メロンパンといえば、子どもから大人まで、幅広く愛されてきた人気のお菓子パンです。
じつはそのメロンパン、西日本の一部地域ではアーモンド型をした白あん入りのパンを指します。そして、一般的な丸型で、ザクザクしたビスケット生地がかぶせられたパンのことを「サンライズ」と呼びます。どういった経緯で、こうした名前で呼ばれるようになったのでしょうか? メロンパンのおいしい世界を探検してみましょう。
メロンパンとサンライズの違い
まずは一般的なメロンパンと、神戸のサンライズの違いについて確認します。形状・味・食感に特徴的な違いはあるのでしょうか?
メロンパンの紹介
一般的に「メロンパン」と呼ばれるのは、甘みのあるパン生地に、サクサクしたビスケット生地をかぶせ、表面に格子状の切れ目を入れたパンです。表面の食感を際立たせるため、ザラメをまぶすこともあり、その甘さが特徴的です。
「メロンパン」と呼ばれるようになった由来は諸説あります。「メロンのような形」からきたという説、または「メロンエッセンスを加えた」ことが由来とする説、さらには「メレンゲパン」という名前が変化したという説もあります。しかし、真相は明らかになっていません。
昭和初期から全国のパン屋さんで販売されており、長年にわたって愛され続けてきた歴史があるパンです。
神戸の「サンライズ」
主に関西方面で「サンライズ」と呼ばれるパンは、前述のメロンパンと同じ形状、同じ味、同じ食感で、呼び名だけが違います。
名前の由来については、「パンが焼ける様子が、朝日が登るように見える」という説があります。一方で、濁点がない「サンライス」とも呼ぶ地域もあります。これにより、名前の意味合いはさらにあやふやに…。謎は深まるばかりです。
各地域での呼び方の違い
さらになんと、関西の他、広島などの地域ではアーモンドに似た形のパンを「メロンパン」と呼ぶのです。
このタイプのメロンパンは、外側の生地がしっとりとした食感で、中の生地に白あんが詰められていているのが特徴。これをトースターで温めて食べると、外側はカリカリ、内側の白あんはホカホカに温まるので絶品です。
さらに驚くべきことに、広島の三島市や呉市では、一般的な丸型メロンパンのことを、「コッペパン」と呼ぶそうです。このように、メロンパンの地域による呼び方については謎だらけなのです。
神戸のサンライズ文化
明治以降、日本の玄関口として栄えた港町・神戸。外国人居留地を中心に欧米人経営のパン屋が多く開店したことから、今でも名店が軒を連ねる地域です。
この神戸のサンライズについて、詳しくみていきます。
サンライズの歴史と由来
神戸市には、サンライズ発祥の店として営業を続けるお店があります。1924年(大正13年)創業の金生堂(きんせいどう)が、それです。戦前は全国各地に支店があり、その中の広島・呉支店で、最初のサンライズが誕生したといわれています。
当初、このパンはまくわうりの形をヒントに、アーモンド型の焼き型を使って作られました。
ビスケット生地の表面には、朝日が登る際の放射状に広がる光をデザインとして取り入れ、これが「サンライズ」という名前の由来となりました。生地の甘さを控え目にし、中身には甘い白あんを詰めました。これはまくわうりの果肉を見立てたそうです。
このように、初期の「サンライズ」は、細長いアーモンド型のパンでしたが、後にメロンの人気が高まったことで呼び名が変化していったようです。
その後、金生堂では焼き型が入手困難となったこともあり、現在は丸型の格子模様で作るようになりました。名前だけが残され、「サンライズ」として販売を続けています。
この流れで、現在も関西地方で営業を続ける老舗パン屋さんには、丸型メロンパンを「サンライズ」と呼ぶお店が多く残っています。
また、全国的に普及している「メロンパン」で呼ぶお店も増えている一方で、昔のサンライズ、つまりまくわうり型のパンを「メロンパン」と呼んでいるお店もあり、呼び名が混在しているのが実状です。
メロンパンの普及
もうひとつ、ふたつのメロンパンに共通するのが、表面の生地です。まくわうり型のほうが、バターたっぷりでしっとりとした食感ですが、ベースに使われるのは、同じビスケット生地です。
次はこの生地について詳しくみてみましょう。
パン生地は焼き上げると共にどんどん膨らむものですが、ビスケットは焼成によって固く締まる性質があります。通常、この組み合わせでは、表面にかぶせた生地だけがメリメリと不均一に割れてしまうはず。
この難題を解決する鍵は、表面の生地に入れる切れ目にあります。均一な格子状の浅い切れ目を入れることで、パン生地の膨らみに合わせて均等に割れ、全体が丸くふっくらとした形に焼き上がります。丸型メロンパンの表面にある切れ目は、まさにマスクメロンの網目にも見立てることができますよね。
この特徴的な生地の使用が、丸型とまくわうり型の両方を「メロンパン」と呼ぶことへの抵抗を減らした一因かもしれません。
このように、メロンパンの名前やルーツは明確ではありません。ですが、甘いパン生地に覆われた特有の食感が人々を魅了し続けてきたことに違いはなく、呼び名の違いにもかかわらず、長年愛され続けてきました。
人気のメロンパンを紹介
メロンパンは、呼び名だけでなく、生地のタイプ、中身の有無、メロン果汁の使用など、さまざまな要素によってバリエーションが多彩にあります。通販情報と一緒に、人気のパンをご覧ください。
神戸屋 ホイップ入りメロンパン2種と生くりぃむぱん(チョコ)
中にクリームが入ったメロンパンで、配達時は冷凍でのお届けです。解凍しても、冷凍のまま食べてもおいしく楽しめます。3種類の味が用意されているのも、嬉しいポイント。
オイシス 元祖メロンパン(白あん)
こちらは通販で購入できる、神戸のメロンパンです。しっとりとした生地が特徴です。ビスケット生地は各パン屋さんによって工夫が凝らされているので、現地を訪れた際には色々なお店で試してみると、お好みのパンを発見できるかもしれません。
メロンパン巡りもおすすめ
メロンパンのルーツは不明ですが、子どもも大人も大好きなパンであることは間違いありません。神戸のサンライズとは共通点があるものの、メロンパンの多様性はさらに広がり、お店ごとに独自の味が追及されています。
お近くのパン屋さんはもちろん、各地にさまざまな味のメロンパンがあるので、知らないパン屋さんを見つけたら、チェックしてみると楽しいかもしれません。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)