目次
中学受験を検討中の方にオススメの本を紹介
2024年の中学入試も終わり、受験塾ではさっそく新年度のカリキュラムが始まっている時期となりました。
私も、子どもに中学受験を考え始めております。
しかし、中学受験する親必読の書として有名な『二月の勝者』を読んでみて、子どもたちの成長に胸熱・号泣してはみたものの、「うちの子どもにこれだけのハードモードができるのだろうか」「そもそも私が長い中学受験ロードに伴走し続けられるのだろうか」などなど、大きな迷いが生じつつあります。
どんな情報サイトを見ても中学受験の要は「親の心構え」とあります。11,12歳が受験をし、勉強を始めるのは9歳、10歳あたりなのですから当然でしょう。
ですので、まずは親自身が真剣に前向きに「中学受験」に向かって心を構えられるよう、中学受験を経たパパママたちからおすすめ本をリサーチし、中受初心者親の私がひたすら読みこんでみました。
そうした中から、「これぞ!」と思った本をご紹介いたします。
1 中学受験をするかしないかを論理的に考える
『コスパで考える学歴攻略法』(藤沢数希/新潮社)
中学受験に向かう大前提として、なぜ「中受」を選ぶのか、考える必要があります。
現代日本の進学方法は多種多様になってきてはいますが、基本的には「中学受験をするか、高校受験をするか」の二択です。そのどちらをあなたの家庭は選びますか?と、それぞれの進路の“コストパフォーマンス”からひも解くのが本書です。
ビジネスに学歴など関係ないという時代ではありますが、未来のために子どもが受験勉強をがんばって学歴を獲得していくことには有益な面もたくさんあります。そうした中、行き過ぎた学歴獲得競争とは健全な距離を保ちながら、いかに効率よくこの競争に勝てるようにすることができるか、そのプロセスからどんな糧を得られるかがデータをもとに示されます。
東京に住んでいると中学受験が当然のように思いがちですが、東京都全体では約20%。全国でみると8%で92%の子どもたちは公立中学校へ進みます。中学受験には塾代で約300万円、私立の学校に6年間で約600万円、大体約1000万円が余分にかかることになります。
高校受験をして公立中高から大学受験をした方が圧倒的に教育費がかかりません。本書では、中学受験で1000万円をかけることにより、偏差値が3、遺伝的影響を差し引くと1.5程度上がる可能性があるとしています。期待値としては大学がワンランク上がり、浪人が現役になるかもしれない程度です。また、「中学受験の最大の果実は志望校に合格することではなく、毎週順位が出るテストを受けながら塾で授業を受け家庭で猛勉強し続けるそのプロセスにこそあると思う」とも述べられています。
リアルなコストとそこから得られるパフォーマンスを提示され、「うちは中学受験に向かうべきか」を根底から考えさせてもらえた本です。
2 現代の中学受験の「危険」を知り「理想」を決める
『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験』(矢野耕平/祥伝社新書)
コスト、パフォーマンス、いろいろ考えたけれどやっぱり中受をしよう、8%に入ろうという気持ちが固まったら、中学受験塾の代表である矢野耕平先生の「『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験』(矢野耕平/祥伝社新書)」で、中学受験のリアルな現状と危険、親子が理想の中学受験にどう向かうべきかを考えてみましょう。
矢野先生は「わたしは過熱化する中学受験の世界を冷ましたいと考えて、筆を執りました。」と述べています。2024年2月の中学受験者では、総数こそ減りはしたものの受験率は上がり、SNSでも大量の中受情報が流れています。そうした中、より高い偏差値の学校を求めたり、「みんながやるから」と流されて始めたりするのではなく、保護者がわが子にとっての「理想の中学受験」像を持つことがいかに大切かを説いています。
そして、実際に中学受験の学習を始めていく中で、
「受験勉強における『最強』と『最凶』のポイント」
「塾生活における『最強』と『最凶』のポイント」
「志望校選びにおける『最強』と『最凶』のポイント」
を説明し、実際に中学受験指導をされている矢野先生ならではの現実的な指南書となっています。
私は現代の中学受験勉強の膨大な量に不安を覚えていましたが、矢野先生は、“勉強する我が子が「かわいそう」は大間違い”と述べています。保護者が我が子に同情することで、子どもは「自分は苦しいことを強いられているのだ」と被害者に似た思いを抱いてしまう、という指摘にハッといたしました。そして、中学受験の勉強を親も一緒に解いて「楽しんでみせる」ことで、勉強の面白さ、喜びを共有することで、我が子も学びに積極的になるという実践例を我が家でも取り入れていきたいと考えています。
中学受験勉強での「最凶」の事態とは、「子どもが勉強嫌い」になってしまうことと指摘されていますが、そうした事態を避け、受験勉強を子どもにとって糧とできるよう、何に気をつけ何を考えておかねばならないのか気を引き締めさせてくれる本です。
3 親のメンタルを強化
『中学受験生を見守る最強メンタル!』(おおたとしまさ/光文社)
塾に通ったり通信で学習したり、実際に中学受験の学習が始まると親の負担は増大し、SNSでも親のメンタルが乱高下している状況がよくあります。それらを垣間見るたびに、「自分自身が、これらに耐えうるんだろうか……」と不安になります。
この本は、そんな中受の過程におけるリアルな相談事例をもとに、親はどんなメンタルを持つべきかを具体的に指南してくれます。
著者のおおたとしまささんは教育ジャーナリストとしてこれまで中学受験界を論じた著書が数多くあります。そんなおおたさんが、「娘がまさかのカンニング……子育てをやり直したい」「夫婦のすり合わせがないまま中学受験を始めてしまいました」という中受を始めてから巻き起こる事態に対して、その裏にひそんでいる親の思惑を言い当て、どう考え構えるかを伝えていきます。
私はこの中でも「中学受験する目的って何なんでしたっけ?」の回に出てくる、子どもの学習環境が整っているところに通わせたいと思うものの『二月の勝者』を読んで心配になってしまっている、というお悩みに共感してしまいました。
著書内で「今の過酷な中学受験に突入するメリット・デメリットを知りたい」というお悩みが掲載されているのですが、中学受験では第一志望に受かる子は4人に1人と言われており、受からない子の方が圧倒的に多い中、大学受験のために「より高い偏差値の学校」を求めるべきなのか、我が子にどんな環境でどう豊かな思春期を過ごさせたいのか、「なぜ中学受験をさせたいか」という親の価値観を見つめなおすべきではないのか?という部分に深く考えさせられました。
巻頭には子どもが中受を経験した親の座談会もあり、受験本番のリアルな状況も想像でき、中受に向かう悩める親心を具体的に考えることのできる1冊です。
4 中学受験の原動力は「こんな学校に入れたい」と思うこと
『中学受験で大好きな学校に入ろう』(井上修/筑摩書房)
中学受験の道のりについて不安を持つだけでなく、まず「うちの子には、どんな学校で6年間を過ごさせたいのか」、この本からポジティブに子どもの将来を考えていきましょう。
著者の井上さんは中学受験雑誌「進学レーダー」の編集長でありその知見から、保護者はどう志望校を選ぶべきか、「子どもにあった学校を探したい」というよりも「どういう校風で育ってほしいか」をという視点を持ちましょうと説明しています。
大学入試のトレンドが変わり、一般選抜の枠が減り総合型選抜・学校推薦型選抜の枠は今後どんどん拡大していきます。そうした入試で問われるのは「学力+入学後何をやりたいか」です。また、海外大学への進学人気も高まっています。
そこで、私学の学びは難関大学にいかに送り込めるかという「到達型学力」の傾向から、大学に入った後もどう生きていくかを考え生涯学び続けるための「持続型学力」へと変化しています。大学合格率で受験校を選ぶのではなく、その先の「我が子がどんな人生を生きていくのか」までを考えて、学校を選ぶ必要があるのです。
そうした状況をふまえ、保護者が「難関大学に入れればよい」と考えるのではなく、「中高の6年間で我が子に何を学ばせたいか、どんな環境で過ごさせたいのか」、志望校を選ぶポイントと情報が、本書に詳細に述べられています。
また、私学ではその創立からの理念、校風が脈々と受け継がれ、子どもたちに大きく影響します。本書では有名私学の創立の過程からどういった校風が養われていったのかまでを系統別に説明しており、「どういった校風に惹かれるか」を考え、志望校の最初の選別に非常に役立ちます。
『私学の校舎散歩』(イラスト・文 片塩広子 みくに出版)
志望校を決定するうえで、上記は保護者視点から考えさせられますが、子どもと一緒に「こんな学校なんだ」とイメージをふくらませることのできる本に、「『私学の校舎散歩』(イラスト・文 片塩広子 みくに出版)」もあります。
イラストレーターの片塩さんが、私立中高だけではなく国立中高も含めた41校の校舎と学校生活をイラストで詳細に描いています。制服姿の生徒たちのイラストで、どういった校舎や周辺環境なのかが描かれ、部活動や行事風景まで網羅しているので、学校説明会や文化祭に行く前に読んでいると、よりその学校への解像度が高くなり、おすすめです。
さいごに
私自身も中学受験の経験者です。そして、自分自身が「受験をして結果的によかった」と思ったからこそ子どもにもチャレンジさせてみてもよいかと考えましたが、「今の中学受験の勉強量、知識量はかつての3倍」と聞いて恐れおののいておりました。しかし、これらの書籍から中学受験の現状を詳細に知ることができ、受験を考えるうえで「どこを突き詰めて考えるべきなのか」、我が家にとっての問題点を絞ることができました。
また、中学受験を迎えるうえで親の心構えは最重要課題ですが、目の前の我が子をしっかり見て、どう育ってほしいのか、どんな大人になってほしいのかという根底の部分を考えて志望校を選び、中受か高受かも考える必要があります。
ただ、どの書籍でも書かれており、実際に私の周りの中学受験をしたほとんどのご家庭でも言われたのが、「中学受験で努力したことはその後の糧になる」ということです。もちろん、全てにおいてよかったということは難しいとは思いますが、親だけが一喜一憂するのではなく、目の前の我が子をしっかり見つめながら、中学受験に向かうべきか否か、考えていければと思います。
こちらの記事もおすすめ
文・構成/徳永真紀