道具で発達を応援するネットのお店tobiraco(トビラコ)の店主が、発達障害の子の「困り感」を解決する道具をご紹介します。第1回は「聴覚過敏」の子のための道具です。
目次
「聴覚過敏」といっても苦手な音は人それぞれ
発達に凸凹があると、脳内の伝達物質が出過ぎたり、少なすぎたりして、感覚が過敏になったり、逆に鈍感になったりするようです。その過敏さや鈍感(鈍麻)さは、日常生活に支障をきたすほど。
聴覚過敏も感覚過敏の一種ですが、過敏さは人それぞれ。
カラスの鳴き声を聞くとパニックを起こす子、踏切の警報機の音が怖くて道を遠回りする子、掃除機やスピーカーから聞こえてくる音が、爆音のように聞こえる子、いろいろな音が混ざるとストレスになる子などなど。
スピーカーから聞こえてくる音がこわくて、運動会の練習中にスピーカーを叩き壊したという例もあります。
耳を塞いでパニックを起こしていたら、聴覚過敏の可能性はかなり高いのではないかと思います。
【特定の音が怖い】ハンドドライヤーの音がこわくて外出できない子~「イヤーマフ」で解決!
あるとき、トビラコ店主のもとに「聴覚過敏」の4歳の女の子のお母さんから相談が寄せられました。
外出先のトイレに設置されたハンドドライヤーの音を怖がるので、どうしたらいいでしょうかという内容です。
突然、ガガガーと聞こえてくるハンドドライヤーを「トイレで恐竜さんが吠えている」と言って、外に出るのも嫌がるようになったとのこと。
そこで、トイレに入るときだけ「イヤーマフ」の着用をおすすめしました。
▲イヤーマフ(これは小学生以上のタイプ)
<3M TM(スリーエム TM=Trade Mark) PELTOR(ペトロ TM=Trade Mark)イヤーマフX1A>カップ厚:4.6cm 重さ:184g 対象年齢:小学生以上 価格:オープン ※騒音の大きさによって遮音しきれず、音が聞こえる場合があります。
発売元・問い合わせ スリーエム ジャパン株式会社
https://www.mmm.co.jp/ 0570-011-321
※写真は小学生用ですが、幼児向けはAmazonなどで販売されています。
数日後、お返事がきました。
イヤーマフ(幼児用)をつけたところ、トイレをこわがらなくなり、喜んで外出するようになったそうです。
特定の音が苦手な場合もあれば、音が聞こえすぎてしまう場合もあります。
ハンドドライヤーの音をこわがった女の子は、特定の音に反応するタイプです。
苦手な音というのも人によっていろいろで、カラスの鳴き声を聞くとパニックを起こす子、踏切の警報機の音が怖くて道を遠回りする子、掃除機やスピーカーから聞こえてくる音が、爆音のように聞こえる子などなど。
【わずかな音が大きく聞こえる】冷却装置の音がうるさくて、スーパーでぐったり~「ノイズキャンセラ-」で解決!
特定の音が苦手というわけでなく、音が聞こえすぎて疲れるという聴覚過敏の子もいます。
トビラコ店主の知り合いのM子さんがそのタイプ。今年大学1年生になる女性です。
M子さんは、スーパーに入るとぐったりとします。生鮮食品売り場の冷却装置の吹き出し口から聞こえてくる「ブーン」という音。天井の蛍光灯からは「チリチリ」という音。聴覚過敏でない人間には、ほとんど聞こえない音が絶えず聞こえてくるので疲れてしまって15分といられないそうです。
M子さんは教室でも音の洪水に悩まされていました。人の話し声や、給食の食器がガチャガチャするぶつかる音、廊下を走る音・・・。いろいろな音が混ざり合ってそれが強いストレスになったそうです。
M子さんを音の洪水から身を守ってくれたのが、「ノイズキャンセラー」です。M子さんは大学に入ってもノイズキャンセラーが手放せません。
ノイズキャンセラーで「静寂」を手に入れる
イヤーマフにくらべて、ノイズキャンセラーはややお値段は張りますが、その価値十分にありです。M子さんが使っている「ノイズキャンセラー」は、スピーカーでおなじみのメーカーBOSE(ボーズ)が作っているロングセラー商品です。
▲ノイズキャンセラ-①
①<QuietComfort35 wireless headphones(クワイアットコンフォート35ワイヤレスヘッドホン)>本体サイズ:W17×H18×D81cm 重さ:234g 音声専用ケーブル:1.2m USBケーブル:30.5cm 付属品:充電用USBケーブル、有線接続用の音声ケーブル、機内用デュアルプラグアダプター キャリングケース 価格:35,000円(税別)
発売元・問い合わせ先 ボーズ https://www.bose.co.jp 0120-002-009
▲ノイズキャンセラ-②
②<QuietComfort35 wireless headphones(クワイアットコンフォート35ワイヤレスヘッドホン)II>①のモデルにGoogle Assistantなどの音声アシスタントに対応し、ノイズキャンセリングモードを三段階の強弱レベルで使い分けられる機能を搭載。
価格:37,000円(税別)
トビラコ店主も試しにつけたところ、ノイズがカットされるとこんなにも世界は静かなんだ、ということを実感。ノイズキャンセラーをつけるということは、静寂な環境を手に入れるということです。
聴覚過敏でなくても、静かな世界に浸りたい人にはおすすめです。
お手頃価格で雑音カット「デジタル耳せん」
人の声だけ聞こえて、雑音をカットするという耳せんがあります。
トビラコ店主が編集者時代にお世話になった安部博志先生(筑波大学附属大塚特別支援学校)は、電車の中のざわついた音が苦手で「デジタル耳せん MM1000」を愛用しているそうです。
Amazonのレビューをみてみると、かなり高評価。聴覚過敏のお子さんに使っている人のレビューの中に混じって、「ダンナのいびきが聞こえなくなった」という微笑ましいレビューもありました。
▲デジタル耳せん
<デジタル耳せん MM1000>サイズ:W6.4×H1.4×D6.4cm(イヤホン・コードストッパー除く) コード長:85cm(Y型) ※左右のコードの長さが同じです。質量:約33g(電池除く、コードを含む) 電源:単4形アルカリ乾電池または単4形エネループ×1本(別売) ※すべての騒音が消えるわけではありません。 価格:4,980円(税別)
発売元・問い合わせ/株式会社キングジム
https://www.kingjim.co.jp/sp/mm1000/ 0120-79-8107
聴覚過敏で電車に乗るのがちょっと苦手というお子さんにもお試しになってみてはいかがでしょうか。
発達障害の「困った」、道具であっさり解決しましょう。
次回も素敵な道具たちをご紹介します。
『発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 tobiraco・編集)小学館
トビラコ店主
元子育て雑誌編集者。編集者時代に出会った特別支援学校の先生と現場で効果のあった教材を商品化。「tobiraco」というネットショップで販売。ヒット商品は「きいて はなして はなして きいて トーキングゲーム」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」。「療育アロマ」も快走中。
写真/壱岐紀仁(風景)・tobiraco