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「子どもが入試で合格点を取る」。いたってシンプルな仕組み
中学受験で大切なのは次の2点です。
・主役は子ども自身
・ペーパーテストで合格点を取る
親や塾はサポートや指導はしますが、勉強する、志望校を決める、試験に臨む、全てを行うのは子ども自身です。そして、学校が設定する合格基準を満たせば合格する。中学受験は実にシンプルな仕組みなのです。
中学受験は必ずしもやらなくていい
さらに言うと、中学受験は〝やらなくてもいいこと″です。受験者数は年々増加していますが、それでも、6年生全体の約20%だけが経験する特殊な世界であることには変わりありません。
首都圏ではこの割合が高まることもありますが、それでも5人に1人が中学受験を選ぶに過ぎず、残りの4人は高校受験を選択します。中学受験は決して必須ではなく、選択肢の一つに過ぎないのです。
中学受験が一般的な地域にお住まいの場合でも、周囲に流されることなく、お子さんの中学受験が、家族にとって、本人にとってどのような意味があるのかをしっかり考えるところから始めてみてください。
最大のメリットは6年間同じ環境で過ごせること
中学受験の一番のメリットは、中学から高校までの6年間を同じ環境で過ごせることです。一生の友だちができる可能性が高く、先生と深い信頼関係を築くこともできるでしょう。また、4教科を幅広く学ぶことで、知識が深まり見識も広がります。中学受験生の国公立大学への合格率が高いのは、4科目の基礎がしっかり築かれているからこそ。さまざまな学問分野への興味も自然と湧きやすくなります。
一方で、デメリットがあるのも事実です。5年、6年は、どうしても塾が生活の中心となるので、自由な時間が少なくなってしまいます。友だちと遊ぶ時間や、他の習い事が制限されるとつらくなってしまう子もいるので、これらのバランスを考えなければなりません。
「中学受験生=かわいそう」ではない
ただ、「塾の時間が長く、遊ぶ時間が少ないからかわいそう」というのは余計なお世話です。塾独自のコミュニティが形成され、楽しみながら学べる環境があります。同じ目標に向かって努力する仲間と切磋琢磨する中で、強い絆が生まれることも少なくありません。
当塾に通う子どもたちは充実した日々を楽しんでおり、自習室へも頻繁に通っています。学校の1クラスよりも塾のほうが人数が少ないので、先生が自分のことをしっかり見てくれることが嬉しく、居心地が良いと感じる子も多いようです。学習塾に通う子どもたちの多くが、学校以外の居場所を楽しんでいることは事実です。
志望校を選ぶなら、まずは家から一番近い学校を見に行き、「基準校」に
志望校選びは、家から近い学校の説明会へ参加することから始めましょう。その学校を基準に、他の学校と比較していきます。男子校、女子校、共学校、大学付属校など、さまざまなタイプの学校があるので、それぞれの特色をふまえ、最終的には本人が「ここに行きたい」と心から願う学校を第一志望に。女子校から共学になった学校もあるので、注意してください。
志望校は3年から6年の間に変わることも多いので、最初から決めつけずに、よいと思う学校をストックしておくので構いません。6年の夏期講習前に第一志望、秋ごろから出願の1か月前ごろに併願校を決めるという流れで十分間にあいます。
基本的には4科目受験
受験科目は、4科目(国語、算数、理科、社会)が基本です。たとえ算数のみで入学できる学校があったとしても、多くの生徒が4科目で受験してくるので、入学してからのことを考えると4科目をしっかり学んでおくことが重要です。
また、中学受験を考える際に気になるのが偏差値ですが、受ける模擬試験によって変わることが多いので、数字に振り回されないことが大切です。志望校選びの際、偏差値はあくまで指標の一つであることを知っておきましょう。
子どもが「やりたい」と言った時が始めどき
中学受験を始める最も良いタイミングは、子ども自身がやりたいと言った時です。友だちと同じ塾に通いたい、体験授業がおもしろかった、などのきっかけで興味を持つこともあります。
親が子どもに「塾の体験授業に行ってみない?」と声をかけるのも良いですね。そこで子どもが拒絶したら、焦らずに時期を見て、改めて適切なタイミングで声をかけてみてください。
塾に行かされていると思っている子はまず伸びません。自然な動機が自主的に学ぶ姿勢につながり、成績も上がってきます。3、4年から準備を始め、5、6年でハードモードに入っていくのが一般的ですが、1、2年から取りかかっている子もいます。ポイントは5年より前に始めることです。
好きな科目が子どものモチベーションを上げてくれる
何よりも、子どもが勉強に対してどれだけ意欲的に取り組めるかどうかが大切です。
4教科の中で、好きな教科が一つでもあれば、中学受験に向いていると言っても良いでしょう。なぜなら、好きな教科が全体のモチベーションを向上させ、結果的に他の教科の成績も伸びていくからです。それは算数、国語でなくても理科、社会でも良いと思います。
また、スポーツや音楽などの習い事で、自分の力を高めた経験のある子も強いですね。忍耐力もありますし、目標に届いた達成感を知っていることが武器になります。部活動、学校の雰囲気、制服……。中学受験に前向きになれる理由を見つけられれば、子どもは驚くほど積極的に受験勉強に向かっていくものです。
中学受験は順風満帆にいかなくて当たり前
夫婦で受験に関する役割分担をすることも、家庭内のストレス軽減や、効果的なサポートにつながります。例えば、一方が勉強を見る役割、もう一方が精神的なサポートを担うなど、お互いの強みを生かし合ってください。
そして、一度中学受験を始めたら最後までやらなければならないと気負う必要はありません。子どもにとって無理があると感じたら、ルート変更し、高校受験に向けて努力する道もあります。最適な教育の形は一つではなく、子どもの性格に合わせて柔軟に変えていくことが、最終的には本人のためになるということを忘れないでください。
子どもの「できた」を認める姿勢で
子どもがテストで70点を取ったとき、できなかった30点ばかりを気にしていませんか? 70点取れたことの成果を認め、励ます姿勢で、子どもたちの頑張りをサポートしてあげてください。親子間での衝突が生じた時は、何でも自分たちだけで解決しようとせず、客観的なアドバイスができる第三者に相談するのも一つの方法です。
中学受験は順風満帆にいかないのが当たり前。親にその覚悟があれば何があっても冷静に対応でき、そうした態度が子どもにも良い影響を与え、結果として、充実した中学受験生活を送ることができるでしょう。
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お話を伺ったのは
取材・文/黒澤真紀 撮影/HugKum編集部