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算数は生きていく力を養う勉強です
「算数、嫌い」という子どもは多いよう。「なんで算数やらないといけないの?」とお子さんに聞かれた場合、どう答えたらいいでしょう。
数字は物事を具体的に把握するために必要です。『〇君は足が速いね』『△君も速いよ』と言ってもどちらが速いかわかりませんが、『〇君は50mを8秒で走るよ』『△君は7秒6だよ』と数字で表すことで明確になります。
物事を明確に把握し論理的に考える習慣は、生きていく上で起きる問題に筋道を立てて解決していくことにつながると思います。
教科書の算数は、理論を学んでから問題を解くという構成。これを佐藤ママ流に考えると…
最近の算数はどうなっているのか知りたくて、小学校6学年分の算数の教科書を読んでみたのですが、その難しさにびっくりしました。難しさの原因は、単元ごとにまず算数の理論(概念)を説明してその後で実際の問題を解くという内容になっているからとわかりました。
子どもにとっては考え方から入るのはかえって難しいのではないかと思います。まず、問題を解いてじゅうぶんその単元の問題に慣れてかた、たし算なら『たし算とはこういうしくみになっているんですよ』と理論を教えたほうが子どもにはわかりやすいでしょうね。
ですから、私は、理論は置いておいて、まず問題に慣れるのを先にするといいと考えています。
「1けた+1けたのたし算」なら保護者が簡単に教えることができます
ではどうしたら、子どもに算数力をつけることができるでしょうか。学年が上がるほど算数を家庭で教えることは難しそう。
これまでに何度も『佐藤さんは元教師だから子どもに教えられるんですよ』とか『私は算数が特に苦手で家で教えられません』と言われてきましたが、私も算数を教えられるのはせいぜい小学校3年生まで。
4年以上になると難度が上がり教えることはできません。中学受験する場合はなおさら、塾には塾独自の解き方があるので、それ以外の方法で教えると子どもが混乱しますから教えることができません。
では保護者がするべき算数の学習サポートとは?
1年生で習う『1けた+1けたのたし算』ならだれでもサポートできると思います。算数の基本は『1けた+1けたのたし算』です。
よく、『うちの子はひき算が苦手です』というお母さんがいます。それはたし算が完璧にできていないからです。たとえば5+8=13というたし算が反射的にできるなら、頭の中で、5、8、13という数字が自由に泳ぐ状態になるので13-8という問題も抵抗なく5と答えを出せるようになります。ちなみにわり算が苦手なのはかけ算が完璧にできていないからです。
「1けた+1けた」の足し算に習熟することで、数字が頭の中で泳ぎだす
中学受験の文章題を解くときも、たとえば時速7㎞と時速8㎞という条件が出てきた場合、頭の中に15という数字が思い浮かんで、7、8、15という数字が頭に泳ぎ出すことが正解へのヒントになることがあります。
数字が脳内で泳ぐことが算数には大事。『1けた+1けたのたし算』を完璧に体得できていればそれが可能になります。1けた+1けたのたし算は算数の基礎中の基礎です。
1けた+1けたのたし算は全部で100題。
では具体的にどのように習熟したらいいのでしょう。私がおすすめする「計算プリント」をご紹介します。
我が家はオリジナル計算プリントを作成して繰り返して練習していました。やり方は以下です。
<プリントづくり4つのポイント>
B4サイズの紙(コピー用紙など)を用意します。この大きさはテスト用紙と同じ大きさ。
子どもによって書きやすい大きさです。100問をシャッフルして問題を作ります。問題には「=」も入れます。子どもがラクだし時間短縮にもなります。
・「1けた+1けた」に「10+〇」「〇+10」も入れた100問をアットランダムに散らしてプリントを作ります。手書きでもパソコンで打ってもいいでしょう。
・「〇+10」「10+〇」を入れるのは、この問題から「1けた+1けた」の次の段階である「2けた+1けた」または「2けた+2けた」をイメージすることができることと、「+10」は簡単なのでサービス問題になるからです。
・「+0」は入れないようにします。「+0」もサービス問題ですが、これを入れると問題数が多くなり、プリントに対する子どもの抵抗感が増します。また、「+0」をしても変化がないのでおもしろくないというのも理由のひとつです。
・最初にやさしい問題(「2+1」「3+3」など)を書いて、少しづつ難しい問題(「6+9」「8+7」など)を続け、子どもが疲れてきたなと思うぐらいの場所に「1+1」や「10+2」などのやさしい問題を入れます。
子どもに苦しみを与えて鍛えようとするのではなく、楽しんで練習できるようにするのが愛あるプリントです。
同じ問題を何度もやることで効果があがる
- プリントはコピーして、何度も練習します。
- 同じ問題だと子どもが覚えてしまって練習にはならないのではと思う保護者の方は多いのですが、覚えるためにするのですからそれでいいのです。最初の問題は覚えているので、プリントをする意欲にもつながります。
- 勉強はとりかかりが一番のハードルです!
嫌がる子どもに無理強いはNGです!
宿題が終わった後、夕飯前、お休みの日など子どもが疲れていないタイミングを見計らって練習するといいかもしれませんね。
運動会の練習や暑かった日などはお休みしたり、半分の50問にしたりして調節してください。嫌がって泣き叫ぶ子に無理やり勉強させるのは子どもが勉強嫌いになる一番の理由です。
このプリントをして、鉛筆が最初から最後まで止まらずに100問がすらすらと解けるようになるのを目標にしたいものです。
「1けた+1けた」がスラスラできれば、2年生以降の「大きな数」におびえません!
ここに紹介した方法は、私が実際に4人の子どもたちにしていた方法ですが、市販のドリルやアプリを使うのもいいでしょう。
「1けた+1けた」に習熟すると、学年が上がるにつれて100、1000、10000~と徐々に大きくなる数字に怯えずに、数字に向き合うことができるそうです。。文章題など応用問題を解く基盤にもなるでしょう。
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教えてくれたのは
大分県生まれ。津田塾大学英文科卒業後、高校で英語教師に。結婚後、3男1女を育て、全員が東京大学理科Ⅲ類から医学部医学科を卒業する。母親ならではのきめ細かい学習サポート法が注目されている。進学塾「浜学園」でアドバイザーとして活動するほか、様々なメディアで発信している。著書に『3男1女東大理Ⅲ合格百発百中 算数 国語 絶対やるべき勉強法』『3男1女全員東大卒医師に!一点集中ムダ取り勉強法』(幻冬舎)などがある。
構成/今津朋子 写真/繁延あづさ(男の子) 岡本尚樹(佐藤さん)