我が子の志望校が決まらない。偏差値だけで選ぶのはNG?日能研に聞いた「大学付属校」「男子校」「女子校」それぞれの特徴

現在、全国に156校を展開し、毎年多くの合格者を輩出している大手中学受験塾「日能研」。
前編では、昨今注目の学校や人気の理由、保護者の考え方の変化など、中学受験市場の傾向について伺いました。

後編では、同じく「日能研」に「中学受験の学校選び」について伺いました。たくさんの学校がある中、受験校選びに迷っている保護者の方は必読!

「女子校」「男子校」「大学付属校」など、さまざまな視点から解説します。

中学受験の「今」がわかる!前編はこちらから

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中学受験熱は、今後もここ数年は高まる傾向にある! ――中学受験熱の高まりが多くのメディアで報道されていますが、実際のところ、どうなのでしょ...

中学受験の学校選びに保護者の助けは不可欠。子どもの特性を見極め、対話して

――魅力ある学校が増えたのは、とてもいいことだと思うのですが、多くの中から受験する学校を選ぶのはなかなか難しいですね。

日能研:私立校はどの学校も個性があって、やっていることが皆違うので、学校選びは確かに難しくなっているのかもしれません。

「日能研」へお子さんを通わせていただいている保護者の方たちを拝見していると、お子さんが3~4年生のころは、いわゆる有名校であったり、大学合格実績がいい学校に狙いを定めている方もいますが、情報収集が多くなるに従って、それだけではない視点があることに気づいていく方が多いんですよね。

――では、どうやって学校を選んだらいいのでしょうか?

日能研:まずは、お子さんの性格や個性をしっかり把握して、どんな学校がお子さんに合うのかをじっくり考えることが大切です。そのためにはお子さんと対話をすることも大切ですが、親子で多くの学校へ実際に行って、学校を見る目を養っていただきたいですね。どんな学校が合うかがわかれば、偏差値は、その後考えればいいんです。

首都圏の学校数
首都圏だけでも私立中学校の数は292校も!たくさん見学して、子どもに合う学校を見つけることが大切。※日能研提供資料「中学受験ABC」より抜粋

どんな学校が合うかわからない場合、まず身近な学校から見学するのもひとつの方法

日能研:もし、どんな学校がわが子に合うのかわからなければ、3~4年生であれば、まずは成績を気にしないで名前をきいたことがある学校や身近な学校から見学を始めるのもいいと思います。そうして、その学校の良さを伝えながら、反応を見ていってはどうでしょうか。

複数の学校見学をしていくうちに、子ども自身も「これが好き」や「この授業がおもしろそう」というように、見学した学校に対しての感想も徐々に言えるようになってくるんです。また、そうした子どもの反応を見ていくうちに、保護者の方が目指していた学校と子ども自身の行きたいと思う学校のイメージとのギャップもわかっていくんですよね。

学校見学を重ねるうちに家庭ごとのモノサシが見えてきます

日能研:そうした経験を重ねるうちに徐々に‶学校に対するご家庭ならではのモノサシ〟がある程度見えてくるのです。

モノサシがしっかり定まらなくても、私たち塾のスタッフに問い合わせをいただいてもいいと思います。「この学校は気に入ったけど、この学校はわが家にはあわないと思った」といったシンプルな感想でもいいです。求める学校の方向性を少しでも教えていただけたら、私たちスタッフも、ある程度適した学校情報の提案ができると思います。

中学受験は「親子の受験」親子でたくさん対話してみて

――なるほど。まずは実際に親子で学校見学をしてみることが大切なんですね。

日能研:中学受験は「親子の受験」です。小学生ではまだ視野が狭いので、保護者の助けが必要不可欠です。

いまは、学校説明会も、少人数で多くの回数で行われています共働き家庭のためのナイト説明会もありますし、オンライン説明会や動画配信など、さまざまな手法で学校情報を得ることができます

わが子にそうした学校情報を伝えて、子どもの意見に耳を傾けるだけでなく、「学校に対するこういった考え方もあるよ」といった、新たな価値観を伝えてあげることも大切です。そのためには子どもとたくさん話をしてほしいですね。

中学受験が終わった保護者の皆さんは「いい学校に入れてよかった」と言うと同時に、「中学受験をしたことで、子どもが成長した」と口々におっしゃるんですよね。中学受験というのは、子育てにおいて親と子が密に寄り添える貴重な時間でもあるのです。

大学付属校は、大学と連携した独自のカリキュラムを展開。人材育成にも注力

――ところで、話は変わりますが、「大学付属校の特徴」には、どんな点がありますか? 進学校は勉強に励むけれど、付属校はのびのび過ごすというイメージがあります。

日能研:以前は、そういったイメージが確かにありました。

しかし、現在の付属校は、しっかり勉強している学校が多いです。付属校の特性を活かしたカリキュラムを組んでいます。例えば、高校在学中に大学の単位が取得可能にして、1年早く大学を卒業できるようにしていたり、大学ならではの充実した施設を利用して高度な授業を展開している学校もあるんです。

日能研:また、学業以外の部分では「リーダーシップを発揮できる人材育成」を目指している大学付属校が多い傾向があります。大学受験がないぶん時間を取って、プレゼンテーションやグループワークに重きを置いた授業を展開しているんですよね。

こうした付属校だからこそ体験できることがあるということも視野に入れて、受験校を選んでほしいと思います。

男子校、女子校も多様性の時代に呼応。異性と意見交換も

――別学の共学化などの話もききますが、男子校、女子校において、以前と異なる変化はありますか?

日能研:男女別学校が減っている背景には、少子化によって、経営的に厳しい現実があります。しかし、男子校も女子校も、その学校独自の理念を貫いて、魅力的な教育を行っていると思います。

多感な成長期において別学の良さを活かしている学校はたくさんあります。

日能研:一方で別学校の変化としては、多様性の時代に呼応して、学校外の人とふれあう体験を多く設けている傾向があります。また、ジェンダー教育にも力を入れていて、在学中に異性と意見交換会を開いて、男女が互いを分かり合う授業を行っている学校も多いですね。

中学受験する?しない? 迷うならまず始めてみては

――これまでお話をお聞きして、中高一貫校への魅力がとてもよくわかりました。最後に、中学受験をするかどうか、迷っている保護者の皆さんへアドバイスをお願いします。

日能研:中学受験をするかどうか迷っていらっしゃるなら、「まずは準備を始めてみていかがでしょうか」と言いたいですね。

中学受験というと、志望校を決めていなければならないとか、親子ともども断固とした決意をもって臨まなければならないと思っていらっしゃる方がいますが、子どもが嫌がらないのなら、まずは将来の選択肢を広げる意味で、学校について調べたり、中学受験の準備を始めてみてはどうかと思います。その上で、無理だと思ったり、嫌だと感じたらお通いの塾に相談したり、家族でもう一度相談したりするといいと思います。

成績が停滞しているように感じても、学力は身についていますし、そのときに親子での対話を体験をすることは決して無駄にはなりません。中学受験の道のりの中で、なぜ中学受験をすることがわが家にとっていいのか、じっくり進路選択をする時間をとるうえで、受験の準備は早い方がいいですから。 

中学受験に合格することは人生のゴールではありません。どんな人間に育ってほしいのか、子育ての方針を改めて考え、その先の子どもの教育を見据えながら、まずは中学受験に親子で臨んでみてはいかがでしょう。

前編では今の中学受験事情、学校や保護者の傾向を伺いました

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お話を聞いたのは

日能研|子ども未来進学センター
「小学生のための中学受験塾。」を掲げる大手学習塾。中高6年間一貫教育という「知の環境」に賛同して、現在、全国に156校を展開。毎年多くの合格者を輩出。

 取材・文/山津京子

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