毎晩、絵本の読み聞かせを日課にしているパパママは多いことでしょう。視点を少し変えて、子どもと一緒に 世界にひとつだけのオリジナル絵本を作ってみませんか?身近な写真や思い出の服を使って楽しみながら家族で作業できる絵本作り絵本作家の中川 淳さんに教えていただきました。
絵本のストーリーの立て方おすすめアイデア
決まりはなし!子供の自由な発想を大切に
「絵本作りは子どもの隠れた感性を引き出す遊びです。じつは大人より小さな子どものほうがアイデアが豊富で、おもしろい作品が仕上がるんです」そう語るのは、絵本の研究家で美術学者の中川素子さんです。中川さんは絵本作りで特に大切なのは、家族で一緒に楽しむことだといいます。「何の絵を描くか、どんなストーリーにするか、子どもを交えて話し合う絵本作りは、親子のコミュニケーションの場にふさわしい環境です。家族で一緒に楽しむことで、子どもは親子の一体感を味わい、愛されている実感を得ることができるのです」
子ども発信のストーリーを
作るときはなるべく親は手をかけず、できるだけ子どもに作らせてほしい、と中川さん。難しく考えず自由な発想で取り組むことも重要だといいます。「絵本作りに決まり事はありません。ページ数が何ページでもいいし、文字がまったくない絵本でもかまいません。新聞紙で気になった言葉を切って、つなげて貼って、詩のような世界観を出すのもいいでしょう。子どもに物語を作らせて、自分を主人公にしたり、お父さんお母さんを登場人物にしたり…。 今まで生活のなかで体験したことを軸に、自由な表現で作ることが大切です」
アナログで作るのがおすすめ
またパソコンを使うと表現手段が増え便利ですが、なるべくなら手作りで。「子どもたちにははさみやのりで切り貼りする手技の大切さ、素材を肌で感じる楽しさを失ってほしくありません。手間をかけて取り組むことが、子どもの想像力を引き出します。手作りの醍醐味を、家族全員で味わってください」
家族のストーリーを感じられる手作り写真絵本
子どもの表情やポーズをデジカメで撮影して、絵本作りの素材に
もし、自分が絵本の主人公になって、想像の世界で冒険ができたら……。写真絵本は、そんな子どもの夢をかなえてくれます。用意する道具はデジタルカメラ、はさみ、のりだけ。工作が苦手な人も簡単に作れます。自由な発想で、写真のなかの冒険を楽しみましょう。
子どもの写真を使って絵本を作ってみましょう。工作が苦手な人も写真のコラージュ(平面にほかの紙片を貼り付けること)なら、絵を描いて作るより簡単で楽しく製作できます。異なる画像を組み合わせたり、人物の大きさを変えたりすると、表現の幅が広がり不思議な世界観が生まれます。ここでは玩具と写真画像を組み合わせた写真絵本を作ってみました。ふだん子どもがあそんでいる玩具に子どもの写真を合体させて、デジタルカメラで撮影。いろいろなオブジェを背景に何パターンか撮影し、プリントしたものをリボンとじします。
ストーリーは、子どもがお気に入りの玩具のなかを冒険するお話です。文章は広告チラシや新聞から切り抜いた文字を組み合わせて構成しました。親子で楽しみながら製作しましょう。子どものいろいろな表情やポーズをデジカメで撮影して、絵本作りの素材にします。
写真絵本の作り方
用意するもの
写真、のり、はさみ、デジタルカメラ。ほか製本用台紙とリボン、玩具類。
作り方
1、子どもが写っている写真を多めに用意しましょう。人物に沿ってはさみで切り抜きます。
2、いろいろなポーズを切り抜きます。すわっていたり走っていたりと、動きのあるポーズのほうがおもしろい作品になります。
3、子どもがふだんあそんでいる玩具を用意し、そこに切り抜いた子どもの写真を置いて合体させます。
4、玩具に子どもの写真を組み合わせたら、デジタルカメラで撮影します。写真が立体的に見えるように撮影しましょう。
5、写真の完成。ここでは子どもが玩具の汽車でどんぐりを運んでいるシーンを表現しています。
6、完成した写真の裏にのりを付けて、製本用の型紙に貼り付けます。空気を抜いて丁寧に貼りましょう。
7、1~6の作業で別なパターンも作ります。できあがった作品を重ねてリボンでとじていきます。
8、最後に表紙を作り、リボンでとじればできあがり。ページ数や文章など自由な発想で作りましょう。
完成!写真と玩具を組み合わせると、まるで子どもが玩具の世界を探検しているようなファンタスティックな世界が広がります。ストーリーは、なるべく子どもと一緒に考えましょう。
手作り絵本の製本の仕方
作品をリボンでしばって一冊にまとめる「リボンとじ」は、だれにでも簡単にできる製本法のひとつです。
「リボンとじ」のやり方
用意するもの
台紙(型紙)、穴開けパンチ、リボン、カラーテープ。
作り方
1、厚手の台紙を用意し、リボンでとじる側の端に、写真のようにカラーテープを巻いて補強します。
2、カラーテープの上からリボンを通す穴をパンチで開けます。絵本のページ数分、同じ場所に穴を開けます。
3、台紙の完成品。作品に合わせて大きさは決めてください。
4、作品を各ページごとに3の台紙に貼って、重ねます。作品を貼るときは、リボン部分(穴)にかからないよう貼りましょう。
5、重ねた作品の穴にリボンやひもを通してしばり、一冊にまとめれば、手作り絵本ができあがります。
指導してくださった先生
中川素子さん
1942年生まれ。文教大学名誉教授。絵本、ブックアートを専門に研究。著書と絵本に『絵本は小さな美術館』(平凡社)、『アウスラさんのみつあみ道』(石風社)など。
中川 淳さん
1977年生まれ。絵本作家、イラストレーター。常に子どもが楽しめる絵の技法を用いて作品を製作。著書に『ぼくとギル』(ネット武蔵野)、『ドングリトプスとマックロサウルス──コラージュとフロッタージュのおはなし』(水声社)。
モデル/淳さんの奥様葉子さんといつき君2歳。
取材・構成/松浦裕子 撮影/茶山 浩