癒合歯とは?
癒合歯(ゆごうし)とは、まさに言葉の如く、隣り合った2本以上の歯が癒合した(=くっついた)歯のことです。乳歯・永久歯ともに認められますが、2本の癒合歯が大半を占めます(図1)。
通常の歯の2倍近くの大きさがあることから、見つけること自体は容易です。

癒合歯は大きく分けて2つに分類され、表面だけがくっついた「癒着歯」と内部までくっついた「(狭義の)癒合歯」に分類されますが、近年ではどちらもまとめて癒合歯と呼んでいます。
歯の外見だけで両者の判別はできない場合が多いですが、レントゲン写真を撮ることによって、癒着歯か癒合歯かの判断ができるようになります。
頻度としては統計により違いはありますが、欧米人よりも日本人に多く見られ、日本人では乳歯で1~5%、永久歯で0.2~0.3%の割合で発生し、永久歯より乳歯のほうが多く認められることが報告されています。
どうして癒合歯はできるの?
癒合歯は、歯が形成される過程で生じた何らかの異常で発生するものですから、生まれつきのもので、現時点では予防することはできません。
癒合歯ができやすい要因として、妊娠中の母親の栄養状態や病気、薬剤との関連、出生時の体重などの環境的要因が複合的に影響して発症することがあると言われていますが、明確な原因は分かっていません。
その一方で、遺伝的要因があることも指摘されており、親に癒合歯があれば、子どもにも癒合歯ができやすいことを示す研究報告もあります。
癒合歯は確かに異常な歯ではありますが、ヒトの顎骨は進化の過程で小さくなる傾向にあることから、歯のもとになる歯胚(しはい)同士の間隔が狭くなって、隣り合う歯胚が結合(癒合)しやすい状態にあることが癒合歯の発生につながるとも考えられています。
癒合歯に関する研究調査
2012年に大阪の小児歯科が報告した調査では、受診した3歳から6歳未満の2017人(男児1014人、女児1003人)を対象として実施されました。
調査内容として、視診およびレントゲン写真から乳歯の癒合歯、乳歯の先天性欠如(生まれつき歯がない状態)および後継永久歯(乳歯が抜けた後に萌出する永久歯)の異常を診査し、統計をとりました。
その結果、乳歯の癒合歯の発現頻度は3.37%となり、乳歯の先天性欠如(1.39%)よりも多く認められることが明らかになりました。(関連記事はこちら≪)
また、癒合歯が認められた歯の部位は下顎のAB(乳中切歯と乳側切歯)が最も多くなり、上顎では統計学的に有意の差をもって少ないことが分かりました(図2)。

さらに、乳歯の癒合歯がある場合に後継永久歯に異常があるケースは41.2%におよび、高い確率で生えかわりなどに支障が出ることが判明しました。
中でも、下顎のABが癒合した場合に後継永久歯の異常発現が15.9%であったのに対し、下顎のBCでは71.0%もの高頻度で異常発現が認められ、過半数のケースで問題となることが明らかになりました。
一方、片側性が80.9%、両側性が19.1%であり、癒合歯の大半が片側だけに発現することも分かりました(図3)。

癒合歯には、どんな影響があるの?
子どもにくっついた歯があること自体に問題はなく、日常の食事や会話に特に支障はありませんが、いくつかの悪影響が出てくる場合があるので、まとめてみました。
見た目に影響する
乳歯・永久歯ともに前歯に認められることが多く、通常の歯よりも横幅が大きいことから、歯の見た目が不自然に目立ってしまうことがあります。
また、片側だけに多く発生することから、左右の歯のバランスに不調和が生じ、歯を見せた笑顔に違和感を感じる可能性もあります。
歯並びや噛み合わせに影響する
癒合歯は通常の歯より大きく、片側性に萌出することが大半であることから、歯並びに左右のアンバランスが生じる結果、噛み合わせの不具合が生じやすくなります。
噛み合わせの悪化により、顎関節症や肩こりなど、将来的な体の不調も懸念されます。(関連記事はこちら≪)

生えかわりに影響する
2本の乳歯がくっついていると、うまく歯根が吸収されずに、なかなか抜けないことがあり、生えかわり(歯の交換)に悪影響が出ることがあります。
また、癒合歯の幅は正常な2本の歯の幅の合計よりも狭いことが多いため、正常な2本の永久歯が萌出するスペースが不足し、うまく萌出できない可能性が高まります。
虫歯リスクが上がる
癒合した結合部は複雑な形を呈することがあり、癒合した部位に深い溝ができると歯ブラシの毛先が届かないため、虫歯になりやすくなります。
後継永久歯の欠損の割合が高い
後継永久歯の欠損率が通常の歯よりも高く、後継永久歯がない場合、乳歯の癒合歯は生えかわらないまま残存します。
しかし、乳歯はエナメル質が薄くて虫歯リスクが高い、歯根が短くて歯周病のダメージを受けやすいなどの理由から、永久歯に比べて寿命が短いため、癒合乳歯は早期に失うリスクがあります。
癒合歯を喪失した欠損部分は、顎骨の成長や永久歯の萌出状況などを考慮した上で、将来的にブリッジやインプラント、義歯(入れ歯)などで補う必要があります。
癒合歯に対する注意点や対処法

癒合歯を見つけた場合はそのまま放置せず、速やかに次のように対応しましょう。
歯科医院を受診する
視診による癒合歯のチェック(癒合歯の結合状態や隣在歯、歯並びや噛み合わせのバランスなど)を受けましょう。また、レントゲン写真を撮影して後継永久歯があるかどうかを確認しておくことも不可欠です。
受診時点では特に問題がなくても、数か月ごとの定期検診の際に、チェックを受けるようにしてください。
歯の形を修正する
2本がつながった部分に深い溝ができると、虫歯のリスクが上がるため、歯と類似色のレジン樹脂やシーラント樹脂を使用して溝を埋めて、歯の形を修正するなどの対応をします。(関連記事はこちら≪)
必要に応じて抜歯する
生えかわりが遅れて永久歯の萌出に支障が出ている場合は、必要に応じて抜歯することがあります。当然ですが、後継永久歯の有無を事前に確認しておくことは必須です。
歯磨きを徹底する
癒合歯の形態や隣在歯との関係などによって虫歯リスクが高い場合は、毎日の歯磨きを十分に行うことが大切なのは言うまでもありません。
また、後継永久歯がない場合は、乳歯の癒合歯を大人になってからも正しく機能できるように健全に保つ必要があります。より念入りな毎日の歯磨きが不可欠です。
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以上より、異常に大きな歯を見つけたら癒合歯を疑って速やかに歯科医院を受診し、治療やアドバイスなどを受けるようにしてくださいね。
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記事執筆
歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。X(旧Twitter)も更新中。HugKumでの過去の執筆記事はこちら≪
参考:福本敏ほか:歯の発育と異常.小児歯科学 第5版,2017.
:田中丈也ほか:乳歯癒合歯または先天性欠如と後継永久歯との関係.小児歯科学雑誌50(3):243-248,2012.
