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ヘッドホン難聴で自覚症状が出るのは10年後、15年後…
ヘッドホン難聴とはヘッドホンやイヤホンを使い、大きな音量で音楽などを聞き続けることにより、音を伝える役割をする内耳の有毛細胞が徐々に壊れて起こる難聴です。
少しずつ有毛細胞の障害が進行するので、難聴として症状が出現するのは5~10年後で、早期には気づきにくく本人が難聴に気づくのは10年後、15年後…とも言われています。
2015年、WHO(世界保健機関)では、世界の11億人もの若い世代(12~35歳)が、スマホなどで大きな音で音楽を聴き続けたりすることにより、難聴のリスクにさらされていると注意を促しています。
子どもがどのぐらいの音量で、音楽などを聞いているのか確かめて
WHOでは、80dB(デシベル)で40時間以上/週、98dBで75分以上/週、音楽などをヘッドホンで聞くと難聴の危険性があるとしています。ちなみに街頭の騒音が85dBぐらい。ドライヤーの音は100dB、救急車や消防車のサイレンは120dBです。
ただしヘッドホンをしていると、子どもが大きな音で音楽などを聞いていてもママやパパは気づかないこともあるでしょう。そのため時々、どのぐらいの音量で子どもが音楽などを聞いているのかチェックしてください。
イヤホンにも注意!大きな音で長時間・長期間聞くことで発症リスクが高まります
ヘッドホン難聴は、大きな音で音楽などを長時間・長期間に渡り聞き続けることで発症します。またヘッドホンだけでなく、イヤホンでも発症します。片耳だけイヤホンをしていても同様です。
洗濯機、掃除機、生活音レベルならば問題なし
ヘッドホンやイヤホンの適度な音量は60dBぐらいです。洗濯機の音が70dB、掃除機の音が75dBぐらいで、こうした一般的な生活音のレベルならば難聴になるリスクはありません。
しかし小さな音だからといって、小学生がヘッドホンやイヤホンをして、何時間も音楽を聞いたり、オンラインゲームなどをしたりするのは感心できません。子どもが一人でヘッドホンやイヤホンをして、長時間音楽やゲームに没頭しているということは、それだけ家族とコミュニケーションをとっていないことにもなります。耳の健康のためにも、心の健康のためにも、ヘッドホンやイヤホンの1日の使用時間は1時間以内にしましょう。
早ければ10~20代で難聴の症状が出始めることも
症状が進むと、高音域が聞き取りづらくなる
ヘッドホン難聴は前述の通り、すぐに自覚症状は出ません。10年後、15年後…ぐらいに、初期症状としては耳が詰まった感じがしたり、耳鳴りがしたりします。
また症状が進むと高音域の音が聞き取りづらくなったり、人と会話をしても聞き返しが多くなったりして自覚症状が出始めます。しかし難聴は有効な治療法がなく、症状は進行します。小学生でヘッドホン難聴になるような生活習慣がある子は、早ければ10~20代に自覚症状が出始めます。そのためヘッドホン難聴にさせない、生活習慣が大切です。
また、難聴ではありませんが、外でヘッドホンやイヤホンをして音楽などを聞いていると注意力が散漫になったり、周囲の音に気づかず事故にあったりすることもあります。ヘッドホンやイヤホンの正しい使い方についても親子で話し合っておきましょう。
記事監修
仲野敦子先生
千葉大学医学部卒業後、千葉大学などで研修。現在に至る。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会専門医、臨床遺伝専門医。
取材・構成/麻生珠恵