絵本は、子どもの成長に欠かせないアイテムです。ママ・パパのなかには、自分が小さいころに読んでいた絵本を、子どもに読み聞かせしている方もおられるのではないでしょうか。自分が出会ったいい絵本は、子どもにも読んであげたくなります。
この記事では、子どもに夢や希望を与える絵本をつくる仕事、「絵本作家」を取り上げます。絵本作家の仕事とは、どうすれば絵本作家になれるのか、絵本作家に求められる資質などを考えていきます。
どうすれば絵本作家になれる?
子どもに夢や希望を与えてくれる絵本。最近では、子どもだけではなく、大人にも人気が広がり、絵本の世界や可能性は広がっているようです。また、子どもに絵本の読み聞かせをしていたママ・パパが、絵本の魅力にはまり、子育てが落ち着いたタイミングで自らの経験を生かして、絵本作家になったというケースもあります。
絵本作家の仕事とは
絵本は子どもにいろいろなことを教えてくれます。新しい言葉、モノの名前、知らない世界…。また、まだ文字が読めない幼い子どもには、絵で内容を伝えなければなりません。
子どもの好奇心を広げてくれる絵本。絵本作家は、実際にどんなことをしているのでしょうか。
絵本を作る
絵本作家の仕事は、文字どおり「絵本を作ること」です。ストーリーを考えて、お話を作り、絵を描きます。ただし多くの場合、すべてを1人で行うわけではありません。絵本を実際に作りはじめる前には、絵本を出す出版社の人と、絵本のコンセプトや絵の雰囲気、ストーリーなどについて打ち合わせをします。
絵を描き、絵本を作っていく過程では、文字の校正や、絵のチェック、表紙のデザインなども決めていきます。絵を描く以外のさまざまな作業を出版社の担当者と一緒に進めていきます。
絵だけ、お話だけの場合も
絵本作家は、絵が上手に描けないとなれないと思っているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。絵本を分業して作っている人もいます。
絵を描くこと、文章を書くこと、もちろん両方できれば素晴らしいですが、得意分野に専念して、苦手な部分は誰かにまかせるというスタイルもあります。絵が描けないからといって、絵本作家になれないわけではありません。
絵本作家に求められる資質
では絵本作家に求められる資質とは、いったいどのようなものでしょうか。
絵本を読むのは基本的には子どもたちです。子どもたちがワクワクするような絵本を描くための能力には、どんなものが求められるのでしょう。
好奇心が旺盛
日常の何気ない、小さな出来事にスポットをあてて、ストーリー展開している絵本が数多くあります。
たとえば、動物や昆虫、野菜、乗り物、さらにはトイレなど、ごく普通の、身のまわりにある事柄や出来事に興味をもち、ストーリーを展開していく。絵本作家には、いろいろなところに目を向ける好奇心が欠かせません。
想像力がある
多くの人が気づかないようなことに目を向ける好奇心が絵本づくりの出発点だとすれば、次に必要なのは、そこからストーリーを展開していく想像力です。
子どもの豊かな想像力と感受性を刺激する、ワクワク、ドキドキ、そしてときにアッと驚くような展開。子どもたちと同じ視点で物事や出来事を見つめながらも、子どもたちの予想や期待を超える想像力が欠かせません。
誰もが子どものころには無限の想像力や感受性を持っているといわれます。そして、大人になるにつれて、それらを忘れていってしまう…。素敵な絵本を描くことができる絵本作家は、大人になっても子どものころに持っていた想像力や感受性を忘れずに持っている人といえます。
洞察力がある
どんなにすごい想像力でも、子どもたちが理解できなければ絵本になりません。子どもたちが求めているものを把握し、判断できる洞察力も必要になります。
どんなストーリーで、どんな絵なら、たくさんの子どもたちに興味を持ってもらえるのか、すでにたくさん出ている絵本のなかから、子どもたち、そして実際に絵本を購入するママやパパは、どんな絵本なら興味を持つのか。時代のトレンドを分析しながら絵本を作り上げていく、洞察力、分析力も必要です。
絵本作家になる方法
実際に絵本作家になるには、どうすればよいのでしょうか。絵本作家には資格のようなものはありません。誰でも「絵本作家」と名乗ることはできますが、絵本を出版した実績がなければ、まわりの人は絵本作家と認めてくれないでしょう。絵本作家になる方法を見ていきましょう。
養成講座を受講する
出版社や現役の絵本作家が開催している養成講座やスクールに通うことは、絵本作家への第一歩といえるでしょう。ある程度の費用は必要ですが、プロから的確なアドバイスを受けることができるので、絵本作家として必要な能力を養うことができます。
また、実際に絵本の世界で働いている人たちとのつながりを持つ機会を作ることもでき、次のステップにつながるチャンスもあります。
賞に応募する
絵本作家になるための王道が「賞やコンクールへの応募」です。さまざまな団体や出版社などが新しい才能を発掘するために賞やコンテストを開催しています。
もちろん受賞は簡単なことではありません。ですが、賞にチャレンジすることは、絵本作家を目指すうえで大きな目標になります。
出版社に作品を持ち込む
直接出版社に作品を持ち込み、見てもらうことは、絵本作家になるための昔からの手段といえます。作品の持ち込みから実際の出版に至るまでは、とてもハードルが高いですが、この方法も現実的で有効な方法のひとつです。
見込みがあれば、出版社の編集者や担当者からアドバイスがもらえるでしょう。
大学や専門学校へ通う
基礎からしっかり学びたいという方は、大学や専門学校に通って絵本作家を目指す道もあります。時間はかかってしまいますが、色の使い方や、本としての構成力、絵の描き方、絵本の作り方などの基礎知識を幅広く学ぶことができます。
自費で絵本を出版する
自費で絵本を出版するという手段もあります。とにかく絵本を作り、実際にいろいろな人に見てもらうことで、絵本作家としての本格的なデビューの足掛かりにする方法です。実際、自費出版した絵本が話題となり、その後、出版社から絵本を出した絵本作家もいます。
今なら、インターネットに絵本を公開するという方法もあります。
絵本作家になるためにしておくといいこと
絵本作家になるための資格などはありません。ですが子どもたちに絵本を通してメッセージを伝えるためのスキルは当然必要です。絵本作家になるためにやっておきたいことをピックアップしました。
絵の勉強
第一には、なんといっても絵を描く力「画力」を磨くことが大切です。絵本は絵具などを使って描くイメージが強いですが、最近ではコンピューターを使って、デジタルで絵を描くケースも増えています。
出版社からのさまざまな要求に応えられるようにするためにも、アナログだけではなく、デジタルツールも使いこなせるようにしておくとよいでしょう。
ただし、自分だけのオリジナルな絵を描く力を鍛えることを大切にしてください。
文章の勉強
文章力も絵本を作るうえでとても大切になります。字を覚えたばかりの子どもに興味を持ってもらうには、短く、インパクトがあり、わかりやすい文章にしなければなりません。
自分が膨らませたストーリーをうまく表現するためには、語彙力、文章の構成力・リズム感などが必要になります。たくさんの文章にふれて、引き出しを増やしておきましょう。
色彩やデザインの資格をとる
絵本作家になるための資格はありませんが、絵本づくりに役立つ資格としては「色彩検定」や「Illustratorクリエイター能力認定試験」「Photoshopクリエイター能力認定試験」などがあります。
色彩検定は、色が持つさまざまな効果についての知識を身につけることができ、効果的な色使いで表現の幅を広げることにつながります。
Illustratorクリエイター能力認定試験やPhotoshopクリエイター能力認定試験は、画像ソフトとして有名なIllustratorやPhotoshopの使いこなしを認定する資格です。デジタルツールでの作画が増えていますので、自分のスキルを知る基準となります。
プレゼン力の勉強
出版社に持ち込みをするときには、自分の描いた絵本、そして作家としての自分自身をしっかりアピールできることが大切になります。編集者に自分の思いや絵本のコンセプトをプレゼンテーションする能力が必要になります。
せっかく素敵な絵本を作っても、編集者に認めてもらわないことには次のステップに進めません。しっかり伝えられるよう、プレゼン力も鍛えておきましょう。
絵本作家になるためのおすすめの本
絵本作家を目指す人に向けた本も出版されています。まずはこれらの本を読んで、自分なりのステップを考えてみましょう。
「絵本づくりトレーニング」(筑摩書房)
絵本づくりのトレーニングには最適の1冊です。発想の方法、ページめくりの効果、位置と動きの関連性など、絵本づくりの基礎知識がぎっしりつまっています。
「絵本をつくりたい人へ」(玄光社)
絵本作家養成ワークショップで30年以上のキャリアをもち、多くの有名絵本作家を輩出している土井章史氏による「絵本実践トレーニング」本。
絵本の基本的な構造から、作り方の基礎、注意すべきところなどをわかりやすく解説しています。著者のコラムや有名絵本作家へのインタビューもあります。
「絵本つくりかた」(技術評論社)
ストーリーづくりや絵の描き方、造本、デジタル環境での制作、電子出版への対応などを、日本児童出版美術家連盟会員の、つるみゆき氏が解説しています。
ご家庭でお子さんと一緒に絵本を作りたいという人から、本格的に絵本作家になりたい人まで、幅広く対応している内容です。
あなたも未来の絵本作家
子どもに夢や希望を与えることができる絵本作家。絵本作家になるための特別な資格などはありません。子どものころにたくさん絵本にふれ、親になってからは子どもに絵本を読み聞かせしたきたという方は、誰もが絵本作家になれる資質を持っているといえるかもしれません。
もちろん本格的な絵本作家になる道は簡単な道ではありませんが、ご家庭でお子さんと一緒に絵本づくりを楽しむという方法もありますし、インターネットで作品を公開する方法もあります。趣味やライフワークとして絵本づくりにチャレンジしてみてもよいですね。
文・構成/HugKum編集部