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発達障害の女の子は、思春期になると友人関係の悩みを抱えがち
特に知的に問題が無い子や、境界域と言われるグレーゾーンの女の子は、周りに合わせよう、みんなと一緒がいいという思いが、男の子より強く、小学校の中学年までは比較的典型的な発達の子の中でも大きく目立ちません。しかし、思春期に入る頃、ちょうど生理が始まるあたりの時期になると、体の成長だけでなく、言語の発達にグッと成長が見られる傾向にあります。
この年頃になると、友達選びもこれまでと違い、家の近所の子や親同士が仲がいいなど、大人の決めた条件ではなく、自分と対等に付き合える子を自分の基準で選ぶようになります。 そうすると、言動が幼く、コミュニケーションの取り方に特性がある発達障害の子の場合は、周囲から浮きがちになり、友達もそのことに気がつき始めます。
発達障害の女の子が、「わがまま」「自己中心的」と思われがちなワケ
発達障害の女の子は、周囲との比較や客観的な自己判断が難しく、「恥じらい」の感情の発達もゆっくりなことがあるために、友人関係をうまく築けない場合が多々あります。
自分が会話の中心でないと気が済まない
本人の幼さからくるものですが、相手からの注目や関わる機会を得るために起こす「注目獲得行動」の表れで、自分が会話の中心でないと不安になり、会話に割り込んで嫌われることが。
一方的に話して、相手に口を挟ませない
多弁で衝動性が強い場合、思いついたことをすぐに一方的に話し始めて相手に口を挟ませないということもあります。また、話したいことを思いついても、ほんの2,3分の間に何を話したかったかを忘れてしまうなど、短期記憶に問題がある場合は、忘れてしまうことを恐れて一方的に相手に話し続けることがあります。
言葉の意味を汲み取ることが難しい
「ガールズトーク」という言葉あるように、女の子は成長とともに言葉や言い回しの独特さが生まれ、会話に「空気を読む」ことが求められがちです。
例えば、断り文句にありがちな「行けたら行くわ」という返事を、「行く」と思い込んでしまうなど、発達障害の子は、ストレートな言葉だけの意味で判断してしまい、誤解してしまうことがあるのです。
このような行動が「わがまま」「自己中心的」と思われがちで、典型的な発達の子達から見ると関係を持つのにためらう存在になりがちなのです。その結果、孤立する事となり、保護者はこの状況に心を痛めるかもしれませんが、発達障害はコミュニケーションや社会性の障害であり、支援なしで同世代と対等な友人関係を築くことは困難です。
無理に友人関係を求めないでいい
私が保護者にお伝えしていることは、無理に友人関係を求めないようにすることです。女の子のいじめられる子の特徴に、「一人でいられない子」があります。「最初からいじめられる事を恐れて友人関係をあきらめるなんて」と思われるかもしれませんが、友人関係をあきらめろと言っているわけではなく、以下の理由から、この時期に無理して築く必要はないという考えです。
①ホルモンバランスの変化
思春期という時期はホルモンバランスが変わり、テストステロンという攻撃性の高いホルモンの分泌量が増えます。テストステロンは一般的に男性ホルモンとされていますが、女性の体内でも重要な役割を果たしています。思春期に入ると、女の子の体内でもテストステロンや他の男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が増加します。この時期にいじめや仲間外れが増えるのもそういった体の変化もあるからです。他にも受験に向けた学業が忙しくなるなど余裕もなくなりがちな時期です。この時期の子どもたちは自分と違った物を排除しようとする時期でもあります。
②本人の傷つきやすさ
大人になると些細な事でも経験の浅い子どもにとっては些細な事がものすごく重要に感じます。例えば友達との約束一つにしても、子どもにとっては重要さが違うのです。大人同士であれば相手のその時の「都合」やその人の「環境」などを考えたりと些細な事は気にしませんが、経験の浅い彼らにとっては一つ一つに傷つく度合いが重いのです。
「トラブルのきっかけはいつも友だち」に傷つかないための親のサポートとは
以上の理由から長い人生を考えると敢えてこの多感な時期に傷つくリスクを負ってまで友人関係を無理に構築する事はあまり得策とは思えません。
「我が子のことを理解してくれる優しい友だちがほしい」と保護者の皆さんは考えます。でも、その考えには「うちの子は障害があるから少し大目にみてほしい」ということも含まれていませんか。「理解してくれる優しい子」というのは、「友だち」ではなく、実はその子にとっての我が子は「都合のいい子」ではないでしょうか。私が運営していた放課後デイサービスでも、シャープペンとか消しゴムとかを勝手に交換されたり、ゲーム機を持ってこさせられて無くされてしまったり…と、友だちから「いいように使われた」ということを皆が経験していました。
本人は自覚していなくても、我が子が都合よく利用されることを望む親はいないでしょう。我が子が「都合のいい子」になってしまいがちということを意識しておかないと、最初は子ども同士のトラブルだったのが、次第にエスカレートして親同士のトラブルに発展したときに大変な苦労をすることになります。
必要なのは友人がいなくても楽しめる活動を見つける事です。その活動を通して同じ仲間や支援者を通じて他者との交流から始め人間関係の構築をしていく事がおすすめです。
学童期はあまり友人関係にこだわらず、本人の好きな物や好きな事を見つけることを、親として支援してあげていただきたいですね。
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記事監修
健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。
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