『スウィングガールズ』や『ハッピーフライト』などの矢口史靖監督が、初めて手掛けたコメディミュージカル『ダンスウィズミー』が本日8月16日より公開となりました。ミュージカル映画といえば、全編通して歌ありダンスありですが、「ミュージカルって、ドラマの途中でいきなり歌い出すのが苦手」という方もけっこういるのでは? ところが本作は、そこを逆手に取った、新しい娯楽映画に仕上がっています。
ヒロインを演じるのは、全国のオーディションで選ばれた、モデルで女優の三吉彩花。彼女が演じるのは、一流商社のOL、鈴木静香役で、ある日、怪しい催眠術師(宝田明)から、「音楽が流れると、ミュージカルスターばりに、歌って踊らずにはいられなくなる」という催眠をかけられてしまいます。
普通に生活していると、携帯の着信音から電車のホーム音、テレビの音など、街にはありとあらゆる音楽が溢れています。静香はその音すべてに反応し、我を忘れてノリノリに歌って踊りまくることに! マンションのロビーや、レストラン、倉庫内と、ところ構わず踊りだす静香に爆笑しつつも、手足の長いナイスバディの三吉彩花によるパフォーマンスには、思わず目がクギ付けになります!
ヒロインが往年のヒット曲で歌って踊りまくる!
映画監督にもいろいろなタイプがいますが、サービス精神旺盛のエンターテイナーである矢口監督がこだわるのは、誰もが楽しめる間口の広いコメディです。どの世代の観客も置いてきぼりにしないように、若い世代から年配の方々まで、すべての層をカバーする笑いと感動を届けてくれる作品だからこそ、ファミリーで観るのにピッタリだと思います。
劇中を彩るナンバーも、最近のヒット曲ではなく、時代を経ても色褪せない往年のヒット曲をフィーチャーしています。たとえば、山下久美子の「Tonight(星の降る夜に)」を皮切りに、広瀬香美の「ロマンスの神様」、山本リンダの「狙いうち」、シュガーの「ウェディング・ベル」、サディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」などの名曲が、ここぞという時に流れ、観る者をぐいぐいと引き込んでいきます。
また、ダンスも2人で踊るロマンティックなものから、大勢でのヒップホップ、セクシーなポールダンス、アクロバティックなパフォーマンスなど、物語に沿って、要所要所でいろいろなバリエーションのダンスシーンが繰り広げられ、劇場でめいっぱいショータイムを堪能できます。
主人公の名前が毎回“鈴木”である理由とは?
『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』、『ハッピーフライト』など、矢口監督作に登場する主人公は基本、どこにでもいるような素朴なキャラクターです。身に降りかかる災難に対して果敢に立ち向かうというよりは、いろいろな人の力を借りて、なんとかトラブルを脱しようと大奮闘していく感じ。主人公の名字が毎回「鈴木」で統一されているのは、そういう普遍性を意識されているからかと。
今回のヒロイン、鈴木静香も、商社のOLという一見“キラキラした勝ち組”“リア充”の人生を送っているかに思いますが、実はそうでもないようです。そして、この催眠術事件を経て旅を続けることで、人生において大切なことに気づいていく。そういう誰もが共感できる等身大の成長物語が、矢口作品最大の魅力でもあります。
繰り返しますが「ミュージカル映画には触手が伸びない」という方にこそ観てほしい本作。大人から子どもまで間違いなく楽しめるエンターテイメント作品なので、ぜひ夏休みに家族連れで観にいってください!
文/山崎伸子