強いかゆみに悩まされるアトピー性皮膚炎。肌の乾燥も発症にかかわっているので、日頃から保湿ケアを心がけましょう。治療には、おもにステロイド軟膏などが使われます。早く治すためには、医師の指示に従って正しく薬を使うことも大切です。
子供のアトピー性皮膚炎とは、どんな症状?
アトピー性皮膚炎のおもな症状は、かゆみのある湿疹。よくなったり悪くなったりしながら、症状が長く続く(6カ月以上が目安。乳児の場合は2カ月以上が目安)ことが特徴です。
湿疹ができやすい部位
湿疹ができやすいのは、顔や首、肘の内側やひざの裏など。乳児の場合、顔から湿疹が出はじめ、耳たぶの周りや首から、体や手足へと広がっていくことが多いようです。体や手足の湿疹は、左右対称に現れることがほとんどです。アトピー性皮膚炎の発症には、肌が乾燥しやすい体質や環境もかかわっていると考えられています。
治し方や薬は?
肌のかさつきや湿疹、かゆみが見られるときは、まず市販の保湿剤などで十分な保湿をします。同時に、体を洗う石けんや肌に触れる衣類選びにも気を配り、肌を刺激しないことも心がけます。こうしてしばらく様子を見ても症状が改善しない場合は、病院で診察を受けましょう。
治療の中心は、ステロイド軟膏などの塗り薬
アトピー性皮膚炎の場合、病院ではおもに塗り薬が処方されます。塗り薬には、肌のうるおいを保つ保湿剤、炎症やかゆみを抑えるステロイド軟膏、免疫抑制薬(2歳以上に使用)があります。症状に応じて、かゆみを抑えるための飲み薬(抗アレルギー薬)も出されることがあります。
ステロイド軟膏の塗り方
薬の塗り方や用量は、必ず医師の指示に従います。保湿剤とステロイド軟膏の両方を使う場合、保湿剤は肌全体に、ステロイド軟膏は湿疹のある部位だけに塗ります。保湿剤とステロイド軟膏のどちらを先に塗るかは、医師の考えによって異なります。
肌をかきこわしてしまった場合、傷口が化膿している(=細菌などに感染している)ときはステロイド軟膏を塗らないようにします。ステロイドには免疫抑制効果があるため、細菌などの感染による症状が治りにくくなってしまうからです。
アトピー性皮膚炎とステロイド軟膏の付き合い方
ステロイド軟膏を処方されたときは、1回に塗る量を医師に確認しておくとよいでしょう。目安量の基本は、チューブに入った薬なら、「おとなの人さし指の第一関節より先までの長さ」の量を、「おとなの手のひらふたつ分」の患部に塗ることです。
治療のポイントは、早い段階で炎症をしっかり治し、肌のバリア機能を回復させること。塗り薬の量が不十分だと、症状がすぐにぶり返してしまいます。少しよくなってはまた悪化する、という状態をくり返すと、治療期間が長くなるため、結果的に薬の使用量も多くなってしまいます。自己判断で薬を減らしたりやめたりせず、医師の指示に従って使うのが、もっとも安全で効率のよい方法です。
塗り薬で全身的な副作用の心配はほとんどない
ステロイドというと副作用を心配する人が少なくありません。でも、皮膚から吸収される塗り薬の場合、ホルモンの異常や全身感染症、高血圧といった深刻な副作用が現れることは、まずありません。塗り薬の副作用として考えられるのは、皮膚が細菌などに感染しやすくなる、肌が委縮して薄くなる、肌に赤みが出る、など。医師は皮膚の状態を見ながら薬の強さや種類を選ぶので、指示どおりに薬を使えばこうした副作用も最小限に抑えることができます。
予防には「保湿」と「プロアクティブ療法」が有効
正しい治療で肌が健康な状態に戻れば、保湿をしっかりすることで悪化を防げることもあります。また、最近は「悪化してから治す」のではなく、「悪化を予防する」ための「プロアクティブ療法」という治療法も広まってきました。
「プロアクティブ療法」では、治療して症状がおさまった後も、週に数回、湿疹が出やすい部分に少量のステロイド軟膏を塗り続けます。肌の状態に合わせて、塗る回数や量は減らしていくことができます。
アトピー性皮膚炎は、よくなったり悪化したりをくり返す病気ですが、予防的に薬を塗っておくことで悪化しにくくなったり、悪化しても治りやすくなったりする効果があります。数カ月単位で見た場合、悪化したときだけ薬を塗る方法よりも薬の使用量が少なくなることもわかっています。
入浴は低刺激の石けん&ぬるめのお湯で
入浴の際は、肌への刺激を避けることと、温めすぎに注意します。石けん類は、香料などの添加物が多いものを避けるようにします。「敏感肌用」「アトピー用」など、低刺激のものを選びましょう。体を洗うときは、石けんを手のひらで十分に泡立て、肌をなでるように洗います。体を温めすぎるとかゆみが強くなるので、浴槽やシャワーのお湯の温度は、ややぬるめにしておきましょう。お風呂上りは、肌をこすらないようにやわらかいタオルで水気をとり、すぐに保湿剤や薬を塗りましょう。
衣類などによる肌への刺激にも注意が必要
入浴時以外も、肌への刺激を避けることを心がけます。肌着は綿のものを選び、肌に触れるとチクチクするニットなども避けましょう。髪が長い場合は、顔や首に触れないようにまとめておきます。洗濯用の洗剤も、香料などの添加物が多いものは避けたほうが安心。肌への刺激が強い合成界面活性剤を使用していない、石けんベースの洗剤などを使ってみてもよいでしょう。
ダニやホコリ、ペットの毛などはアレルギー反応を引き起こす原因となりやすいので、室内の掃除はこまめに。暑さや乾燥はかゆみを悪化させるので、エアコンや加湿器などを使って室温や湿度の調整も心がけましょう。
記事監修
総合母子保健センター 愛育クリニック 小児科・母子保健科部長
小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。
取材・文/野口久美子