自分はできていないのに、人の世話を焼こうとする小学1年生の娘
精神発達遅滞の診断を受けている小学1年生の娘です。相手が嫌がっていても強引に「やってあげる」とできもしないのに手伝おうとします。家でも弟がブロックを組み立て始めたところ「やってあげる」と、弟が嫌がっているのに無理矢理取り上げ泣かせてしまい、私が仲裁に入り注意すると本人も大泣きします。他の子とのトラブルも絶えず、言い聞かせてもやめません。他の事業所でもしていないか聞いてみたら「〇〇ちゃんは、下の子の面倒を見るのが好きで、よく注意したりお世話をしてくれますよ」と言われてしまい、真意を伝えてくれているのかどうかわからず、どうしたらよいか悩んでいます。
まず、大人が声かけで介入しましょう。根気よく続ければ本人に気づきが生まれます
人の世話を焼く事が良いことだと思っている小学校1年生の女の子のケースです。診断は精神発達遅滞なので、特にこだわりが強いわけでも、凸凹が見られるわけではありません。全体的にゆっくり成長するお子さんです。
いろいろ理解できない事が多く、学校でも小さなトラブルが絶えないようです。精神発達遅滞のお子さんの中には少なからずこのようなお子さんがいます。彼女は大人の真似をしているだけです。ちょうど2、3歳ぐらいの子がママの真似をし始めるのと同じ事です。
特に下にきょうだいがいる場合、下の子の「お世話」をしている場面をよく見るのでその真似をします。
そこで親も「お手伝いしてくれるのね」と声掛けしてほめるのでそれをよいことだと思い込むのです。確かに良いことではあるのですが、問題は場面が適切か、そうでないかを本人が理解できていない事です。
なんのために手伝いが必要なのか?お世話をする理由は説明しても言語理解も遅いため理解できないのです。
適切な声かけを重ねることで「今、自分がやらなくてはいけない事」を理解できるように
彼女は手を出すことが良いことだと思っているので、自分のことは出来ていないのに人の世話を焼こうとします。世話を焼かれる子にとっては「余計なお世話」なのですが。
お母さんはお子さんの対応についても勉強熱心な方です。わが子が他の子に「余計なお世話」をすることに悩んでいた矢先に他の事業所の指導員に「下の子の面倒を見るのが好きで…」と言われ、感のいいお母さんは「大丈夫でしょうか?」とうちに相談に来たのです。
Luceで他のお子さんとのやり取りの中でもそういった場面が見られます。「お手伝いしてあげる~」「やってあげる~」と自分の用意ができていないのに、他のお子さんが準備しているところに手を出し始めます。
その場合は大人が介入し、相手のお子さんが嫌がっている場合には「やめてって言っていいよ」と相手のお子さんに声掛けをします。なかなか言えない子もいるので、その場合は「先生が言う?」と聞き、言って欲しいという場合には、本人に「用意のお手伝いは先生(大人)がしますね。〇ちゃんは自分の用意をします」と伝えて「今、自分のやらなくてはいけない事」に注目するように促し、自分の事をやり始めたとき「〇〇の用意をしているね」などお子さんがやっている行動を言語化します
これを数回続けると、大人が「次は何をするんだった?」と、ひとこと声をかけるだけで自分の事に取り組む事ができるようになります。
そして彼女のいいところは「余計なお世話をやく」ことではなく、作業的な事が好きなところです。利用している事業所には、その事業所の活動中で自信をつけさせるような声掛けしてもらうようにと伝えていただくように保護者に話しました。
記事監修
発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(健康ジャーナル社)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。
イラスト/本田 亮