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質問:4歳の息子は「待つ」ことができません
我が家の次男のことで質問です。4歳になるのですが、全く「待つ」ことができません。例えば私が料理などの家事をしていても、自分の遊びを一緒にやってほしいと騒ぎます。
保育園の帰りにほかの保護者と話をするため「ちょっと待っていてね」と言い聞かせても「帰る帰る」と騒ぎます。どうしたら、いいでしょうか?
4歳の男の子のお母さま
原先生の回答 「子どもの行動の全てには理由があります」
子どもはありとあらゆるバリエーションの「困ったこと」をしますから、子育ての悩みは尽きません。大人がどう対応するかを考えるとき、私が常に大切にしたいのは「子どもの行動の全てには理由がある」のだから「なんでそういう行動をしてしまうのか?」をまず考える、ということです。
「なんでそういう困ったことばかりするの?」「なんでそういう性格なの?」と、行動の責任と「改善」を子どものみに押し付ける考え方は捨てていただきたいのです。

そしてその行動の背景や原因にスポットを当て、そこに大人がアプローチすることで大人にとっての「お悩み」を解決しようというのが当コラムです。
当然、子どもとの向き合い方は変わることになります。「お悩み」が解決する順番は、「保護者が変わる」→「子どもとの関係が変わる」→「お悩みが解決する」なのです。
「保護者が変わる」といってもそれは「行動の理由などの情報が増える」「子どもとの関わり方が変わる」ということです。できるだけわかりやすくお伝えするように努力しますので、どうぞ、お付き合いください。
子どもはなぜ、そうならざるを得ないか?
さて、今回の「4歳になるのですが、全く待つことができません」というお悩みです。
まず「なんでそうならざるを得ないのか?」というところから考えてみましょう。理由は3つ考えられます。
① 待つために必要な脳の発達段階=欲求を抑える力を獲得していないから
② 見通しが立たないから
③ 衝動性が高いから
それぞれ、説明しましょう。
① 待つために必要な脳の発達段階=欲求を抑える力を獲得していないから
「待つ」ことができるようになるには、ある程度、欲求を抑える脳が発達することが必要です。ある研究によると、幼児は報酬を得る(=好きなものをもらう)ために待たなければならない場合、2歳未満の子は待つことができないが、2歳児は20 秒~1分弱どうにか待てるようになり、3歳では1分、4歳では5分くらいは待つことができたといいます。
トイレトレーニングにおいて、膀胱が発達しない間はいくら言ってもおしっこをためておけないので意味がないのと同じで、脳が発達していない以上、欲求をがまんして「待つ」ことは難しいのです。

出典)Kochanska, G.: Committed compliance, moral self, and internalization: A mediational model.
Developmental Psychology, 38, 339–351 (2002)
Carlson, S.: Developmentally sensitive measures of executive function in preschool children.
Developmental Neuropsychology, 28, 595–616 (2005)
② 見通しが立たないから
例えば電車を待っているとしましょう。今、10時10分で10時35分には電車が来ることがわかっていれば、もちろん待てます。しかし電車がいつ来るかわからないとなると、大人でもそのうち落ち着かなくなってウロウロし始めるのではないでしょうか。
子どもも同じです。特に、発達障害の特性のある子どもは待ちにくいのです。子どもは、どれくらいしたらお母さんの台所仕事が終わるか、ママ友とのおしゃべりがどれくらいかの見通しがつけられないので、見通しを持てないまま、ただただ「待つ」ことになります。ですからどうしても待てなくなるのです。
③ 衝動性が高いから
子どもの中には見通しが示されても待つことが難しい子どもがいます。いわゆる「衝動性の高い子ども」の場合、「待つ」間に何もせずに過ごすことに耐えられずに、騒いだり、怒ったりしてしまうことが多いです。
理由別の対策方法は?
ではどうしたらいいのでしょうか。
① 待つために必要な脳の発達段階=欲求を抑える力を獲得していないから待てない場合
脳の発達が未成熟である以上、いくら待てと言われても待てません。待てる時間は諸説ありますが、少なくとも4歳の子が10分待つのは、脳の発達からすると少しハードルが高い、難しいことなのです。
まずは子どもの年齢を考慮し、どれくらいなら待てるかを把握することが大事です。その上でできるだけ待てる時間以上は待たせなくてすむように、保護者が算段するのが得策です。
もちろん、家事など諸々の都合でそれ以上の時間待たせざるを得ないこともあるでしょう。その場合は②③の対策を参考にして工夫してみましょう。
いずれにしても「脳の発達状況からして今はこれくらいしか待てない」ことを念頭においておくことで、対応やことばがけ、そして大人の側の気持ちも大きく違ってくると思います。
② 見通しが立たないから待てない場合
・予定表を見える化する
・キッチンタイマーや砂時計で「いつまで待つ」が目で見てわかるようにする
などによって、子どもが見通しを持てるようにします。

③ 衝動性が高いから待てない場合
待つことができる5~6歳の子を観察すると、自分の身体をさすったり、自分の気を紛らしたりする工夫をして過ごしていることが多いです。
待ち時間ができてしまうときは、「待つ」時間を過ごすことができる時間つぶし(パズルや塗り絵、親子でしりとり 等)を考え、その中から子どもに選んでもらいましょう。
家事をしているときなら、家事を手伝ってもらうのもよいです。
どんなことばがけが有効? やり取りの具体例
上記の解決方法を、具体的なシナリオでご紹介します。
A:家事をしているときに、遊ぼうと言われた場合
パターン1
「遊びたいよね~(共感する)、でももう少しお料理したいから、このタイマーが鳴るまで待っていてほしいな(3分にセット)。そうしたら、遊ぼう」
パターン2
「遊びたいよね~(共感する)、でも今お料理に時間がかかるから、食事の後にしてほしいな」
ホワイトボードに、1.お料理 2.食事 3.遊び と書く。
パターン3
「遊びたいよね~(共感する)、でも、今お料理しなくちゃいけないのよ。〇〇ちゃん、このたまご割ってくれない?」

B:保育園からの帰りにほかの保護者と話をしたくて子どもに「ちょっと待っていてね」と言っても「帰る帰る」と騒ぐ場合
「ねえ○○ちゃん、ママね、今、△△ちゃんのママと大事なお話をしたいんだ。ピピピッとタイマーがなったら帰るからね(とタイマーをかける)。」
タイマーが鳴ったら、相手にことわって帰る。会話を終えたらすぐに「待っていてくれたね」「うれしいな」とほめる。
いずれの場合も気をつけてほしいのは、「約束を守る」ことです。タイマーが鳴るまでねといったのに、タイマーが鳴っても待たせることを続けてしまうと「タイマー鳴るまで待って」が通用しなくなります。
待てない理由を知り、保護者の行動を変える
「待つ」ことができることは、コミュニケーションでも遊びでも社会生活でも大切な力です。待てない理由を考え、保護者の行動を変えてみてください。
そして「待つことができた」ら「待てたね」「うれしいな」とことばをかけましょう。「待つことができた」経験、そしてほめられた経験は、やがて自分で待てるようになることにつながっていきます。
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この記事を書いたのは…
一般社団法人 WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業、国立身体障害者リハビリテーション学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダのブリティッシュコロンビア州の障害者グループホーム、東京都文京区の障害者施設職員、長野県の信濃医療福祉センター・リハビリテーション部での勤務の後、『発達障害のある子の家族を幸せにする』ことを志に、一般社団法人 WAKUWAKU PROJECT JAPANを長野県諏訪市に創設。発達障害のある子のプライベートレッスンやワークショップ、保育士や教諭を対象にした講座を運営している。著書に『発達障害のある子と家族が幸せになる方法』(学苑社)、『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)がある。
