目次
- Q:非認知能力を伸ばすためには「褒めて伸ばす」「叱らない」がやはり有効ですか?
- Q:好きなこと・得意なことを伸ばすよりも、苦手を克服することに力を入れるべき?
- Q:学校や習い事と、家にいるときの態度が違います。外にいるときは積極的に動けるのですが、家庭内でもできるようになる方法はありますか?
- Q:YouTubeやゲームは、非認知能力を伸ばすためにはマイナスですか?
- Q:やはり自然体験が大事ですか?
- Q:非認知能力と癇癪は関係がありますか?
- Q:発達障害があっても非認知能力は伸ばせますか?
- Q:非認知能力は中学生以降でも伸ばせますか? 幼児期が伸ばしやすいのでしょうか?
- Q:非認知能力が高いと、どのようなメリットがありますか?
- “気質”に合った子育てを意識することで、非認知能力も育まれる
Q:非認知能力を伸ばすためには「褒めて伸ばす」「叱らない」がやはり有効ですか?
中山先生:まずは、「褒める」も「叱る」も目的がありますよね。なんのために褒めるのか、なんのために叱るのかということを考えてみてください。
非認知能力は行動に表れます。一般的には、習慣化してほしいことは褒めますよね? そして、習慣にしてほしくないことは叱る。つまり、これらはフィードバックなんです。何をしても叱らないということは、望ましくないことを容認してしまうことになるので、それだけではダメですよね。そして、褒められてばかりいても行動に変化が表れなくなります。
褒めるにしても叱るにしても程度がありますし、その子その子で対応は変わってきます。子どもにとっての「いい行動が続く声かけ」、「習慣化させたくない行動が減るような叱り方」を試行錯誤して見つけていくしかないのです。

Q:好きなこと・得意なことを伸ばすよりも、苦手を克服することに力を入れるべき?
中山先生:アンケートの記事でもご説明しましたが、非認知能力とは「自分と向き合う力(自己理解、感情調整、忍耐など)」、「自分を高める力(やる気、自信、探究心、目標への持続力など)」、「他者とつながる力(協調性、共感、コミュニケーションなど)」などが挙げられます。
これらは苦手なことを克服させることで伸ばすよりも、子どもが好きなこと・得意なことで伸ばす方が圧倒的に効果的です。
初めのうちは「好きなことだからつらい状況も耐えられる」「やりたいことだから我慢ができる」…などができるようになるといいですね。それが次第に他のことにも転移していきます。それが“最強非認知能力”です。非認知能力とは、いくら言葉で説明しても自分自身が経験してみないとわからないし、身につかないものなのです。それは子どもだけじゃなくて大人も同じです。いったん経験してみて、そのコツを他にも応用していくイメージです。
ですから、まずは“子どもの得意”を応援してあげ、その後の困難に対しても立ち向かうことのできる土台となる部分を育ててあげてください。その方がお子さんの非認知能力は伸ばしやすいと言えます。

ちなみに、非認知能力の評価の信頼性は、①習慣化(約2ヶ月)、②自己と他者の評価一致、③場面転移(どこでも再現できるか)で測ります。
私がよく例に出すのが、大谷翔平選手です。大谷選手は野球“だけ”がすごい人ではありません。周りの人に配慮ができる、迷惑行為をしない。在学中も教師に大きくは反抗していなかったそう。ですが大谷選手も、初めからそうではなかったと思うんですよね。野球という自分の好きなことを通して、忍耐力や協調性など、非認知能力を段階的に伸ばしていったということです。
「心は見えないが、行動は見える」という言葉の通り、非認知能力は行動として表れ、その行動が継続的に観察されることで評価が確立します。
Q:学校や習い事と、家にいるときの態度が違います。外にいるときは積極的に動けるのですが、家庭内でもできるようになる方法はありますか?
中山先生:園や学校では主体的に行動できているけど、帰宅するとやるべきことがなかなかできない、という子も多いと思います。「家にいるときくらいリラックスさせてあげたい」という考え方も間違いではありませんので、まずは家庭以外のところで頑張っている姿を認めてあげてください。
小学校4年生くらいになると、徐々にメタ認知が成長してきます。そうすると、自然と自己管理ができてくるようになってきます。ただし、成長には個人差がありますので、全員が4年生になったら自己管理ができるようになる…というわけではありません。
今は学校や習い事など、社会の中でできていれば心配することはありません。成長と共に家でも再現できるようになっていきますので、お子さんの成長を言葉にして認めてあげてください。
Q:YouTubeやゲームは、非認知能力を伸ばすためにはマイナスですか?

中山先生:使い方によります。子どもが家にこもって動画やゲーム漬けになるよりは、外遊びで人とのコミュニケーションをとってほしい。だけど、公園での禁止事項や習い事の増加など、そういう機会が減ってしまっていることに、保護者のみなさんは危機感を覚え、どうにかしなきゃいけないと焦ってしまっている部分があると思います。
もちろん、動画やゲームをダラダラと好き放題見せておくことがマイナスであることは言うまでもありません。でも、「動画を見たいから我慢して先にやるべきことをやる」、「決められた時間になったからゲームを終わらせる」、「友達とやるときは順番を守ってやる」というような行動は、非認知能力に含まれます。
ですから、やらせることがマイナスなのではなく、どう付き合っていくのかの方がポイントになると思います。やみくもにYouTubeやゲームを禁止するのではなく、どう使うべきか、動画やゲーム漬けになることの弊害はなんなのか、その子にあった言葉でつど説明するといいでしょう。
Q:やはり自然体験が大事ですか?
中山先生:大事かそうでないかでいえば、非日常の刺激は非認知能力を伸ばす上で有効です。日常にはなかなかない五感の刺激も得られるし、多様な運動刺激も得られます。さらに、普段はやらない行動が求められるので、自然の中ほど恵まれている環境はありません。

体験するだけでなく、ぜひ親子での会話を意識してみてください。学校でのことをあまり話してくれないお子さんでも、非日常体験をすることで、普段以上の刺激があり、話したいことがいっぱい出てくると思います。
【親子の会話のポイント】
①やったことにどういう意味があったのか
②行動したことでどんな感情を抱いたのか、何を思ったのか
③次はどうしたいのか
とはいえ、無理にお金をかけて自然体験をつませなくても、日常生活の中で非認知能力は伸ばせます。日常の延長で自然の中で過ごすシーンが出てきたとき、ぜひ上記の会話を意識してみてくださいね。
Q:非認知能力と癇癪は関係がありますか?
中山先生:癇癪は非認知能力というよりも、“気質”に関わってくることです。ただし、感情のトレーニングをすることで改善はしていきます。
ここで大切なのはモニタリングをして、自分を客観視する力を養っていくこと。自身の「怒り」の感情や思考の癖を客観的に観察・記録し、そして怒りの原因やパターンを見える化し、衝動的な行動や無用なイライラをコントロールする。いわゆるアンガーマネジメントのモニタリング手法を取り入れていくことをおすすめします。まずは保護者の方が挑戦してみてもいいでしょう。
Q:発達障害があっても非認知能力は伸ばせますか?
中山先生:非認知能力は人と比べる力ではないので、もちろん伸ばすことは可能です。非認知能力は行動に表れ、行動で評価されるからです。
ただし、発達障害は、いわゆる先天的な脳機能の特性でもあります。発達の凸凹とも言われたりするのですが、その発達の凸凹を行動に言い換えてみてください。
例えば、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちは、一つのことにすごく没頭します。この一つのことに没頭できるということはすごい行動なんですよね。脳機能力で言うと、探究心がものすごく突出してる。でも、コミュニケーション力はどうなの? と考えると、ASDの子は苦手です。

ADHD(注意欠陥多動性障害)の子も同じです。 いろいろなことに興味関心を持っているからこそ、行動力がある。だけど一方で自制心が弱いことが多い。これらの凸凹が、修正できるレベルなのか、修正できないレベルなのかということが、いわゆる発達障害の特性の強さです。
では、どうやって修正するのか…というと、そこはやはりメタ認知を高めることがポイントになります。今は特別支援学級などでも“自立支援”という名前で、子どもたちに行動を修正するトレーニングが行われていますので、支援級に通われているようでしたらあまり心配しすぎず大丈夫。支援級でどんなことをしているのかを聞いて、自宅でもできることは取り入れてみてもいいでしょう。
Q:非認知能力は中学生以降でも伸ばせますか? 幼児期が伸ばしやすいのでしょうか?
中山先生:幼児教育の広告などで、「非認知能力は幼児期がいちばん伸ばせます」などと言われていたりするのですが、明らかにそれは違います。誤解してほしくないのは、非認知能力はいつでも誰でも、どの発達段階においても伸ばすことができる力なのです。
特に、思春期以降に前頭前野の発達によってメタ認知がますますできるようになり、自分を客観視してモニタリング&コントロールができるようになっていきます。そのため、非認知能力によっては、中学生以降の方が伸ばしやすい力があると言えるでしょう。
例えば社会人になると、自分が所属する場所で求められる役割があり、役割認識を持って仕事をしますよね。そのトレーニングには、中高生がちょうどいいんです。部活動や委員会活動、探究活動などが、とてもいいトレーニングになると思います。

とはいえ、幼児期に好きなこと、得意なことに打ち込むことは大切です。幼児期は“気質”ベースで行動が決まります。“気質”は簡単には変えられないものですから、その“気質”から表れる行動をまずは伸ばしてあげることが、その後の土台になるのです。
Q:非認知能力が高いと、どのようなメリットがありますか?
中山先生:私が3つに分けている、「自分と向き合う力」「自分を高める力」「他者とつながる力」のどれかにもよります。非認知能力にはメリットもありますが、デメリットもあることを知っておいてください。例えば、我慢しすぎることによって感情が伝わりにくくなる。やる気や自信がありすぎることによって空回りしてしまう。みんなと仲良くしようと思うあまり自己主張ができなくなってしまう…などです。
メリットの中には「人間の能力や才能は固定的なものではなく、努力や学習、経験によってどこまでも伸ばすことができるという思考パターン=グロースマインドセット」や、「目標を立て長期的に努力をし続ける力=グリット」などがあります。
テストの点数がいい子に「あなたは天才ね!」なんて褒める方法がよくないと言うのは、近年知られていることですよね。子どもが熱中している・努力を続けている姿を観察して「どうしてこんなに我慢ができたの? 」「この大会までよく頑張れたね」「どうやったらできるの? ちょっとお母さんに教えてよ」などのプロセスに目を向けられるやり取りを心がけるようにしてください。
“気質”に合った子育てを意識することで、非認知能力も育まれる
たくさんのご質問をいただいた中から、多かった質問などを中心に中山先生にご回答いただきました。
子どもを適切に、叱る・褒めるの基準や、幼少期には非認知能力の土台作りが重要であり、非認知能力が伸びるゴールデンエイジはメタ認知が発達する思春期以降ということもわかりました。
情報が多い世の中、何が正解なのか悩む日々ですが、子どもの成長(発達)をよく観察し、わが子の気質に合った子育てを試行錯誤しながら探っていきたいものですね。
非認知能力に関するアンケート結果と、先生の考察はこちら
質問に答えてくださったのは
1976年1月、岡山県岡山市生まれ、All HEROs合同会社代表社員、IPU環太平洋大学特命教授。日本の教育者、著作家、学者。
・All HEROs合同会社 代表
・日本子ども若者学会 理事長
・岡山県子ども・若者未来会議 会長
・文部科学省進路指導審査会 委員
・日本非認知能力協会 会長
・子ども學びデザイン研究所 所長
・日本放課後児童指導員協会 理事長 ……など
- 【主な著書】
・『非認知能力の強化書』(2025年、東京書籍)
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・『教師のための「非認知能力」の育て方』(2023年、
明治図書)
・『「やってはいけない」子育て―非認知能力を育む6歳からの接し方』(2023年、 日本能率協会マネジメントセンター)
・『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』(2020年、東京書籍)
・『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(2018年、東京書籍) -
……など多数
この記事を書いたのは
教育学部を卒業し、幼稚園・小学校教諭免許を取得するも、教師は母の希望だったため教師にはならず。自分自身の経験から、子どもは矯正せずにありのまま育てるのが一番だと思っている。勉強は嫌いだけと、学ぶことは楽しいと大人になって気づく。趣味は腸活と音楽を聴くこと。最近は子どもの影響で城・神社、世界遺産巡りにハマっている。
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