「ちちんぷいぷい」ってどんな意味?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

「ちちんぷいぷい」ってどういう意味?

子どもが頭をぶつけたり転んだりしたとき、「ちちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んで行け!」と言いませんか?

ただ最近は、「ちちんぷいぷい」は言わずに、「痛いの痛いの飛んで行け」とだけ言うのかもしれませんが。

「ちちんぷいぷい」は、死語とは言えないまでも、最近はあまり聞かなくなったことばのようです。でも、関西にお住まいのかたなら、昨年までこのことばをタイトルにした生放送の情報番組があったことをご記憶かもしれませんね。

この「ちちんぷいぷい」って、いったいどういう意味だと思いますか?

国語辞典を引くと、「ちちんぷいぷい」は、「ちちんぷいぷい御世(ごよ)の御宝(おたから)」の略だとしているものがあります。そして意味は、

 「幼児が転んだり、ぶつけたりして体を痛めたときに、痛む所をさすりながら、すかしなだめること。また、そのときに唱えることば。手品などを子どもに見せるときに呪文のように唱える場合にもいう」(『日本国語大辞典』)

と説明されています。

江戸時代から使われていた「ちちんぷいぷい」は、昔話にも登場

この「ちちんぷいぷい」は江戸時代から使われていたのですが、語源はよくわかっていません。

一説に、「智仁武勇は御世の御宝」の「智仁武勇(ちじんぶゆう)」が「ちちんぷいぷい」になったと言われています。そして、子どものころ泣き虫だった徳川三代将軍家光を、乳母の春日局(かすがのつぼね)があやしたときに唱えたことばだったというのです。真偽のほどはわかりません。

「智仁武勇」は、「智」「仁」と「武勇」ではなく「勇」なら、儒教で「三達徳(さんたっとく)」と呼ばれるもっとも基本的な三つの徳のことです。

「ちちんぷいぷい」は、昔話にも使われています。「屁ひり爺」「竹切り爺」と呼ばれる話に出てきます。爺さまが「ちちんぷいぷい」と唱えて、なんとおならをするのです。

子どもにピッタリな呪文としての愉快な響き

いずれにしても、何かをしてみせるときの呪文として愉快な響きがあるので、子どもに使うには最適なことばなのかもしれません。

そして、古くからこの語と結びつけて使われてきた「痛いの痛いの飛んで行け」は、実際に痛みを緩和させる効果のあることが医学的にも証明されているようです。

このまま死語にするのは惜しいので、皆さんもぜひ使ってみてください。

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)が好評発売中。

 

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