ママ友同士でLINEグループ。その際、注意すべき点は?【保育経験41年・元園長先生の相談室10】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

 

来年、子どもが入園する予定の母親です。最近は、入園すると、ママ友同士でLINEのグループをつくってお付き合いをすると聞きました。その際、注意すべき点を教えてください。(秋田県 T・Yさん)

当園では園内のLINEとメールのやりとりは原則禁止です

当園ではクラス内や役員間のLINEのグループづくりや、メールのやりとりは原則禁止しています。また、保護者の方の携帯電話番号の通知もしていません。たとえそれが善意に基づいて立ち上がったLINEグループであったとしても、入りたくない人がいる可能性がありますし、文字だけのやりとりにおいては、双方の気持ちのすれ違いなどが起きて問題が生じる恐れがあるからです。

「自分の思いは互いに顔を合わせて伝えましょう」というのが当園の方針です。もし、どうしても速やかに伝えなければならないことがある場合は、「連絡事項のみを伝えて、その理由や詳細は、直接会ったときに伝えるようにしましょう」と保護者の皆さんにお願いしています。このようなルールを実施している園は、近年増えていると思いますので、入園前の説明会などで確認しておくといいと思います。

本当の気持ちは人と人が直接会って話すことで伝わります

そうは言っても、近年のスマートフォンの普及や利用状況を考えると、園におけるお母さん同士のLINEやメールのやりとりを皆無にすることはなかなか難しいでしょう。

そんなとき、まず頭に留めておいていただきたいのは、「文字だけでは、本当の気持ちは伝わらない」ということです。たとえば「よかったね」というひと言も、本当によかったと感激して言っているのか、さほど感動せず言っているのかは、文字だけではわかりません。また、ひとつの言葉に対しての印象や理解している意味合いも、各人で微妙に異なります。

さらにLINEの場合、読んだ後すぐに返事を出すことが多いため、その場の印象で、あまり深く理解せず返事を書いてしまいがち。熟考せず返事を出してしまい、あとから後悔することもあり得ます。いったん書いたものは消せないので、その意味からもLINEやメールでのやりとりは連絡事項のみと心がけましょう。

もし、お母さん同士のLINEグループに入った場合には、常に自分の立場を伝えることが肝心です。たとえば既読にしても、返信は「お返事は詳しく致しませんが、きちんと拝見しています」というように、メッセージに対する感想や意見は述べずに、自分の立場を伝えるだけに留めましょう。何度も言うようですが、自分の思いは直接会って伝えるのがいちばんです。速やかに思いを伝えられなくても、そのほうが誤解もなく、きちんと伝わります。

園のお母さん同士のお付き合いというのは、有志が集まってできたものではなく、お子さんの入園がきっかけで始まったものです。その自覚があれば、冷静なお付き合いができるのではないでしょうか。

社会生活を営むうえで大事なのは、自分の気持ちを伝えるだけでなく、相手の気持ちも受け入れて、人との相互関係を築くことです。その重要性をお子さんに伝えるためにも、まずお母さん自身からお付き合いのお手本を見せてほしいと願います。

 

回答していただいたのは…

田苗孝子|幼稚園元園長

宝仙学園幼稚園元園長。2007年から2019年3月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』

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