正しい知識とホームケアが大切! インフルエンザ&冬の病気

寒くなってくるこれからの季節は、お子さんの体調管理に気をつかいますよね。予防のために大切なことやホームケアのポイントについて、小児科の先生に伺いました。もしものときのために、正しい知識を身につけておきましょう!

病気に打ち勝つ免疫力をつけましょう

さまざまな感染症のうち、薬で病気そのものを治せるのはごく一部に限られ、多くの場合は薬でつらい症状をやわらげながら体の回復を待つことになります。そのため、ウイルスや細菌に負けないよう、日頃から体の免疫力を高めておくことが大切です。寒いからといって部屋の中でばかり過ごしていると、食欲がなくなったり睡眠のリズムが崩れたりして免疫力が下がりやすくなるため、元気なときはしっかり外遊びをして日中に体を動かしましょう。

 

大人がウイルスを持ち込まない配慮を

免疫力を高めるとともに、ウイルスや細菌に感染するリスクを減らすことも重要です。子どもと人ごみに長時間出かけることはなるべく避け、外出する機会が多い大人が家の中にウイルスや細菌を持ち込むことがないよう、おうちの方も手洗い・うがいの徹底を。年末年始はイベントも多いですが、おうちの方の予定に合わせて連日のように出かけるのではなく、子どもがいつも通りのペースで食事・外遊び・お昼寝などができるように配慮できるといいですね。

感染症予防のために心がけたいこと

十分な栄養と睡眠

日頃から栄養バランスのとれた食事を心がけ、夜ふかしはせずに十分な睡眠時間を確保できるようにしましょう。よく食べてよく眠ることで免疫力を高め、ウイルスや細菌に負けない体づくりをしておくことが大切です。

生活リズムを整える

旅行や帰省など、年末年始は外出の機会も増えますが、早寝早起きといった基本的な生活リズムはなるべく崩さないように心がけて。寒くても日中に外遊びやお散歩で体を動かす時間をつくると、夜は眠りにつきやすくなります。

手洗い・うがい

手洗いはおうちの方が手を添えて、指の間まで石けんでよく洗い、水でしっかり流します。うがいはまだ難しければ無理にさせる必要はありませんが、口に水を含んで「くちゅくちゅぺっ」とする練習から始めましょう。

寒すぎず暑すぎない室内環境と衣服

子どもは大人よりも平熱が高いので、動きにくくなるほどの厚着をさせる必要はありません。就寝時も汗をかかない程度の薄着を心がけて。暖房を使うときはこまめに換気し、必要に応じて洗濯物を室内に干すなど適度な加湿を。

人ごみをなるべく避ける

初詣などで人ごみに出かけると病気に感染するリスクも高くなります。マスクは咳などによる飛沫感染をある程度は防ぐことができますが、幼い子どもが長時間着用するのは難しいので、必要のない外出はできるだけ避けましょう。

 

これだけは知っておきたい!インフルエンザ

子供のインフルエンザ、どんな病気?

症状はさまざまで高熱が出ないことも

発症時には寒気と高熱、全身のだるさ、食欲低下、頭痛、手足の筋肉痛、腰などの関節の痛みなどが見られ、子どもの場合は高熱でも元気なことがあります。また、高熱が出ないこともあります。腹痛・おう吐・下痢を伴ったり、熱が出て数日後に咳や鼻水が出始めたりするケースも。中耳炎や肺炎、脳炎・脳症などを起こすこともあり、注意が必要です。

 

どんな種類があるの?

ウイルスには複数の型が

A・B・Cの3つの型がありますが、主に流行するのはA型とB型です。A型では一旦下がった熱が再び上がる傾向が見られ、B型ではおう吐・下痢を伴うことも多いですが、症状には個人差があります。A型とB型にはさらにそれぞれ複数の型があるため、一度かかったり予防接種を受けたりしても、免疫がない型には感染する可能性があります。

 

注意すべきことは?

いつもと違う言動がないかをチェック

はじめは熱や咳といった症状のみでも、急にけいれんなどが始まるケースもあるため、いつもと違う言動がないかを注意深く見守ることが大切です。下に挙げたような行動が続く場合は脳症の疑いがあるのですぐに受診を。発症後2~3日高熱がある場合は異常行動が起きるおそれがあるので、子どもをひとりにしないようにしましょう。

こんな言動が見られたらすぐに受診を!

●両親がわからない、いない人がいると言う
●自分の手をかむなど、 食べ物と食べ物でないものの区別がつかない
●意味不明な言葉を発する、ろれつがまわらない

 

ワクチン接種のポイントは?

子どもだけでなく、家族全員で接種を

予防接種をしていてもインフルエンザにかかることはありますが、脳症などを起こすリスクを減らす効果が期待できます。子どもが集団生活をしていなくても、大人がウイルスを家の中に持ち込むのを防ぐため、祖父母など子どもの世話をお願いする人も含めた家族全員での接種をおすすめします。

子どもは2回接種なので早めに予定を組む

ワクチンは原則として子どもは2回接種(大人は1回)で、1か月程度の間隔をあけて受けるのが望ましいといえます。昨年接種していても、今年はまた新たに接種する必要があります。本格的な流行の前に免疫をつけるため、11月中には2回目の接種を終えられるように予定を立てましょう。重度の卵アレルギーの場合は、かかりつけ医に相談を。

 

 

インフルエンザにかかってしまったら?

発熱だけなら家で少し様子を見て

発熱から半日程度では正確な検査結果は出にくいので、熱が出ても意識がはっきりしていれば家で一日様子を見てから(夜間なら翌日に)受診を。受診時は、症状の経過のほかに「水分や食事はとれるか」「家族や周囲にインフルエンザにかかった人がいるか」を伝えましょう。

タミフルは発症から48時間以内に飲み始めれば発熱期間を短くする効果が期待できますが、飲まずに子ども自身の免疫力で治すという選択肢もあるので、医師とよく相談を。すでにおう吐・下痢がある場合は、タミフルはおすすめしません。

けいれん・意識障害はすぐに受診を

けいれん(特に手足の動きに左右で差がある、15分以上続く、1日に何回も起きる場合)、意識障害がある(意識がない、おかしな言動が見られる)ときは、インフルエンザ脳症のおそれがあるため、すぐに病院へ。顔色が悪く元気がなくなった、何度も吐く、咳で夜も眠れないなど、「いつもと違う」と思う症状が見られるときも早めの受診が必要です。

 

子供のインフルエンザ、ホームケアの方法は?

熱が上がりきったら薄着&水分補給を

食事、ミルクがとれないときは経口補水液を少しずつ飲ませ、十分な水分補給を。熱の出始めで寒がっているときは厚着にしてもよいですが、暑がっているときは薄着にして布団はかけすぎず、快適に過ごせる室温に調整しましょう。子どもが嫌がらなければ、冷たいタオルなどで頭やわきの下、足のつけ根を冷やしてあげてもよいでしょう。

入浴は、熱があっても元気な場合は疲れない程度ならかまいませんが、元気がない場合は無理をさせずに、汗をかいたら濡れタオルで体を拭く程度でよいでしょう。

 

感染拡大を防ぐには?

解熱後も3日間は外出を控えて

インフルエンザにかかった場合、保育園・幼稚園では発症した日を0日と数え、5日を経過し、かつ解熱後3日が経過するまでは出席停止となります。熱が下がってもしばらくは体内にウイルスが残っていて、ほかの人にうつしてしまうおそれがあるため、この期間は外出を控えてください。

おうちの方が看病するときはできたらマスクをして、お世話のあとには手洗い・うがいの徹底を。コップなどの共用は避けましょう。

 

おじいちゃん・おばあちゃんにうつさないように注意!

インフルエンザは子どもよりも高齢の人のほうが重症化しやすいので、おじいちゃん、おばあちゃんにもうつさないように注意が必要です。日頃から子どもと過ごす機会がある場合は、予防接種を受けておいてもらいましょう。解熱後も3日間は人にうつす可能性があることを考慮し、年末年始に帰省を予定していた場合も無理をしないことが大切です。

教えて、先生!Q&A

Q 夜中に39度の発熱。救急を受診すべき?

発熱後すぐのタイミングでは、インフルエンザの検査を受けても正確な結果が出ないことがあります。夜間に病院で長時間待つことは体への負担も大きいので、高熱でも水分がとれていて意識もはっきりしていれば、翌日の受診で問題ありません。ただし、けいれんや意識障害がある、顔面蒼白でぐったりしている場合はすぐ受診を。

 

Q 家にある解熱剤を使っても大丈夫?

かかりつけ医で処方されたアセトアミノフェンの薬(カロナール、コカール、アンヒバ、アルピニーなど)なら大丈夫ですが、ポンタールやボルタレンは脳症のリスクを高めてしまうおそれがあるので使用は控えましょう。解熱剤は38・5度以上でつらそうなときに使い、4~5時間以上の間隔で1日3回くらいまでの使用を目安に。

 

Q タミフルは異常行動のおそれがあると聞き心配です。

タミフルを飲む・飲まないにかかわらず、インフルエンザ発症後2~3日は異常行動のおそれがあり、子どもの容態をこまめにチェックする必要があります。タミフルは発熱期間を短くする効果が期待できますが、インフルエンザを治すために必須の薬ではありません。飲まないという選択肢もあるので、心配な場合は医師と相談を。

 

Q 食事はどんなものを食べさせればいい?

おかゆ、うどん、パンがゆ、野菜スープ、バナナ、豆腐などの消化のよいものや、ゼリーやプリンなど本人が食べられるものを与えましょう。それでも食べられない場合は経口補水液をこまめに飲ませましょう。咳が出るときは、のどごしのよいものを選び、下痢の場合はアイスクリームなど冷たすぎるものは控えたほうがよいでしょう。

Q 粉薬の上手な飲ませ方は?

薬局で売られている粉薬用のゼリーと一緒にスプーンで飲ませたり、ヨーグルト(イチゴ味など)、チョコアイス、ココアなど、甘みのあるものに混ぜたりするとよいでしょう。食後は満腹だと飲むのを嫌がることもあるので、食前に飲ませてもかまいません。食事がとれない場合は無理に食べさせず、薬だけ飲ませるのでも大丈夫です。

 

判断に迷ったときのお役立ち情報

 

・小児救急電話相談#8000

夜間や休日に、小児科医・看護師などに症状に応じた対処法を相談できます(受け付け時間は都道府県ごとに異なるため、事前に厚生労働省のホームページ等で確認を)。

・こどもの救急ホームページ http://kodomo-qq.jp/
気になる症状を選択すると、「救急車で病院に行く」「おうちで様子をみる」といった対処法が表示されます。

 

こんな症状にも注意!秋〜冬にかかりやすい病気

RSウイルス感染症(細気管支炎・気管支炎)

どんな病気?

秋口から流行が見られ、鼻水や軽い咳などの症状から始まりますが、1~2日のうちに咳がひどくなってゼーゼーと呼吸が苦しくなります。RSウイルスに効く特効薬はないので、咳などの症状をやわらげる治療が中心となりますが、幼い子どもがかかると呼吸困難を起こしやすく入院が必要になることもあります。

気をつけること

部屋を加湿し、抱っこするか座椅子のように寝かせて上体を起こしましょう。鼻水は吸い取り、こまめな水分補給を忘れずに。症状を注意深く見守り、呼吸が苦しそうな場合(息をするときに鼻の穴が広がる、胸がペコペコへこむなど)や、ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸の音が強い場合は早めの受診を。

 

 

ウイルス性胃腸炎

どんな病気?

冬に流行する胃腸炎では、ノロウイルスやロタウイルスによるものが多くみられます。おう吐から始まり、続いて水のような下痢、場合によっては発熱を伴うことも。おう吐は1~2日くらいで治まりますが、下痢は1週間ほど続くことが多く、1日に何回もおう吐・下痢が起こるときは脱水症状に注意が必要です。

気をつけること

脱水症状が起こりやすいので、経口補水液による水分補給と症状に合わせた消化のよい食事を与えることが重要になります。おしっこの量が減る、ぐったりする、唇や皮膚が乾く、体重が減るなどの症状が見られるときは、早めに病院へ。家庭でのおう吐や下痢の回数、飲んだ水分の量をメモしておくと役立ちます。

 

溶連菌感染症

溶連菌という細菌による感染症で、のどの痛み、熱、発疹などの症状に加え、舌がイチゴのように赤くなることが多いです。のどの痛みや熱は1~2日で治まりますが、腎炎やリウマチ熱の合併を防ぐために、10日間くらい抗菌薬(抗生物質)を服用する必要があります。抗菌薬を飲み始めて24時間以上たち、発熱が治まれば登園は可能です。

 

アデノウイルス感染症

年間を通じて見られる感染症で、39~40度の高熱、のどの腫れと痛み、目の充血や目やに、おう吐・下痢などのさまざまな症状が見られます。抗菌薬は効かず、発熱時や下痢を伴うときは十分な水分補給が必要です。症状が治まってもしばらくは唾液や目やに、便からウイルスが排出されるので、食器やタオルの共用は避けて。

 

ホームケアのポイント

咳が出るとき

咳き込みがひどく、食事が飲みこめない、または吐いてしまうときは、のどごしのよい食事を与えます。それでも食べられないなら、飲みものを少しずつ何度も飲ませましょう。

ゼーゼーやケンケンの咳により、苦しそうで、水分もとれず、横になって眠れないときは救急病院に電話で相談を。

おう吐・下痢のとき

塩分と糖分を含む、経口補水液や子ども用のイオン飲料を少しずつ飲ませます(水やお茶では、おう吐・下痢で失われる電解質を補うことができないので注意)。吐き気が強いときに水分を取らせてもすぐに吐いてしまうので、しばらく様子を見てから小さじ1杯ずつを5分おきに飲ませ、吐かなければ少しずつ量を増やしましょう。食事は、生もの、刺激の強いもの、油分の多いもの、糖分の多すぎるものは避けます。

吐いたものや便の処理をするときは使い捨てのマスクと手袋を着用し、吐いた場所は50倍に薄めた塩素系消毒剤(台所用漂白剤)で消毒します。胃腸炎のウイルスにはアルコール消毒は効かないため、処置後は石けんで念入りに手洗いを。

 

教えてくれたのは小口薫 先生

かえでこどもクリニック(東京都三鷹市)院長。日本小児科学会、日本小児感染症学会などに所属。男の子のママでもある。

イラスト/ハヤシフミカ 構成/童夢

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