、本人が受け止めきれないことが多いと思います。まったく知らない人からの被害なら本人も納得しやすいのですが、知っている人や交際相手の場合、周りから見れば明らかに被害でも、本人は被害だと思わないことがあります。なので、先走って警察に行くのではなく、「相談できるところがあるよ」という形で、お住まいの地域にある性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながるのがおすすめです。
被害から日数がそれほど経っていなければ証拠採取ができますし、産婦人科も紹介してもらえます。都道府県によって助成の範囲は異なりますが、多くのセンターでは緊急避妊薬、証拠採取、性感染症の検査、外傷の診察などを無料で受けられます。それだけではなく、性被害や10代への対応に慣れている病院を紹介してもらえる場合もあります。カウンセリングが受けられたり、警察に行くかどうかも含めて一緒に考えてもらえたりもするので、被害が疑われる場合は、まずワンストップ支援センターに早く相談できるといいと思います。
――被害ではない場合、産婦人科はどう選べばいいのでしょうか?
にじいろさん:そもそも豊富な選択肢がないなど、地域によって差があると思います。でも、もし行ける範囲にあるのであれば、「思春期外来」「ユースクリニック」のある産婦人科をおすすめします。10代の患者さんが多かったり、スタッフが10代のことをよく知って対応していたりするので、安心だと思います。そういった病院ではお産を扱っていない場合もありますが、それでも構いません。初回がすごく大事なんです。傷つけられるような対応があったり、待合室も含めて居づらい雰囲気だったりすると、不安が一気に大きくなってしまうからです。
だから親御さんには情報収集をしてほしいと思います。「ここなら同じような10代の子をたくさん診ているだろう」というところにつながれたら安心です。そこから必要に応じた病院を案内してもらえます。すべてが1か所で完結しなくてもよいので、初回はお子さんが安心して受診できる産婦人科を選んでほしいです。
――費用の面が心配、というご家庭もあると思います。
にじいろさん:産婦人科が行政と連携して意図せぬ妊娠をした女性を支援する「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会(あんさん協)」という団体があります。まだ数は少ないですが全国の加盟医療施設で、中高生の妊娠相談と妊娠検査を無料で受けられます。自治体の取り組みも進んでいて、例えば東京都は近年ユースクリニック関連の事業に力を入れていて、都と連携する医療機関で、初回の妊娠判定や緊急避妊薬にかかる費用がかからない仕組みが広がりつつあります。
ただ、突然の出来事からここまでの情報にたどり着くのは難しいですよね。ですから、困ったらまずは「妊娠SOS」で検索してください。本人でも、親御さんでも構いません。「産婦人科ってどう選べばいいですか」というところから相談に乗ってもらえます。
緊急避妊薬(アフターピル)に関する親世代のアップデートが必要
――緊急避妊薬について、親が知っておきたいことを教えてください。
にじいろさん:どちらかというと、親世代のほうが知らないことが多いかもしれません。まず知っていただきたいのは、緊急避妊薬は「副作用が重い薬」ではないということ。そう思い込んでいる大人がとても多いんです。副作用がまったくないわけではありませんが、安心して飲める薬です。そして、未成年でも妊娠の可能性がある人は飲むことができます。
緊急避妊薬は性行為から72時間以内の服用が必要で、早ければ早いほど効果が高い薬です。親御さんが思い込みから「中学生に飲ませて大丈夫かな」「吐き気が強いって聞いたよ」と口にしてしまうと、子どもが飲むのを戸惑ったりためらったりしているうちに時間が過ぎてしまいます。だからこそ、親御さんには緊急避妊薬に関する正しい知識を持っていただきたいです。
――2026年2月から薬局でも買えるようになりました。何が変わったのでしょうか?
にじいろさん:薬局で購入できるようになったことは、ニュースなどでご存じの方も多いと思います。ですが、「どこでも買える」「風邪薬のように買える」わけではありません。以下のような条件があることは知っておいていただきたいです。
- ・購入できるのは本人のみ(代理人の購入は不可)
- ・販売しているのは一部の薬局のみ(厚生労働省のサイトに販売可能な薬局の一覧が掲載されています)
- ・対面販売(薬局の営業時間内)
- ・購入時に薬剤師との面談が必要
- ・薬剤師の目の前で服用する(面前服用)
とはいえ、購入に年齢制限がなく、未成年でも保護者の同意・同伴が不要というのは非常に大きなポイントです。病院より営業時間が長い薬局も多いですし、値段も抑えられます。「病院に行く」以外の選択肢ができたことは、本当に大きな変化だと思っています。
子どもの成功体験を積み重ねて、打ち明けやすい関係性の構築を
――夫(娘の父親)にはどのように伝え、対応を共有するのがよいでしょうか?
にじいろさん:例えば最初にお母さんだけに打ち明けてくれたのなら、娘さん自身も「お父さんにどう伝わるか」を心配すると思うんです。ですから、「あなたから言いにくかったら、お母さんから伝えてもいいよ」と伝えたり、「お父さんに知られることで、どういうことが心配?」と聞いてみたりするのがよいと思います。
娘さんは「お父さんには言わないで」と言うかもしれませんが、「あなたの体と命に関わることだから、お父さんに隠すわけにはいかない」ときちんと説明してください。相談を受けたお母さんが勝手に「こうするよ」と決めてしまうのではなく、娘さんの気持ちや希望を聞きながら、調整役になるとよいですね。
――親に妊娠したことを打ち明けるのは勇気がいることだと思います。日頃からの関係づくりが鍵となってきますね。
にじいろさん:そうですね。性のことに限らず、「いろんな話をしても大丈夫だ」「頭ごなしに否定されない」「うちの親なら耳を傾けてくれる」という経験の積み重ねが大切です。
日常生活の中のちょっとした相談でも、一方的に考えを押しつけられたり、「そんなことはありえない」と否定されたりすると、「こんなことなら相談しなければよかった」と思いますよね。そうするといくら「何でも相談してね」と言われても、子どもは何も相談したくなくなってしまいます。反対に、「親に話してみてよかったな」という成功体験があると相談へのハードルがグッと下がるはずです。
――相手の親御さんとは、どう接触すればよいでしょうか。
にじいろさん:もともとつながりがあったかどうか、相手が未成年なのか社会人なのかでも、かなり変わってきます。未成年同士のカップルであれば、やはり両方の親が話し合う場を設ける必要があると思います。まったく接点がないのであれば、娘さんに「大事なことだから、向こうの親御さんとも話をしたい」と伝えた上で、セッティングしてください。
後編では、「わが子が妊娠したとき、考えられる選択肢と親にできるサポート」「男の子の家庭で子どもに伝えておきたいこと」について伺いました。
著書をチェック
10代の子どもたちのリアルな性の悩みを多数紹介。元養護教諭、性教育講師の著者が知っておいてほしい性の知識をやさしく伝えます。
お話を聞いたのは
元保健室の先生であるにじいろさんが性教育を行う対象は子どもだけではなく、保護者や教員など様々。現場の声と知識を活かして、多岐にわたる活動をしている。昨年出版した著書「10代の妊娠」(合同出版)では、10代の子どもの妊娠や出産、中絶など、リアルな性の悩みを紹介し話題となっている。
この記事を書いたのは
音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。