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熾烈な戦いが繰り広げられる韓国や中国の入試
日本のニュースやドラマなどで、韓国の大学修学能力試験「修能(スヌン)」の異様な熱気や、中国の過酷な全国統一試験「高考(ガオカオ)」の様子を目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
受験生のために警察のパトロールカーが動員されたり、試験会場の周辺で車のクラクションが禁止されたりする光景は、日本人の感覚からすると驚いてしまいますよね。
日本も十分に学歴社会だと言われますが、なぜ韓国や中国はそれ以上に熾烈な学歴社会になっているのでしょうか。その背景には、歴史、経済、そして社会構造に根ざした明確な理由があります。

理由1|身分に関係なく試験によって官僚になれた影響
最も大きな要因の一つは、東アジアに深く根付いている儒教の歴史的な影響です。かつての中国や、その影響を強く受けた朝鮮半島では、数百年以上前から「科挙(かきょ)」という非常に厳格な官僚登用試験が行われていました。
この試験は、儒教の経典への深い理解が問われるもので、家柄や身分に関係なく、個人の学力だけで政府の要職に就くことができる画期的なシステムでした。これによって「猛勉強をして試験に合格すれば、一族の未来が拓け、貧しさから抜け出せる!」という価値観が、何世代にもわたって人々のDNAに刻み込まれることになりました。
日本にも儒教は伝わりましたが、武士の家柄(身分)が重視されたため、科挙のような試験万能主義の歴史は定着しませんでした。この歴史的な出発点の違いが、現代の学歴への執念の差に繋がっています。
理由2|良い大学を出ないと良い会社に入れないから
次に挙げられるのが、現代における経済的な格差と選択肢の少なさです。韓国や中国では、日本以上に「どこの大学を出たか」がその後の人生の収入やステータスを決定づけてしまいます。
韓国を例に挙げると、経済の大部分の売り上げや利益をサムスンや現代といった一握りの巨大財閥企業が生み出しています。これらの大企業と中小企業の間には、給与や福利厚生の面で埋めがたい巨大な格差が存在します。
そして、財閥系の大企業に採用されるのは、通称「SKY」と呼ばれる超名門大学の出身者がほとんどです。つまり、良い大学に入れなければ、安定した高い収入を得るチャンスが最初から極めて少なくなってしまうという過酷な現実があります。
中国でも同様に、数億人の若者が限られた「勝ち組」の席を奪い合うため、一流大学の卒業証書が生存競争を生き抜くための必須の武器になっているのです。

理由3|少子化で、家族の期待が一手に集まるため
さらに、家族の形態や少子化もこの競争を加速させています。中国では長年続いた一人っ子政策の影響で少子化が加速しており、同じく韓国では世界で最も深刻な少子化が進んでいます。
どちらの国でも、各家庭に子どもが一人しかいないケースが非常に多くなっており、親や祖父母からの「この子だけは絶対に成功させなければならない」という期待とプレッシャーが、一人の子どもに集中することになります。
その結果、家族の財産や情熱を子どもの教育費(塾や家庭教師)に注ぎ込むため、教育投資への熱量が日本とは比較にならないほど高くなるのです。

過度な競争が、若者に負担をかけている面も
日本も学歴を重視する社会ではありますが、中小企業でも独自の技術を持つ優良企業が多かったり、大学名以外の個性や経験を評価する雇用土壌が残っていたりします。しかし、韓国や中国では、社会のセーフティネットや雇用の選択肢が日本ほど多様ではないため、学歴レースから脱落することへの恐怖心が格段に強いのが実情です。
このように、韓国や中国が日本以上の学歴社会である理由は、単に「親が教育熱心だから」という単純な話ではありません。
生き残りをかけたこの激しい競争は、国を発展させる原動力になってきた一方で、若者の精神的な負担や少子化をさらに悪化させるという深刻な社会問題も引き起こしています。
この記事を書いたのは
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
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